綾野剛が『アバランチ』渾身の涙に込めた「深すぎるメッセージ」 | FRIDAYデジタル

綾野剛が『アバランチ』渾身の涙に込めた「深すぎるメッセージ」

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主演ドラマ『アバランチ』で好演を見せた綾野剛。次作にも期待がかかるが…
主演ドラマ『アバランチ』で好演を見せた綾野剛。次作にも期待がかかるが…

令和のドラマ史に大きな爪痕を残した10月期の『アバランチ』(フジテレビ系)。その興奮は年が明けた今も冷めやらぬまま、熾火となって視聴者の心の中で残っている。

「もう一度信じてみないか、正義の力ってやつを」

すべては予告動画の中で呟く、綾野剛のこのセリフから始まった。

この世の中には、法や正義ではさばききれない悪がある。そんな”悪”を暴き、全世界に生配信することで白日の下に晒す。それが”アバランチ”。

その時起こる熱狂が、危険をはらんでいることもわかっている。しかしこのメッセージが、「この国は、何も変わらない」と諦め、無力感に苛まれていた我々の心を強く揺さぶったことは間違いない。

「この作品は、綾野剛が主演する映画『ヤクザと家族 The Family』、映画『新聞記者』などを手掛けた藤井道人がチーフ演出として参加。主人公・羽生誠一(綾野)が所属する謎に包まれたアウトロー集団『アバランチ』の活躍を描く、劇場型ピカレスク・エンターテインメント。

特に第6話から始まる第二部では、多くの犠牲者を出した偽装テロ事件を足掛かりに権力の階段を上っていく大山健吾(渡部篤郎)と全面対決。最終回ではアバランチがすべてを白日の元に晒し、日本版CIAを作ろうとしていた大山の野望を打ち砕く。この展開には鳥肌が立ちました」(ワイドショー関係者)

しかし今作の見所は、決して最終話だけではない。アバランチ誕生秘話が明らかになる第5話『Episode0”夜明け”』こそ、胸に迫るものがあった。

テロ事件に仲間を巻き込み、死に至らしめた贖罪から警察官をやめた羽生は失意の中、小さな町工場で働き始める。ところがその工場の社長が取引先を失いたくない一心から先方の担当者に現金を渡しており、工場で働く娘・あかり(北香那)は、そんな父親を許せず事あるごとに対立していた。

だが、心ない担当者から発注を打ち切られると、あかりは担当者に金銭授受の証拠を突きつける。逆上して怒りに任せて暴力を振るう担当者。しかし一連の行為を隠し撮りしていたあかりは傷付き倒れながらも、笑みを浮かべ携帯に残された動画を羽生に見せ、

「この動画、世に出す。工場のことも諦めないから。新しい取引先を探す」

「正義は勝つよね」

と、訴える。不屈の闘志をみせるあかりに、

「すげえな」

といったまま言葉を失う羽生。その頬を、熱い涙が伝う。生きる気力すら失っていた羽生はあかりに心揺さぶられ、再び”自分の正義”のために、アバランチとして闘う決心をする。この場面こそ、ドラマ『アバランチ』のターニングポイントではなかったか。

「令和という時代。当たり前の希望や生きることへの誇りや尊厳を少しでも感じ取って欲しい」

と、語る綾野剛。このシーンを観て涙した視聴者は、私だけではあるまい。

そして、別れ際にあかりがプレゼントした“手作りのピアス”こそ、羽生にとっての“正義のシンボル”。肌身離さず付けていた”ピアスの謎”が解ける心に残るシーンでもあった。

だが感情をあらわにする綾野剛の涙に心奪われたのは、今回が初めてではない。

「去年公開された舘ひろしとW主演を務める映画『ヤクザと家族 The Family』では、暴力団にボコボコにされ血まみれになった綾野が親分(館)に助けられ、『行くとこ、あんのか。ケン坊』と優しい声を掛けられ、顔をくしゃくしゃにして滂沱の涙を流す。さらには、死の床に臥す親分に『俺の父親は親父しかいませんから』と言って、ゾクッとするほど優しい目をして涙を浮かべるシーン。

この二つも『アバランチ』の“正義の涙”に勝るとも劣らず、心の奥底に響きました。クールなアウトローを演じる綾野剛が、ふとした時に見せる涙。このギャップこそ、俳優・綾野剛の最大の魅力なのかもしれません」(制作会社ディレクター)

綾野には、今作『アバランチ』に賭ける思いがあった。

「綾野は『俺たちが現場でもっとも大切にしているのは、“熱狂の力”』『この現場にはとてつもない熱狂がある』と前置きした上で『俺たちが作り出そうとしている新しいカタチの作品が、3年後、5年後のエンターテインメント界に浸透する』という強い意思のもと、撮影に挑んでいます」(制作会社プロデューサー)

ドラマも今やグローバル化が叫ばれる時代。Netflixをはじめ、全世界に配信されるドラマが主流になりつつある今、日本のドラマも生き残りを賭けて闘わざるを得ない。だからこそ、新たなチャレンジが必要に迫られているのだ。

「『アバランチ』は撮影方法にもこだわりがあります。何十回もアングルを変えて同じシーンを一連の流れで撮る映画顔負けの手法を駆使して撮影。だから撮影時間も通常のドラマの比ではありません。

綾野は『そうすることで役を生きる時間が与えてもらえるから、毎回シーン・カットごとにアイディアが生まれる』と話しています」(前出・制作会社プロデューサー)

綾野剛と藤井道人監督は、1月13日から配信されるNetflixシリーズ『新聞記者』で三度タッグを組むことになる。

「この作品で米倉涼子、横浜流星と共演する綾野。その役どころは、権力側の若手エリート官僚。自責の念に駆られて憔悴していく官僚を演じるために、綾野はセットで撮影をする4日の間、一切食べず、水分もほとんど摂らず、鬼気迫る演技を見せています」(前出・制作会社ディレクター)

藤井監督をして“すっごくストイックな映画アスリート”と言わしめる綾野剛。彼が思い描くエンターテインメントの未来とは一体どんな世界なのか。見届けずにはいられない――。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO足立 百合

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