ビジネスマンになった五郎丸歩「最終的には社長を目指しますよ」 | FRIDAYデジタル

ビジネスマンになった五郎丸歩「最終的には社長を目指しますよ」

チームは新型コロナウイルスの集団感染により、新リーグでまだ1試合も戦えていない苦境にあるが…

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ジャケット姿で名刺交換する五郎丸。本誌が訪れた日も、訪問客へ挨拶するため取材を中座することもあった

32年間のラグビー人生を終えてから1年足らず。人気低迷が続いた日本ラグビー界に再びブームを巻き起こした男は、名刺とパソコンが手放せなくなった。五郎丸歩(35)の肩書は『静岡ブルーレヴズCRO(クラブ・リレーションズ・オフィサー)』。1月に開幕する「リーグワン」誕生にあわせて、五郎丸が所属したヤマハ発動機の100%子会社で働いている。

「実務としてチケット販売をメインにやらせてもらっています。朝8時から日によって夜10時まで事務所にいることもあるので、ラグビーを見る時間もありません……。現役時代とまったく違う生活ですが、楽しくてしょうがない。燃えに燃えてますよ」(五郎丸)

名門・早大やヤマハ発動機ジュビロで日本一を経験し、’15年W杯で、当時すでに2度の世界一に輝いていた南アフリカを倒す金星の立て役者になっても、指導者としてピッチに戻るつもりはない。五郎丸は、どのチームよりも先にプロクラブを作ろうとしているレヴズで、最近まで選手だった人がマネジメントに携わることで、ラグビー界では例を見ない道を切り開きたかったという。「最終的にはこの球団の社長になれる実力をつけたい」と強い意欲を見せている。

五郎丸にとっての”ビッグボス”は、山谷拓志(やまやたかし)社長(51)。日本バスケットボールリーグに参入するクラブの立ち上げや、経営難だったクラブをB1リーグ昇格に導いた経営者で、引退後の生活を考えていた五郎丸にこう語りかけた。

「まず私の仕事はあなたにこのチームに残っていただくことです。ただ、現役時代の知名度や『お飾り』の形で仕事をするなら、雇う意味はない。カバン持ち、チケット一枚売るところからしっかりやりましょう」

この言葉に五郎丸は「久々に自分の中で火が付きました」。

山谷社長の言葉を借りれば「チケットを売ることは、チームを強くすることと同じぐらい大事」。これまでラグビーは企業色が強く、ヤマハやトヨタなど世界的企業が持つ「部活」だった。企業が予算を捻出し、部員である社員の立場も守った。しかし「リーグワン」では企業に頼らず、収益を各チームが自分たちで稼ぐことを目指す。五郎丸はその原資を稼ぐ一翼を担っているのだ。

最高約25万円の企画チケット

レヴズの最初のホームゲームは1月23日、ヤマハスタジアムで行われる東京サントリーサンゴリアス戦。五郎丸はさっそく、プランを考え、山谷社長に「やらせてください」と直訴した。それがサッカー日本代表が日韓W杯期間中の宿泊地とした、静岡県袋井市にある高級リゾート「葛城北の丸」とのタイアップ企画。1泊2日の宿泊付き観戦チケットを売るため、交渉も一人で行った。

ラグビーの観戦者には富裕層が多いため、1人最高約25万円のプランも作り、用意した70枚は発売後即完売となった。

「すぐに売れたのは、新リーグに関心を持っていただいている証(あかし)かなとは思いますが、今は任せられた仕事をやりきって信頼を獲得しないといけない。ホーム開幕戦で約1万5000人収容のスタジアムを満員にすることを目指す中で70枚売れただけなので、まだまだですよ」

山谷社長は、五郎丸の仕事ぶりをこう評する。

「突っ込みどころがあればはっきり言おうと思っていましたが、収益を見込めて計画にも無理がなく、自分で売ってきた。なかなかやるな、と感じています」

今回発揮された五郎丸の営業センスは、’10年、リーマンショックの影響でヤマハがラグビー部の強化縮小を打ち出し、五郎丸がプロ契約から社員選手に切り替わったときの体験と無縁ではないだろう。広報宣伝部に配属された五郎丸に対し、必ずしも全員が好意的でラグビーに理解があるわけではなかった。自分と経歴が違う人とどう付き合うか。

サラリーマンなら誰もが抱える悩みに五郎丸も直面したが、対人関係において逃げずに向き合い、同僚があまりやりたがらない仕事を先回りしてこなすことを心掛けると、自分に向けられる眼差しが変わった。

「自分とは一見、”真逆”にいるように見える人をこちら側に引き寄せていくのもけっこう、面白いんですよ」

そんな五郎丸は今、何を目指して仕事をしているのだろうか。

「日本人で年俸が1億円を超える選手が出てきてほしい。そういう選手を出せるようなチームを目指したいです。選手がプレーしている間に満足してもらえる対価を払える組織にしたい」

野球やサッカーには当たり前のように年俸1億円プレーヤーが存在するが、ラグビーの場合、世界でも数えるほどしかいない。ピッチ上で15人と15人が激しくぶつかり合うため、けがのリスクと隣り合わせで、チームは選手だけで50人近く抱える必要がある。一方で試合ができるのは週1回が限度。1月開幕のリーグワンでは上位進出できなければ16試合で終わる。野球やサッカーと試合数だけ比べてもお金を稼ぐチャンスが少なく、経営者は頭が痛いところだが、将来的には「稼げる」競技に成長させたい。

逆境でこそ力を発揮してきた五郎丸は今度は自分ではなく、ラグビーに夢を感じてもらえるよう、ピッチを離れても汗をかき続ける。

メインの仕事はチケット販売だが、ヤマハスタジアムで観客に販売する料理メニューの打ち合わせにも加わった
趣味は釣り。現役時代も悩んだ時は海に行った。山も海もある静岡の良さを仕事を通して伝えたいと考えている(写真:静岡ブルーレヴズ提供)

本誌未掲載カット
本誌未掲載カット

『FRIDAY』2022年1月21日号より

  • PHOTO谷本結利 静岡ブルーレヴズ提供(3枚目)

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