焼肉店立てこもり 28歳男性「ホームレスに語った意外な肉声」
「オレの人生を終わらせてくれ。死刑にしてくれ」
イス5個で作られたバリケード越しに、男は警察官に対しこう訴えていたという。
男が警察官と話しているスキに、警視庁捜査第1課の特殊班捜査係(SIT)が閃光弾を5発ほど店内に投げ入れ、厨房のある裏口から突入。カウンターの角に座っていた人質の店長を救助した後、男の身柄を確保した。突入から、わずか数秒のことだった――。
1月8日夜9時ごろ、東京・代々木の焼肉店「焼肉牛星代々木店」の店長から110番通報が。男が店長を人質にとり、立てこもっているという。約3時間後の翌9日午前0時過ぎ、警察官が突入し男を捕まえる。監禁容疑で現行犯逮捕されたのは、住所不定・無職の荒木秋冬(あきと)容疑者だ。
「事件から2週間ほど前に実家のある長崎県から上京した荒木容疑者は、新宿でホームレス生活を送っていたようです。警察に対し、犯行動機についてこう語っています。『定職についたことがなく、ホームレス生活で生きている意味を見いだせなかった。大きな事件を起こして死刑になればイイと思った』。
代々木の焼肉店に入ったのは、たまたまだったようです。荒木容疑者は、こうも供述している。『新宿駅に向かっていて、(焼肉店の)看板が目に入った。捕まる前に焼肉を食べようと思った』と」(全国紙社会部記者)
牛刀を持ちながらワイン

荒木容疑者が一人で入店したのは、夕方6時半ごろ。2時間ほどで約6000円分の飲食をすると、店員にこう書かれたナプキンを渡した。
「爆弾を起動した。警察に連絡しろ」
店員から報告を受けた店長は、スグに110番通報。店内には店員や客が20人ほどいたが、人質となった店長以外は避難した。
「バリケードを作り店内に立てこもった荒木容疑者は、店にあった刃渡り約30cmの牛刀を持ちワインを飲んでいたが、暴れる様子はなかったそうです。店長には『危害を加えるつもりはない』と話し、こうも言っていたとか。『最近あった電車内の事件のようにしたかった』と。昨年8月に小田急線内で10人が刺傷された事件。また10月に京王線内で火事が起き、18人が重軽傷を負った事件を念頭に置いていたようです。
店内からは粘着テープなどが巻かれた箱が3つ見つかっていますが、荒木容疑者は『見せかけの爆弾を作った』と話しています。荒木容疑者の所持金はゼロだったそうです」(同前)
路上生活に疲れ、自暴自棄になっていたと思われる荒木容疑者。だが捜査の中では、将来に対する意外な肉声も明らかになっている。
「荒木容疑者を知るホームレスには、こう明るく話していたといわれます。『やっと仕事が決まった。近々働きに出る』と。マジメで大人しい印象だったそうです」(別の全国紙記者)
一時は、前向きな態度もみせていたらしい荒木容疑者。警察は、犯行にいたるまでの詳しい経緯を調べている。


撮影:蓮尾真司