元日本代表FW大久保嘉人氏が明かす「ワンオペ育児と仕事の本音」 | FRIDAYデジタル

元日本代表FW大久保嘉人氏が明かす「ワンオペ育児と仕事の本音」

妻・莉瑛さんも明かす夫の「変化」

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大切な家族との一枚(『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』より)

「サッカーへの影響はむしろプラスやった。練習や試合に行く前に家を片付けると、気持ちもスッキリする。シャキッと気分が切り替えられるし、そこでうまくサッカーのスイッチが入る。今までは家の片付けや掃除なんてしなかったから、そういうスイッチもなかった」

そう語るのは、先日、39歳にして現役を引退したサッカー元日本代表の大久保嘉人氏。J1のセレッソ大阪で活躍しながら、息子の橙利(とうり)くんと二人暮らしをしていることでも話題に。〝ワンオペ育児〟への挑戦は『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』として書籍化もされた。

きっかけは妻の冗談の一言だった

「Jリーガーはほかのお父さんたちに比べて、時間にも体力にも余裕があると思うんですよ。『サッカー選手が家事と育児をしながら現役を続けるなんて、パフォーマンスに影響は出ないのか』とよく聞かれたけど、本当にプラスの影響しかなかった。橙利(とうり)は小4で、小さい子みたいに手がかかる訳でもないから、家事育児で疲れ果てるなんてこともない。自分がオフの日や午後練の日に橙利の学校があると、『もっと寝たいなー』と思うことはあったけど(笑)、そのくらいかな。

橙利(とうり)くんと買い物帰り。現役Jリーガーだった大久保は「主夫生活」を思い切り楽しんだ【撮影:増田勝行(SINGO)】

むしろね、俺はさみしがり屋なんで、橙利が家におってくれて本当によかったって思ってます。毎日楽しかったし、夏に5週間の隔離期間を経て家に帰ったときも、橙利の存在にマジで救われました」

結婚して16年。それまでは完全なる亭主関白で、それこそ「リモコン1つ動かさなかった」という昔ながらの九州男児。そんな大久保氏に、当時9歳だった息子を任せることについて、妻の莉瑛(りえ)さんに不安はなかったのだろうか。意外なことに、莉瑛さんはこう語る。

「セレッソ大阪さんからオファーをいただいて、嘉人の単身赴任が決まったとき、じつは冗談で『ちょっと、誰かひとり連れて行かない?』なんて言ってたんです。なにせ、上は16歳、下は4歳の男4人兄弟。さすがに末っ子はケンカしませんけど、上3人はよくケンカもするし、私とも衝突する。ワンオペで4人を見るとなると、これはちょっと大変だな……と。

もちろん子どもたちはそんなことを言っていたなんて知らないんですけど、小学生組に『パパはひとりで住むんだ』という話をしたときに、橙利の方から『俺もついていきたい』と言い出してびっくりしましたね。

『生きていけるのだろうか』という漠然とした心配はありました。でも、今考えれば、嘉人のことを信用してたのかな。自分の子どもだし、なんとかするだろうって。私も楽観的なところがあるので、周りから『食事とかどうするの?』と聞かれて初めて『ああ、そうか』って思ったりもしましたけど(笑)、結局は、住みたい者同士が一緒に住むんだから大丈夫かなと思っていました」

莉瑛さんから見て、ワンオペ育児を経験した大久保氏はどう変わったのだろうか。

「すっごく変わりました。昔からよく子どもと触れ合っていたし、子どもの成長に興味を持って、私の話もよく聞いてくれていました。もちろんそれを育児と呼んだら『育児をしてくれていた』ということになるんでしょうけど、母親側からすると、育児ってそれだけではないですよね。サッカー選手は自由になる時間も意外と多いので、『もうちょっとやってくれたら……』と求める気持ちはいつも持っていました。

けれど二人暮らしをしてからは、『橙利のことを自分が見なきゃいけない』って責任感が生まれて、大変なことがいろいろ見えてきたんだと思います。見えてきただけでもうれしいんですけど、それに行動も伴っているので本当にありがたいですね」

もともと子煩悩ではあったという大久保氏。元来の人間性に加えて、「挑戦が好き」「新しいものが好き」という性格もプラスに働いていると莉瑛さんは分析する。

「長男の碧人を妊娠していたとき、ベビー雑誌の付録に『妊婦の夫は何をすべきか』という付録があったんですね。それを『読んでね』と渡したら、『わかった』と言いながら放り投げられて。『ああ、読まないで終わりかな』と思ったんです。でもその後、嘉人が食器を洗っていることがあったので、どうしたのか聞いたら『そうしろって書いてあった』と言う。家事なんて何もしないけど、人間性というのはすごくある人なんですよね。

あとは根っからのチャレンジャー。そして知りたがりで、何にでも興味を持つ性格。そのときは初めての子だったので、何もかもが未知の世界じゃないですか。なのでその付録も、すごく一生懸命見ていました。離乳食のことを『宇宙食って、いつから食べ出すの?』なんて聞かれたのもその頃ですね(笑)。

同じ環境に飽きてしまうタイプなので、どんどん成長していく子どもという存在はおもしろくて仕方ないんだと思います。表情もやることもコロコロ変わりますからね。なので橙利との二人暮らしをする前も、育児関係で私が言ったことは『おもしろそうだからやってみる』と、やってくれることが多かったです」

史上最多の通算191ゴール。今年もチーム2位の6ゴールをあげたが、ユニフォームを脱ぐことを決めた(写真:アフロ)

話を聞いていると、それまでも十分〝イクメン〟の部類に入ると思うけれど、二人暮らしの前と後では決定的な違いがあると言う。

「今までは『言われたらやる』というお客さん的立場だったと思うんです。でも今は育児を『自分ごと』として考えている。SNSで発信したりするのも、見せるためのものじゃなくて、真の姿。決意とかも込めて発信しているんだなと思いました。今までは、嘉人以外の4人がひとつの円の中にいて、嘉人は円の外で経済的に、精神的に家族を守るというイメージだったんですが、今は家族全員がひとつの円の中にいる感じがします。

家事の大変さに気づいてくれたのもすごく大きいですね。本の中でも言いましたが、シーズン中のオフで家に帰ってきたとき、ふかふかで大きいバスタオルを渡したら『えっ、こんなの使っていいん?』って聞いてきたんです。それまではバスタオルでも何でも、洗濯したてを1回使ったらすぐ洗う、という感じだったのに。バスタオルがいかにかさばって、乾かしにくいか、身に沁みたからからこその発言だなぁと思いました。

私がキッチンに立っていたときには『横浜での生活がまた始まったときには、週1で俺が作るわ』とも言っていました。実際にどうなるかな?という気持ちはありますけど(笑)、でもそういうことを考えたり、言ってくれたりするようになったことがまずうれしいですよね。タオルの反応も、これだけであんなに喜ばれるなんて!と感激しました」

世の中のお父さんたちへ…

〝ワンオペ育児〟を経験したことによる成長は、妻の莉瑛さんから最大級の評価をもらった。父親の家事育児への参加が叫ばれる昨今、大久保氏はそれについてどう考えているのだろうか。

「俺がやってるからみんなもやれよ、とはまったく思わないんですよ。俺よりもっとやっている人もいっぱいいると思うし。やりたい人はやったらいいし、やりたくなかったらやらなければいい。みんなそれぞれ考え方とか個性があるからね。でも、やってみたら意外と楽しいし、新しい発見とか成長とかがあるかもしれないよ、ということは伝えたい。あとは、本を読んでもらって、奥さんの大変さに気づくとか、『大久保ができるんだから俺にもできるかな』って思うとか、何かのきっかけになってくれたらうれしいなと思ってる」

先日、21年間の現役生活にピリオドを打ったが、引退を告げたとき、一緒に暮らす橙利くんはどういう反応をしたのだろうか。

「橙利にも、他の子どもたちと同じタイミングで伝えました。横浜に帰って、子どもを並べて伝えたんだけど、『用事ができたから横浜帰るぞ』って言って連れて行った。

『11月16日に引退を決めた』と会見で言ったけど、それまで引退が頭にチラついてたなんてことはまったくなく、来年もやるつもりだったし、子どもたちにもそう伝えていたんです。だから、引退を考えたのは本当に16日。突然浮かんで、パッと決めた。『引き際を決めるのは大変だったんじゃないか』って聞かれるけど、全然大変じゃなくて、自分で決められる立場にあったことに感謝しています。

橙利は『やめて欲しくない、現役を続けて欲しい』って言ってましたね。転校することもさみしがってた。こっちで仲のいい友達ができたから、その子たちと離れるのがいやだって。けどね、大阪に遊びに来たときにはまた会える。会いたいと思える仲良しの友達が大阪にいるって、すごくいいと思うんです」

気になる引退後だが、会見で触れていた「ゴルフで90切り」以外に、何かやりたいことや目標はあるのだろうか。

「今まではほぼサッカーしかしてこなかったから、これから先は、いろいろなことにチャレンジしたい。いろいろやっていくうちに、自分のやりたいことが見えてくるかなと思うし。指導者も興味はあるけど、まだ指導者ライセンスを取ろうと動き始めていなくて。ということは、まだそこまでやる気じゃないんだなと思ってる。今はテレビとか、メディアに出る仕事のオファーを多くもらっているので、そっちを中心にやっていきたいね。これからまた新しい挑戦が始まるのかと思って、今もずっとワクワクしているよ」

サッカーで一時代を築いたレジェンドの新たなチャレンジに注目だ。

撮影:増田勝行(SINGO)

撮影:増田勝行(SINGO)

橙利(とうり)くんのために作ったピカチュウ弁当【撮影:増田勝行(SINGO)】
撮影:増田勝行(SINGO)

 

  • 取材・文おざきゆか撮影増田勝行(SINGO)

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