今季最注目の一戦!対抗戦独走の王者帝京大は明治大とどう戦うのか

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2018年1月、大学選手権決勝で戦った明治と帝京。今年はどんな戦いを見せてくれるのだろうか。ボールを持つのは現帝京大主将の秋山大地

学生スポーツ、こと大学ラグビーの魅力は不確実性にある。

何せ、心身とも成長過程にある若者同士のバトルだ。部内で劇的な変化があったり、何らかの理由でうまく原点回帰に成功したチームは、それまでとは全く異なる好試合を演じることがある。連敗中の集団が目の覚めるようなプレーで強豪を打ち崩すシーンも、スーパーラグビーやテストマッチ(代表戦)以上に起こりやすいのではないか。なかでも注目されるのは、伝統校主体の関東大学ラグビー対抗戦Aだ。各大学の卒業生などからも熱烈な支持を集め、試合には多くの観客が詰めかける。

11月4日、東京の秩父宮ラグビー場に帝京大が登場した。対抗戦7連覇中、全国大学選手権は9連覇中。乱暴に言えば、下馬評通りに勝ち続けてきたチームだ。

この日の相手早稲田大には、夏合宿中の練習試合で敗れていた。さらにその早大と双璧をなす明大には春、夏の対戦で黒星を喫していた。しかし岩出雅之監督は、動じなかった。

「夏に負けたことで、学生がより頑張るかなと計算はしました。そこで僕は学生を迷わせないようにチームと相手を分析。その結果、(秋以降の練習では)基礎的な部分をしっかりとやるようにしました」

果たして、11月4日の早大戦ではキックオフから帝京大が盤石な「基礎」の力を貫く。タックルした選手はすぐに起き上がって防御網を敷き詰め、球を持てば相手の懐に踏み込んでぐいぐいと前進。その後ろにつくサポート役も同じようにして勢いをつけ、ワセダの防御ラインをジリジリと後退させた。人のいない場所へロングキックを配し、陣地の取り合いでも優勢に立つ。前半で28―0とほぼ勝負を決めた。

後半は守備でエアポケットを作るも、45-28で勝利。反則数は相手の「10」に対し「2」と“順法精神”も見事だった。苦しんだ暑い季節を乗り越え、いまは「(シーズン終了までの)日にちが減っていくにつれ、チーム、個人とももっと成長したい、大学選手権で優勝したいという意志を表すようになったと思います」と竹山晃暉副将が語る。気持ちの変化を試合内容に反映させて行く、大学ラグビーの醍醐味を示している。

「(いまは)練習のためグラウンドに上がってくる(入る)時の顔、練習が始まる時の声かけが全然、違って来ている。一部のリーダーだけでなく全員がそうなれば、このチームはもっと強くなります」

帝京大はレギュラーに2年生を多く並べるが、今後は竹山ら上級生が浮沈の鍵を握りそうだ。なかでも1年時からトライを量産してきた竹山は、最後尾のフルバックに入っており、キックの飛距離も伸ばしてきた。ロックの秋山大地主将は突進力があり、タックルレンジが広い。

さらにナンバーエイトのブロディー・マクカランは、接点でボールに絡むジャッカルというプレーが得意なうえ、高く蹴り上げられたボールの獲り合いでもハイスキルを披露する。まずは高く飛び上がり、球と相手との間に手を入れて捕球。さらに飛ばずして捕るうまさもある。落下地点でジャンプする相手へ身体を寄せ、バランスを崩す。その流れでこぼれたボールを抑えるのだ。

右肩上がりの帝京大の次の相手は、明大。18日に秩父宮でぶつかる。

対する明治は、前年にヘッドコーチとして入閣した田中澄憲新監督が、複数リーダー制を採用。4年生の主体性を引き出す。

4日には秩父宮で慶応大に26-28と敗れたが、その黒星の引き締め効果は抜群だろう。19年ぶりの準優勝を果たした前年度も、この慶明戦を落としていた。先頭に立つ福田健太主将は、スクラムハーフとしてのキレと同時に溌剌さが目立つ。

「慶大さんからいい薬をもらったとポジティブに捉えて、精進していきたいです」

2年生ロックの箸本龍雅、3年生フッカーの武井日向は頼れる突進役。2年生フルバックの山沢京平も、持ち前のボディバランスと相手の虚をつくプレー選択でスタンドを沸かせる。

特に脅威となるのは、攻防の起点であるスクラムだ。滝澤佳之コーチの指導を共有し、組み合う8人が互いに身体を這わせる。一直線に進む。対する帝京大も例年以上にスクラムに注力するが、その理由を岩出監督はこう語る。

「いまは早大さん、明大さん、大東(文化大学)さんがスクラムに焦点を絞ってこられている。(昨季までは)それをうまくいなしながら他のプレーを伸ばせないか…と考えていましたが、もうごまかしは効かない。最近は少しずつ、やっています」

王者に火をつけた組織のひとつが、明大だったのだ。

その明大を制した慶大も戦力が充実。視野の広いスタンドオフの古田京主将、鋭い当たりが際立つロックの辻雄康副将、長い手足でチャンスを作るフルバックの丹治辰碩と、付属高校時代に全国大会に出た4年生が並ぶ。

部の伝統たる「魂のタックル」の体現者は、1年生フランカーの山本凱。身長177センチとやや小柄だが、年代別代表に選ばれるたびに外国人選手を仰向けにする力を持っている。

「土壇場でも落ち着いてプレーをするように心がけています。自分の最高のプレーをすれば、大学でも通用するので」(山本凱)

明治に勝って上り調子の慶応と帝京戦で弱点が露呈した早稲田。伝統の一戦は11月23日に行われる

バランスのよい慶大と11月23日に早慶戦をおこなうのが、帝京大に屈したばかりの早大。続く12月2日には、早明戦を控える。いずれも秩父宮でおこなわれる伝統の一戦は対抗戦の順位を左右し、それが12月以降の大学選手権の組み合わせに影響する。また、早大は今季創部100周年を迎えている。例年以上に好成績が期待される。

一昨季就任の山下大悟前監督のもと、スポーツ推薦枠の拡張により有力選手を集め続けた。外部企業と連携して食の環境も改善し、接点で戦う際の体勢など細部にもこだわってきた。主力組を加速度的に鍛え上げる当時の計画は多少のアレルギー反応も招いたが、相良南海夫監督が緊急登板した今年は選手主導に転換。いま、部の雰囲気が明るい。

センターに入るのは、大柄で力強い3年の中野将伍と的確なサポートが光るルーキーの長田智希。機動力重視の方針を掲げる現体制にあって、それぞれ異なる特徴を活かす。

齋藤直人は中野と同期のスクラムハーフ。パスとキックの飛距離が長く、球さばきに緩急をつけられる。6月には日本代表の兄弟チームであるサンウルブズの練習生となり、そこで課された持久力テストではトップを走ってスタミナをアピール。成功率の高いプレースキッカーでもあり、時には肉弾戦のボールに絡んで敵の攻めを断つ。スコア、ボール、陣地と、ラグビーを支える争奪戦のほぼ全てに顔を出すのだ。

先の帝京大戦では高精度なパントキックを放つも、そのうちのいくつかはマクカランの手中に収まった。すると齋藤は「まぁ、欲を言えば自分のキックをもう少し(マクカランの立ち位置の)右に蹴られれば、とは思いますね」と反省。王者から進化のきっかけをもらった。

12月からの大学選手権では大東大、東海大、天理大といった留学生を多く擁するチームが並ぶ。そんななか本来の凄みを取り戻しつつある帝京大と早慶明の名門勢は、多くのギャラリーに見守られながら濃密な日々を過ごす。

自軍とライバルとの力が接近しつつある傾向に、帝京大の竹山は気を引き締める。

「1年生から試合に出ていますけど、特に相手のフィジカル、後半に走ってくる強さは高まってきていると思います。自分たちはそれに負けないマインド、自信を持って戦いたいです」

選手権の決勝がある1月12日まで、彼らは成長し続けることだろう。

  • 取材・文向風見也(スポーツライター)

    1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

  • 写真アフロ

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