徹底分析!藤井聡太四冠のおやつセレクトの「奥深さ」 | FRIDAYデジタル

徹底分析!藤井聡太四冠のおやつセレクトの「奥深さ」

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

老舗の和菓子から、農家さん手作りのタルトまで…

藤井聡太さんの対局の勝敗はもとより、どんなおやつを選ぶのかが話題になっている。藤井さんが選んだおやつは、即完売になってしまうほどだ。

「乃し梅本舗 佐藤屋」の寒天菓子「空ノムコウ」。味わいはほんのりと生姜風味

「私も将棋はよくわからないんですけど、藤井さんが何を召し上がったかチェックしてしまいます」

と言うのは、スイーツジャーナリストの平岩理緒さん。いまやお菓子の業界人も気にする藤井セレクトなのだ。

棋士のおやつは対局中の10時と3時。食事は棋士が注文したものの代金を払うけれど、おやつは主催者側のサービス。棋士が注文することもあれば、いくつかのメニューの中から棋士が選ぶこともある。

「私が注目するのは、お店の選び方。老舗あり、やる気のある職人さんが開業したばかりのお店あり…。とてもバラエティーに富んでいる。地元のお菓子を知ってほしいということからなのか、どの対局でも、対局場所の近くにあるお店から選ばれているようですが、お店選びにセンスを感じます。いったいどうやって選んでいるのか、そのシステムが気になります」(平岩理緒さん 以下同)

たとえば10月22日に行われた竜王戦第2局の1日目の10時のおやつに藤井さんが選んだのはくまの形が可愛いと話題になった、「くま最中」「あんと塩きなこ」。作ったのは開店2年目の「御室和菓子いと達」というお店だ。午後のおやつは京都ホテルオークラのアップルパイ。これは地元で人気のロングセラー商品。そして2日目午前のおやつは1802年創業の亀屋重久という老舗の和菓子。確かにバラエティー豊かだ。

「このほかにも、福島県で行われた竜王戦第3局1日目の10時のおやつは『じゃんがら』という地元いわき市の銘菓。午後のおやつは、南米ウルグアイやブラジル南部周辺地域原産のフルーツ、フェイジョアを使ったタルトとドーナツでした」

その地方ならではのお菓子から、珍しいフルーツを使ったお菓子まで、藤井セレクトは幅が広い。王位戦第1局1日目の午後のおやつにひよこ型のスイーツ「ぴよりん」を選んだときは、お店のサーバーがダウンするほど話題になった。そして、くま最中。藤井さんは可愛いおやつが好きなのではと思われているが、そんな単純なものじゃない。藤井セレクトは、もっと奥が深そうだ。

「フェイジョアは、トロピカルフルーツに似た甘酸っぱいフルーツなんですけど、たぶん、それまで藤井さんは召し上がったことがないと思う。じゃんがらも、知る人ぞ知る銘菓なので、もしかしたら初めてのお菓子だったかもしれませんね。大事な対局のときに、どんな味かわからないものにチャレンジするというのは、好奇心旺盛なんでしょう。一事を成す方というのは、新しいものに対しても意欲的なのかも。キャパシティーが広いというか、幅がおありなんですね」

コンピュータを使って将棋の勉強をすれば、昔ながらの詰将棋を解くのも好きという藤井さん。万事にわたってチャレンジ精神旺盛なのかもしれない。

ちなみに、このフェイジョアタルトを作ったのは、福島県で唯一フェイジョアを栽培している農家の奥様。藤井さんが選んで以来、注文が殺到しているそうだが、手作りで1日60個しか作れないのだと言う。

竜王戦前夜祭での藤井聡太さん。「おやつに何を食べようか」なんて考えてるわけはない…(写真:アフロ)

1局で2~3㎏体重を落とすことも

ところで、このおやつ、棋士には欠かせないものだとか。

「頭を使う仕事の方は、カロリーが必要だと聞きます」

一説によると、プロのチェス棋士になると1日に6000Kcalを消費するのだとか。まるでアスリートのようだ。

「甘いものは体によくないというような風潮がありますが、脳の栄養分は糖。ごはんや麺などに含まれるでんぷん質は分解されてエネルギーになるまで時間がかかりますが、砂糖はすぐに脳を活性化させる。疲れたときや気分転換したいときに、甘いものを食べるのは、とてもいいことだと思います」

棋士も頭を使うということでは、チェス棋士に負けてはいない。対局になると1局で2~3㎏体重が減ることもあるとか。

棋士の中にはおやつを心待ちにしている人もいると聞く。それだけ消耗が激しいのだろう。

お菓子業界の救世主となるか!?

竜王戦に勝って四冠となった藤井さん。これからどこまで強くなるのだろう。対局が増えれば、いろいろなおやつも食べられる。

「お菓子は冠婚葬祭や、お中元お歳暮に使われることが多かったのですが、最近はそういう風習も消えつつあり、注文が減ってきている。そのうえ、新型コロナの影響で駅や空港が利用されなくなって、苦しい思いをしているところがたくさんあります。そんな状況なので、藤井さんが選んだということで、興味を持ってお取り寄せをしたり、地方のおいしいお菓子を知ってもらうきっかけになるのは、お菓子業界にとっても、とてもいいことだと思います」

機会があれば、藤井さんに食べてほしいと思うものは?

「昔ながらの伝統を引き継ぐことも大事ですけど、それだけでなく今の時代に合った提案をしようということで、新しい挑戦をする和菓子店が増えてきています。伝統的な技法を使いながら、これまでにない和菓子ということでネオ和菓子と呼ばれていて、話題になっています」

その一つが、「乃し梅本舗 佐藤屋」の「空ノムコウ」という寒天菓子。深いブルーの中に、気泡がキラキラと輝き、まるで宇宙のよう。もう一つが滋賀県「とも栄」の「MIO」という和菓子。七角形の多面体という、これまでの和菓子にない形で、地元産のベリーを使った濃いピンクが花のよう。職人さんたちは頑張っているのだ。

「藤井さんに選んでいただき、おやつとして召し上がっていただくことで勝利につながっているとしたら、作り手冥利に尽きると思います」

「乃し梅本舗 佐藤屋」の寒天菓子「空ノムコウ」。味わいはほんのりと生姜風味

「とも栄」の「MIO」。外はシャリ、中にはもちっとしたゼリーが閉じ込められている

平岩理緒 1ヵ月に200種類以上のスイーツを食べ歩き、雑誌やWEB、ラジオ、TV等で、スイーツを中心とする「食」の情報を発信するスイーツジャーナリスト®として活動。執筆の他、セミナー講師、イベント司会、企業の商品開発コンサルティングまで幅広くこなす。著書に『厳選ショコラ手帖』『厳選スイーツ手帖』(いずれも世界文化社)など。

  • 取材・文中川いづみ

Photo Gallery5

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事