初詣、箱根駅伝、渋滞映像……年末年始テレビマンのヤバイ苦悩 | FRIDAYデジタル

初詣、箱根駅伝、渋滞映像……年末年始テレビマンのヤバイ苦悩

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毎年お正月には多くの参拝客が訪れる明治神宮。初詣中継はとにかく大変で、泣かされたテレビマンは数多い…… 写真:©Stanislav Kogiku/SOPA Images via ZUMA Wire/共同通信イメージズ

いよいよ年の瀬も押し迫ってきて、みなさん「さあ、のんびりテレビでも見るか」というモードに突入している頃だろう。

一方、テレビを作っているテレビマンたちにとって年末年始は「のんびりしていられない季節」。

たくさんの特別番組があり、その編成に年末ギリギリまで追われているというのも忙しい理由のひとつなのだが、年末年始には「初詣の光景」「各地の渋滞の様子」といったこの時期ならではの生中継も盛りだくさんだからだ。業界歴30年の筆者が「年末年始テレビの舞台裏」を紹介したいと思う。

①ニュース番組はネタ切れとの戦いに

私は長年ニュースやワイドショーの制作に携わってきたが、年末年始何が困るというと「ネタがないこと」以上に困ることはない。だいたいニュースは「仕事納め」とともにパッタリと何も起きなくなり、三が日は世間はほぼ「ベタなぎ」の状態で波風ひとつ起こらない。

何も起こらないからと言って、放送時間を急遽短くすることはできないので、毎年だいたい「初日の出・初日の出暴走・渋滞と人出・初詣・初売り」あたりのネタを探して必死で格闘することになる。もちろん、初日の出暴走は無いにこしたことがないので、なさらないでほしい。

②初詣中継が大変

ということで、ネタが少ない中、いろいろな場所から生中継をすることになるのが年末年始あるあるなのだが、この中継が結構大変だ。中でも最も大変なのが「初詣」と「渋滞」の中継の2つで、これに泣かされたテレビマンも多いと思う。私も何回も泣かされた。

「初詣中継の何が大変なの? 現地に行って撮ればいいだけじゃない?」と思われるかもしれないが、例えば明治神宮には毎年300万人を超える参拝客が押し寄せるわけで、ものすごい大混雑の中で生中継をやるのだから、裏側はとても大変なのである。

生中継をするには、神社の近くあるいは内部に大きな中継車を駐車させて、そこからケーブルを中継現場である本殿の近くまで何百メートルも這わせなければならない。このケーブルにもし人がつまずいて転びでもしたら一大事だ。

さらに境内にスタッフの待機場所や女子アナの更衣室・メイク場所などを確保しなければならないし、「あ!〇〇アナだ!」ということで人が押し寄せてきたりしたら事故が起きかねない。神社側と1か月以上にわたる綿密な打ち合わせと下見、中継車の駐車場所での電波状況の確認や安全なケーブルの敷設ルートなど、いろいろ準備が山積みなのだ。

しかも、いざ本番!となると、1時間おきくらいに生中継で呼ばれるので、話すネタに困ってしまう。正直な話、基本的には「人がたくさんいます」と「寒いです」くらいしか話すべき情報はないのだ。そんな中ディレクターと女子アナが頭を抱えながら必死で話すネタを無理矢理ひねり出しているのである。

そしてこういう「生中継の準備が大変」ということでいうと、鬼のように大変だと思うのが「箱根駅伝」の中継準備である。私は直接関わったことはないが、いつも「大変そうだなあ」と思って敬意を払っている。

何せ東京から箱根まで、歩道橋などの電波をさえぎる障害物があっても画像が乱れないように全てのポイントをクリアせねばならない。しかも毎年沿道周辺の建物なども変わるわけだから、「昨年と同じ」は通用せず、毎回事前に入念な準備が必要になる。箱根駅伝が毎年綺麗な映像で見られるのは、日本テレビのスタッフたちの血の滲むような努力が影にあるからなのだ。

③各局、なぜか「渋滞中継」で競争

そして、初詣中継と並んで大変なのが、渋滞の生中継だ。年末年始は帰省ラッシュやUターンラッシュで全国各地の高速道路などが大渋滞するが、この大渋滞の生中継をするのが意外と大変なのである。

日頃から中央道の八王子料金所や関越自動車道の所沢インターなど、混雑が激しい場所には無人カメラが設置されているのだが、この時期は各局他にも無人カメラを特設して「激しい渋滞映像」を狙うことになる。「どこの局のニュースの渋滞映像が一番激しかったか」という競争になるわけだ(冷静になって考えてみると、視聴者からしたらそんなのほぼどうでもいいと思うのだが……テレビマン的には真剣に競争しているのだ)。

どこにこの特設カメラをつければいいのか? そして、次のニュースでどのカメラと中継を結べば一番混雑しているのか? これらを予測するのが難しいのだ。もちろんNEXCOや日本道路交通情報センターに事前に詳しく取材して予想を立てるのだが……「いざ本番」となると、無人カメラに映った道路をスイスイ車が走っていることが多いのは一体なぜなんだろう? 結構ベテランの私でも解明できない、永遠の謎である。

④ニュースの放送時間帯によって運命が大きく分かれる

年末年始はニュース番組やワイドショーも放送休止になることが多い。私のいたテレビ朝日でいえば『スーパーJチャンネル』や『報道ステーション』は休止となり、年末年始は『ANNニュース』などの短い定時ニュースのみになるのが普通だ。番組が休止になれば、スタッフも若手を中心にたまに交代で出勤するほかは、お休みとなる。

しかし、この休みの長さは、番組の放送される時間によって大きく違ってしまう。

夜のニュース番組は「年末年始の特番」の放送のため。だいたい早めに放送休止になる。早ければクリスマス前後に「年内最後の放送」になることもあるのだ。そして年明けも暦によるが早くて5日、だいたい8日くらいに始まるわけだから、うまくいけば2週間以上番組スタッフは長期休暇を取ることができる。

これが夕方のニュースとなると、若干短くなる。年内の放送はだいたい、仕事納めの28日くらいまで。そして年明けもだいたい4日くらいには始まるから、休み期間はざっくり1週間前後だろうか。

一番悲惨なのは朝のワイドショーだ。朝はほぼ特番が編成されることもないので、年内は余裕で30日くらいまで放送がある。そして年明けも下手をすると「新春スペシャル」なんかを2日にやらなければいけないので、ほぼ年末年始に休むことができないのだ。

このように、ニュース系番組のスタッフの運命は、放送時間によって大きく左右されるのである。

さて、年末年始テレビの舞台裏をいろいろご紹介したが、いかがだっただろうか?

もしこれからみなさんが、正月モードでのんびりとテレビを見てくださる時、少しでも「このテレビを作るために休まず働いている人もいるんだなあ」と頭の片隅にでも思っていただけたら、筆者としてはとても嬉しい限りです。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

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