オミクロン対策…限られたワクチンでの3回目接種「専門家の提言」 | FRIDAYデジタル

オミクロン対策…限られたワクチンでの3回目接種「専門家の提言」

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接種のタイミングは医師の判断を尊重する仕組みが必要

新型コロナウイルスワクチンの3回目接種が、1日から医療従事者を対象に始まった。

厚生労働省は3回目接種について「2回目接種の完了から8ヵ月以上経過している」ことを原則に、クラスターが発生した医療機関や高齢者施設の入院患者、施設利用者、職員などに限り、例外的に3回目接種までの間隔を6ヵ月に短縮できるとしていた。

ところが、岸田文雄首相は6日の臨時国会での所信表明演説で、3回目を「8ヵ月を待たずにできる限り前倒しする」と明言。そして17日には、医療従事者と高齢者の3100万人程度を前倒しし、医療従事者や重症化リスクの高い高齢者施設の入所者などの3回目接種を2回目から6ヵ月後に早めると表明した。その他の高齢者についても来年2月以降、期間を7ヵ月に短縮するという。

岸田総理の6日の所信表明演説後、後藤茂之厚生労働省大臣は会見で「ワクチンは順次輸入されるものであり、現状で全国民を対象に接種間隔の前倒しを行うのは困難」と述べていた。岸田総理が前倒しの対象を医療従事者と高齢者3100万人に絞ったということは、全国民一律の前倒しに対応するだけのワクチンを確保できるか、現時点で見通せていないのだろう。

後藤茂之厚生労働相は20日、来年3月に開始する予定だった企業職員向けの3回目接種の予定を早める検討に入ると表明。だが翌21日の閣議後の記者会見では、企業や大学で実施する3回目接種の前倒しをただちに実施するのは困難との考えを示した(写真:アフロ)

では、供給可能なワクチンで接種を前倒しするには、どんな方法が適切なのか。

当サイトで9月に「3回目接種の必要性」について取材した内閣官房の「COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクト」研究開発チームのメンバー、東京大学大学院工学系研究科の大澤幸生教授は接種体制に関してこう提言していた。

「3回目のワクチンを誰にいつ打つかは、医療従事者の判断に委ねるほうがいい」

断っておくが、大澤先生は医療従事者ではない。専門は「データと計算モデルによるシミュレーション」で、曰く「ウイルスやワクチンそのものの専門家ではない」。内閣官房のプロジェクトでは社会全体の感染の拡大と抑制のシミュレーション研究に取り組んでおり、2回目から6ヵ月後または8ヵ月後の3回目接種と、医師により個人ごとに追加接種のタイミングを判断する方法を比較したシミュレーション結果を発表している。

大澤先生に、3回目の有効な接種方法をあらためて聞いた。

「私の共同研究者には医療をはじめ制御工学や社会心理学などいろんな分野の専門家がいますが、その一人で医療の現場でワクチン接種にあたっているナビタスクリニックの瀧田盛仁先生は、医療従事者の裁量で接種のタイミングを決めることに関して、対象者の病歴や問診などによって判断することが可能であるとおっしゃっています。 

3回目接種を前倒しするのであれば、医師の判断に任せる方法はなおのこと有効だと思います。優先的に接種する対象を絞ることが可能で、ワクチンの供給量が限られた中で最高の感染抑制効果を得られるからです」 

国内でもオミクロン株の市中感染が明らかになった。供給可能なワクチンで接種を前倒しするには、どんな方法が適切なのか…(写真:アフロ)

「コミュニティとコミュニティの橋渡し」的な役割の人は職域接種を

その「優先的に接種する対象」を瀧田先生は下記の3通りに分けているという。

  • ①免疫抑制剤使用者
  • ②高齢者、がん患者、慢性腎臓病、閉塞性肺疾患、肺気腫、糖尿病、喘息発作の頻度が多い人、喫煙者
  • ③不特定多数の人と接する人物

「①②の方たちについて瀧田先生は、免疫抑制の程度や病状などに応じて2回目接種の2ヵ月後から3回目を奨励すると述べています。③に関しては問診から得たその人の状況によっては追加接種を検討するとしています」 

③の「不特定多数の人と接する人」とは、たとえばどういう職種、立場にある人物を指すのだろうか。

「コミュニティとコミュニティ、グループとグループの橋渡しをするような社会人です。業務や立場上いろんなコミュニティの人と接するけれども、自分はどこかのコミュニティに属して深く関わっているわけではないというような。たとえば医師や病院の事務職員、企業なら社外の人と接する立場の人や営業担当者、大学なら教職員や事務職員、市役所や区役所であれば窓口業務を担当する職員などが相当します。 

このような人たちに優先的に3回目ワクチンを打つと、コミュニティからコミュニティへと感染が広がっていきません。ネットワークが分断されるので、効率的に感染拡大を抑えることができるわけです」

しかし、そうした立場の人が優先接種の対象になる可能性はおそらく低いだろう。やはり自治体の3回目接種の開始を待つしかないのではないか?

「職域接種が重要になってくると私は考えています」

厚労省のホームページを見ると、職域接種の1回目と2回目の実施会場数は4045会場だ。だが、追加接種の申し込み会場数は12月20日時点で1675会場。1、2回目の接種ではワクチンの供給が追いつかず、政府が職域接種の申請受け付けを休止したため、接種がずれ込み現場は混乱した。どうやら、追加接種の申請を検討している企業や大学もありそうだ。 

「自分の職場で職域接種が実施されないのであれば、コミュニティとコミュニティの橋渡し役に該当すると思う人は、自治体の接種をできるだけ早く申し込むしかないと思います。 

いずれにしても、高齢者以外の人も3回目接種が2回目から8ヵ月後では遅いです」 

3回目接種が本格的に始まる前に再開予定の「GoToトラベル」だが…

3回目接種が進んでいない時期の「GoToトラベル」再開はまずい!

ところで、自民党の茂木敏充幹事長が13日、停止中の「GoToトラベル」の再開時期を来年1月末で検討していると語った。3回目接種が本格的に始まる前の再開……どうなのだろう。

「私はまずいと思います。普段、自分が接しているコミュニティの外の知らない人と接触する確率がかなり増えるからです。 

私が以前からコロナ対策として提唱している『ステイ・ウィズ・コミュニティ』の考えから言うと、自分のコミュニティ外の人との接触がコミュニティ内の人との接触より多くなると、感染爆発を招きます。コミュニティ内の知っている人たちとだけ接する場合、いつしかそのグループ内のある程度の人は感染するけれども、それ以上は感染しない飽和点のようなものがあり、コミュニティの外にウイルスが広がっていかないんです。逆にコミュニティ外の人との接触がある程度を超えるとウイルスが相手のコミュニティに移動してしまい、感染拡大していく。これが感染爆発を招く一番の要因です」

大澤先生が提唱する「ステイ・ウィズ・コミュニティ」とは、普段の生活エリアで接する家族や友人、職場の同僚など、自分のコミュニティを大切にしながら、そのコミュニティ外にいる人との接触はできるだけ避けるというコロナ禍のライフスタイル。自分のコミュニティの目安は「1週間に1回以上会う人」で、それ以外をコミュニティ外の人としている。

その目安に基づくと、旅先で接するのはほぼコミュニティ外の人ということになるだろう。

「特に、ワクチン接種が進んでいない、ワクチンの接種スピードが非常に遅い時にGoToトラベルで多くの人が移動すると、感染拡大の引き金になりかねません。しかし、ワクチンがある程度のスピードで接種されている状況であれば、人々の県境移動によって都道府県間でワクチンの配分率が均一化され、新規感染者の数をむしろ抑えられる可能性さえあります。つまり、国民がワクチンをどんどん打っている時は、都道府県を渡り歩くことがリスクになるとは限らず、ワクチン接種済みの人が全国均一に分布されるメリットもあるんです。 

今現在、感染者がなぜこれほど少ないのか疑問に感じる人がいると思いますが、今申し上げた要因が大きいでしょう。ワクチン接種だけでなくワクチン接種の速さの均一化と、人流が増えても普段会わない人との接触比率を減らしていることによって抑えられている可能性があると考えています」

もしかすると、政府はGoToトラベルを10~12月に実施するべきだったのか。

「そうかもしれませんね。しかし現実は、政府がGoToトラベルの再開を予定している1月は、3回目を接種している人はほとんどいないです。そのタイミングで再開するのはさすがにまずいと私は思います」

1月にGoToが再開されることを心待ちにしている人もきっといるだろう。だが、旅をするなら「3回目接種が済んでから」が世のためなのかもしれない。

大澤幸生(おおさわ・ゆきお)東京大学工学系研究科システム創成学専攻教授。1968年京都生まれ。1995年に東京大学工学研究科で工学博士を取得後、大阪大学基礎工学研究科助手、筑波大学ビジネス科学研究科助教授、東京大学情報理工学研究科特任助教授などを経て2009年より現職。専門はシステムデザイン、知識工学、ビジネス科学。チャンス発見、データジャケットに基づくイノベーション市場、データの可視化と価値化などを研究。

『未来の売れ筋発掘学』(編著、ダイヤモンド社)、『ビジネスチャンス発見の技術』(岩波アクティブ新書)、『イノベーションの発想技術』(日本経済新聞出版社)、『データ市場』(近代科学社)などの著書がある。

  • 取材・文斉藤さゆり写真アフロ

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