「私は殺していない」紀州のドン・ファン事件 須藤早貴被告のいま
2022年紀州のドン・ファン殺害事件は大きく動く ’21年4月の逮捕から8ヵ月、いつになったら裁判は始まるのか…… 莫大な遺産を巡っては「遺書の筆跡はニセモノ」とする鑑定書を遺族側が提出して注目
FRIDAYが見た自信満々な態度
紀勢本線・和歌山駅から歩いて20分ほど、瀟洒(しょうしゃ)な一軒家が立ち並ぶ住宅街の一角に、「丸の内拘置支所」はある。窓には目隠し用の金属網が貼られており、中の様子を窺(うかが)い知ることはできないが、須藤早貴被告(25)はいま、この場所で審判の日を待っている。

’18年5月24日、「紀州のドン・ファン」こと資産家・野崎幸助氏(享年77)が田辺市内の自宅2階の寝室で怪死した。死因は急性覚醒剤中毒だった。事件は大きな話題を呼んだが、早貴被告が逮捕されたのは、夫の死から実に約3年が過ぎた’21年4月28日のことだった。
「事件当日に家にいたのが早貴被告とお手伝いの女性だけだったこと、事件前にスマホで覚醒剤について調べていたことなどから、警察は逮捕に踏み切りました。しかし、いずれも状況証拠に過ぎません。裁判がいつ始まるのか目処(めど)はまったくついていませんが、かなり時間がかかるのは間違いないでしょう」(全国紙社会部記者)
’21年12月下旬、本誌は拘置所にいる早貴被告のもとを訪ねたが、「接見禁止」とされており面会は叶わなかった。早貴被告の代理人とされる和歌山市内の弁護士事務所にも取材をしたが、
「(早貴被告の)弁護士に就(つ)いているか、お答えは差し控えさせていただきます」
との回答だった。
冤罪を主張するならば弁護士が会見を開いたりして情報発信するのが常套手段だが、そういった動きはない。拘置所での長期勾留についても不服申し立てはされていない模様だ。裁判の場で堂々と主張をするつもりなのか、代理人弁護士との間で作戦がまとまっていないのか。早貴被告が沈黙している理由は定かではないが、一つだけ間違いないのは、彼女が「無罪」を主張し続けていることだ。
「警察・検察は逮捕以来、早貴被告の認否を明らかにしていません。しかし、捜査関係者によると、彼女が事件への関与を否認しているのは間違いありません。逮捕から8ヵ月が経ちますが、証言が変わったとの情報は伝わってきていません」(同前)
実際、早貴被告はFRIDAYの取材にも、一貫して無罪を主張してきた。事件から約2週間後に行ったインタビューでは、
「社長(野崎氏)と初めて会ったのは’17年末。知人の紹介でした。社長からは『結婚してくれたら月に100万円を支払う』と言われ、実際にもらっていました。私としては正直、『美味しい話だな』と思い、結婚をしました。月100万円がもらえなくなるのに、殺すわけないでしょう?」
と言ってのけ、その表情に動揺は一切見られなかった。
事件後に東京に戻った早貴被告は、マスコミの追跡を避けるため、本誌記者に送迎を依頼し、ネイルサロンやマツエクに通っていた。本誌はその車内でも事あるごとに、
「本当に犯人ではないんですか?」
と問いただしてきたが、彼女はときに笑いながら、
「ヤッてないから」
と答えていた。そんな早貴被告が、今になってすべてを告白するとは到底考えられない。
私は殺していない――。来(きた)る裁判でも、早貴被告は堂々とそう主張するだろう。裁判では覚醒剤の入手ルートと、野崎氏に飲ませた方法が争点になるが、警察が直接証拠となる「隠し玉」を持っていない限り、判決が出るまでにはさらに時間がかかりそうだ。





『FRIDAY』2022年1月21日号より
PHOTO:吉田 隆