皇居のお堀でブルーギルと戦う「外来魚ハンター」の誇り | FRIDAYデジタル

皇居のお堀でブルーギルと戦う「外来魚ハンター」の誇り

「外来魚ハンター」工藤智氏(65)インタビュー  秘密兵器「電気ショッカーボート」を駆使して苦節15 年 いよいよ根絶が見えてきた

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「電気ショッカーボート」を操る工藤氏。石垣周辺に生息しているところを狙うと効率的に駆除できるという
「電気ショッカーボート」を操る工藤氏。石垣周辺に生息しているところを狙うと効率的に駆除できるという

「ピィ、ピィ、ピィ」

電子音を発しながら、皇居のお堀を異様な見た目のボートがゆっくりと進んでいく。船の先頭で網を構えている男性は、「外来魚ハンター」こと工藤智氏(65)。北海道立総合研究機構『さけます・内水面水産試験場』の元主任研究員で、外来魚駆除歴20年のスペシャリストだ。

工藤氏が操縦しているのは、「電気ショッカーボート」と呼ばれる外来魚駆除の秘密兵器である。先端に付けられたアンテナのような電極から最大1000ボルトの電流を流し、深さ2mまでの魚を感電&気絶させて浮き上がらせる。

「この時期は、ブルーギルの稚魚は固まって泳いでいます。そこに電気を通すとワーッと浮いてくる。鯉やフナといったもともといる魚を感電させず、外来魚を効率的に捕獲するには、後ろで舵(かじ)取りをしている船頭さんとの意思疎通が重要になります」(工藤氏、以下「 」内は同)

12月中旬のこの日、駆除を行ったのは皇居外苑の大手濠。近隣の駅工事があったことなどで、近年駆除作業があまり実施できていなかった。そのためか、捕獲したブルーギルのほとんどは今年生まれた稚魚で、約1万5000匹にも上った。

もともと北海道庁の職員だった工藤氏は、’00年に外来魚の担当になった。本格的に戦いが始まったのは、’01年7月。「大沼国定公園」で北海道におけるブラックバスの生息が初めて確認されたのだ。当時はまだ、駆除方法は手探り状態。ダイナマイトを用いた水中発破まで真剣に検討(結局中止)されたという。

悪戦苦闘の日々が続いたなか、’04年7月、アメリカで使われていた「電気ショッカーボート」が導入された。「南幌町親水公園沼」で日本初のボートでの駆除が行われたが、その効果は絶大だった。

「同庁から『導入するので使ってくれ』と。最初は駆除ということではなくテストでした。どのくらい効率的かを調べようと思ったら、駆除できちゃったんです」

工藤氏らの働きにより、’07年には道内のブラックバスは完全に駆除された。

’06年、北海道での成果を知った環境省皇居外苑管理事務所から工藤氏に声がかかり、皇居外苑でも駆除を行うことになった。ブラックバスは’10年には一掃され、次のターゲットはブルーギルだ。

「ブラックバスよりもブルーギルのほうが駆除しづらい。それでも、ようやく根絶が見えてきています。現在、皇居外苑のお堀のブルーギルは駆除が進んできており、ブルーギルの繁殖力がいくら強いといっても、あと少しで根絶できると考えています。何年先とは言えませんが、お堀の水環境など条件が揃えば根絶は可能になっていくでしょう」

功績が認められ、’17年には「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰も受けた。

「まだまだ辞めるな、ということなんだろうと思っています(笑)。私がお役に立てるのであれば、という気持ちです。北海道で働いてきましたので、身体は寒冷地仕様になっている。東京での冬の作業は、それほど苦ではありませんよ」

皇居外苑のお堀で外来魚と戦い続けて15年……。「外来魚ハンター」の仕事は、まだしばらく続きそうだ。

「外来魚ハンター」の工藤氏。「皇居という場所だけに外来魚は根絶したい」と、15年間変わらぬ意気込みを語った
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駆除したブルーギルの稚魚(右)と成魚(左)は1万5000匹に上った。4月まで7週間かけて駆除を続ける
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本誌未掲載カット 「外来魚ハンター」工藤智氏 ブルーギル&ブラックバスと戦い続けた日々
本誌未掲載カット 「外来魚ハンター」工藤智氏 ブルーギル&ブラックバスと戦い続けた日々

『FRIDAY』2021年12月31日号より

  • PHOTO小松寛之

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