いま、世界で「秋田犬ブーム」が起こっている驚きの理由 | FRIDAYデジタル

いま、世界で「秋田犬ブーム」が起こっている驚きの理由

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”忠犬”ならではの賢さや、バランスの良い体躯、美しい毛色が、特に欧州では高く評価されている
”忠犬”ならではの賢さや、バランスの良い体躯、美しい毛色が、特に欧州では高く評価されている

いま、世界で秋田犬ブームが起こっていることをご存知だろうか。

公益社団法人秋田犬保存会によれば、2010年に海外で同会に登録されていた犬籍登録数(※血統書発行数)は73頭だった。ところが17年には海外のみで3967頭と実に500倍となり、2704という国内登録者を超えるという逆転現象が起きている。これはあくまで保存会で登録されている数であり、他団体を合わせればよりその数は膨れ上がる。一体なぜこのようなブームが起きているのか。

同会の代表を務めるのは、日本維新の会に所属する衆議院議員の遠藤敬(53)代議士だ。党内で国対委員長を務める遠藤氏は衆議院議員選挙では4選を果たし、選挙特番では愛犬を”同伴“させ登場。その愛くるしいルックスにネット上でも”可愛すぎる“という声が相次いだ。

モフモフの毛並みにこの愛くるしい顔である
モフモフの毛並みにこの愛くるしい顔である

秋田犬は12年にはプーチン大統領、18年にはフィギュアスケートのアリーナ・ザギトワに贈呈されるなど、世界中のVIPと繋がるなど外交面でも大きな役割を果たした面もある。「秋田犬は特使です」と語る遠藤氏に、ブームの現状と裏側、そして保存などの観点から未来へ向けた課題を聞いた――。

「HACHI」とザギトワ

秋田犬の認知が世界中に広がっていったのは、09年に公開されたリチャード・ギア主演の映画『HACHI 約束の犬』の影響だと言われています。それに加えて、プーチン大統領やザキトワさん、元横綱・朝青龍などの著名人が秋田犬を飼うようになり、それが海外での「飼い主」が増える要因ともなりました。

18年にフィギュアスケートのザギトワ選手に贈呈された秋田犬『マサル』
18年にフィギュアスケートのザギトワ選手に贈呈された秋田犬『マサル』

ザキトワさんにマサルを贈呈した時は、彼女が秋田犬を飼いたがっているとスケート連盟経由で連絡を受け、私も贈呈の場に立ち会いました。ザキトワさんのあんなに嬉しそうな表情を見ると、秋田犬保存会の会長としても努力の甲斐がありますし、政治家としても外交的に大きい出来事だったと感じます。事実、マサルの贈呈については多くの海外主要メディアで取り上げられましたから。

『特使』として世界のVIPとの繋がりを担うようになった秋田犬
『特使』として世界のVIPとの繋がりを担うようになった秋田犬
ザギトワ選手もかねてから秋田犬を飼いたがっていたそう
ザギトワ選手もかねてから秋田犬を飼いたがっていたそう
海外メディアからの注目度も高い
海外メディアからの注目度も高い

特に秋田犬人気が高いのが欧州です。一時期はイタリア一国だけで日本よりも飼い手が多い、という声もあったほどです。私も世界中の品評会などに顔を出してきましたが、ポーランドやロシア、オランダでも人気が高かった。体臭の少なさ、秋田犬ならではの独特のしぐさ、侘び寂びを感じさせる毛色の色彩、といったことを理由に飼う方が多いですね。

イタリアではある飼い主の方から今でも忘れ難い言葉を聞きました。なぜ秋田犬を飼うのか、と私が尋ねると「日本人は海外で流行しているブランドの名前だけで服や装飾品を買う人が多いと聞く。でもイタリア人は、ブランドよりも例えば革の質だったり、自分の体に合うかどうか、ということで服を選ぶ。秋田犬がイタリアで好かれるのは自然のことです。自分がいいと思ったものを愛しているだけですよ」と言われて、ハッとしました。日本人よりも彼らの方が秋田犬の本質を捉えているかもしれない、と。

”忠犬”ならではの賢さや、バランスの良い体躯、美しい毛色が、特に欧州では高く評価されている
”忠犬”ならではの賢さや、バランスの良い体躯、美しい毛色が、特に欧州では高く評価されている
たっぷり時間と愛情をかけられる人に飼ってもらいたい
たっぷり時間と愛情をかけられる人に飼ってもらいたい

私自身も小学校4年生から、現在に至るまで40年以上に渡り秋田犬と暮らしてきました。当時は数も多く、値段も安かったんです。お年玉を貯めて飼い始めてから、すっかりその魅力に取り憑かれました。今は“チビ”(子犬)を合わせて、5匹の家族がいます。ワンオーナードッグとも呼ばれるように、愛情をかけるほど飼い主に懐いてくれて、賢い犬種です。

海外の展示会で「ここまでの人懐っこい表情やしぐさは他の犬種にはない」と言われるのも、「忠犬ハチ公」でも知られるようなその忠誠心の高さと賢さが特徴ゆえでしょう。だから個人的には、犬に多くの時間を捧げられる人に飼って欲しい、という想いはあります。

40年前からは時代が変わり、共働き世帯が増えたことに加え、スペースや食事量や散歩などの問題もあってか、国内では大型犬を飼う人は減少傾向にあります。秋田犬の場合、1971年の42,444頭登録から、2020年には2,312頭まで減少している。国内犬としては唯一の天然記念物に指定されていることもあり、後世に残すことを目的に、殺処分などを少しでも無くすために保存会では活動を行ってきました。

『秋田犬保存会』が保存に尽力しているが、国内の頭数はなかなか増えないのが現状
『秋田犬保存会』が保存に尽力しているが、国内の頭数はなかなか増えないのが現状
秋田犬保存会の会長としてザギトワ選手に喜んでもらえるのはとても嬉しいことだ
秋田犬保存会の会長としてザギトワ選手に喜んでもらえるのはとても嬉しいことだ

興味深いデータとして、都会と地方では飼う人の行動が変わってきているということが挙げられます。東京や大阪といった大都市圏では、実は秋田犬を飼う会員は増加傾向にあり、本来であれば飼いやすいであろう地方にいくほど飼い主が減っています。

特に深刻なのは、秋田犬の本拠地である秋田県の大館市です。いまや秋田では観光事業の一環としても秋田犬の飼育に取り組んでいますが、ブリーダーの方の高齢化が進むに伴い、秋田犬もその数を減らしている。30代を中心とした若い世代では少しずつブリーダーの方が出て来ていますが、保存の観点からいってもまだまだ数が足りてないのが現状です。特に近年続いていたブームの影響もあり、飼いたい人に対して、飼育の成り手が追いついていなかった面もあります。

2016年頃から、秋田犬ブームの波が“異常”なものとなり、いくつかの問題も生まれました。中国では1頭1千万円を超えるような取引きが行われるなど、一部では値段が高騰しました。秋田犬は尻尾の独特な巻き具合、少し丸みを帯びた三角形の耳、アーモンド形のような眼などが特徴とされますが、なかなか一般の方には他の日本犬と見分けがつきにくい面もある。そこに便乗するように偽の血統書が見つかったり、雑種と思われる犬が高額で販売されたという悪質な例も聞こえてきています。

従来であれば秋田犬は近所の人の繋がりで飼うものでした。だからペットショップで秋田犬が取り扱われることもなかったのですが、それもブームで変わってきました。母犬から自然の出産数では考えられない数の子犬を産ませるなど、看過できない事例もあるんです。秋田犬の買い手や育て手のモラルは高いと思いますが、一部ではそんなビジネス色が強くなっている。それは非常に残念なことです。保存会では従来の文化を守っていくよう務めていくつもりです。

本来であれば毎日でも愛犬と一緒にいたいくらいです(笑)。犬の散歩ばかりしてきた私が政治家としてやってこられたのも、小さい頃から年上の犬友の人達に囲まれて、そこで人付き合いを学べたのが大きい。維新の会の国対委員長として、他党との交渉術が身に着いたのもそういった“犬友”のおかげかもしれません。

だから毎週末は必ず地元に帰り、愛犬との時間も作っている。それが私の生きがいでもあるんです。繰り返しになりますが、秋田犬が世界中でこれだけ愛され貴重な存在だということは広く知って頂きたい。そんな認識が広がれば、殺生分ゼロという未来へと繋がっていくことを信じています。

  • 構成栗岡史明

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