ブラインドサッカー欧州強豪トルコが前日本代表監督に就任を打診! | FRIDAYデジタル

ブラインドサッカー欧州強豪トルコが前日本代表監督に就任を打診!

実現すれば日本サッカー界から史上初めて欧州の代表監督が誕生

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昨年夏に開催された東京五輪パラリンピックで日本代表監督として指揮をとった高田敏志氏(写真:アフロ)

今夏に開催された東京五輪パラリンピックに出場し、視覚障がい者がプレーするブラインドサッカー(5人制サッカー)日本代表・前監督の高田敏志氏が欧州の強豪国、トルコ代表から監督就任のオファーを受けていることがわかった。

国際視覚障がい者サッカー連盟(IBSA)のランキングでトルコは4位に対し、日本は12位。ブラインドサッカーは健常者がプレーするサッカー同様、南米や欧州が世界をリードしており、欧州の格上国が格下の日本の関係者にオファーするのは極めて異例だ。

かつて、サッカー日本代表を率いた岡田武史氏が中国のクラブ、杭州緑城で監督をつとめ、西野朗氏もタイ代表の指揮をとったが、いずれもアジアだった。高田氏は就任に前向きと見られ、契約書にサインできれば、日本サッカー界にとって新たな扉が開かれる。

日本サッカー協会幹部が「相当大きなニュース」

「世界で認められたわけだから素晴らしいことだと思います。サッカー界に身を置く僕らにとっては相当大きなニュースです。それが健常者がプレーするサッカーなのか、視覚障がい者がプレーするブラインドサッカーであるか、ということは関係ない。やっぱり昨年夏のパラリンピックの試合内容の素晴らしさがあってのオファーだと思う。(就任に向けて)サッカー界全体で支援できるといいんですけどね。

選手は数多くヨーロッパに行くようになりましたが、指導者として行った人はまだいません。その前にアジアで指導者をたくさんださなきゃいけない、という流れの中で(元日本代表の)岡田(武史)監督が中国に行ったり、2018年W杯の指揮をとった西野(朗)監督がタイ代表に行ったという例はあります。

アジアで実績を積んだ監督にヨーロッパから声がかかるだろう、と想像していたので、そういう意味でも驚きです」

日本サッカー協会のある幹部は、トルコ代表から高田氏に来た監督就任オファーについて、素直に喜んだ。

高田氏は2013年からブラインドサッカー日本代表のGKコーチになり、2016年から監督に就任し、初出場となった東京五輪パラリンピックでメダル獲得を宣言。2004年のアテネ五輪からはじまったパラリンピックに1度も出場できなかったチームを「勝てる」チームに変えるため、それまでの守備的なスタイルから、点をとれるチームに大きく変更しながら勝つことを追い続けた。

就任当初、ゴールを奪える選手はキャプテンの川村怜と黒田智成しかいなかった。自陣ゴール前で守って、奪ったボールを2人の個人技に頼る堅守速攻が軸だったが、田中章仁や佐々木ロベルト泉といった守備重視の選手たちにも球さばきから粘り強く教えた。

「ボールを持つと、周囲がハラハラする」と言われたほどボールさばきが未熟だった選手たちが、仕事の合間に行った代表コーチによる地道な指導によって格段に上達。田中や佐々木は機を見てはゴールを狙えるほどの選手に変身した。並行して、2015年のワールドカップ以降、結果を残すラグビー日本代表が採用していた選手の体調をデータとして可視化できるシステム「One Tap Sports」なども導入し、代表合宿を行える日数が限られる分、24時間体制で選手の体調把握を行っていた。

パラ本番ではメダルに届かず、5位に終わったが、予選リーグのフランス戦に勝利し、パラリンピック初勝利。さらに、5位決定戦では欧州王者で世界ランク3位のスペインを1-0で下していた。その後、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)から続投要請はなかったため、9月末で退任。本職であるITサービスマネージメントやシステム運用やアスリートなどのマネジメント業務に奔走していた。

2019年、日本で開かれたワールドグランプリに出場したトルコ代表(白いユニフォーム、撮影:内田和稔)

対するトルコは今回、2012年からパラリンピックに2大会連続、2014年から世界選手権にも出場を続け、近年着実に力をつけてきた。トルコ国内にはブラインドサッカーのプロ契約選手がいて、国内リーグに海外選手がいるほどさかんだ。ただ、東京五輪出場がかかった2020年の欧州選手権では、スペイン、フランスに及ばず、3大会連続のパラ出場を逃した。選手個々の個人技は磨かれていても、組織力に結びつかない課題を残していた。

欧州で活躍する長谷部らと高田氏の共通点

対する日本の場合、会社員や教員と言った仕事を持ちながらプレーしている選手が大半。練習時間も限られるため、個人技ではどうしても劣る分、組織力で戦わないと対抗できなかった。「そういう厳しい環境の中でメダルをとることこそ、価値がある」という高田氏は、コーチやスタッフと協力して相手分析を徹底的に行い、格上の強豪国に力を出させない戦術、戦略を考え、選手に理詰めで落とし込んだ。

パラリンピック本番ではトルコが及ばなかったスペイン、フランス両国に勝った。選手個々の力が不足していたとしてもそれを補う術を探し、組織力で勝つマネジメント能力を、トルコ代表が高く評価した模様だ。

日本人選手の移籍などに関わる欧州在住のサッカー関係者はこう明かす。

「こちらでクラブの監督やコーチになろうと思ったら、欧州サッカー連盟(UEFA)公認の資格を持つ必要がありますが、たとえばアジアサッカー連盟(AFC)公認のある一定レベル以上の資格を持っていれば指導できる、とはならない。つまり欧州の中でアジアはまだ格下の存在です。

今、欧州にいる現役選手で近い将来、欧州のクラブで指導者になれるのはGK川島永嗣、MF長谷部誠、DF吉田麻也あたりでしょう。彼らに共通するのは、選手としての実績もさることながら、言葉を使って現地の人と深いコミュニケーションをとれること。こちらで指導者になりたいサッカー関係者はたくさんいるので、その中で仕事を得ていくにはやはり人脈も必要なんです」

高田氏は指導者を本気で志したとき、イタリアやドイツ、スペインなどで世界レベルの指導を学んだ。現在の本業でも日本だけでなく、スペインにもオフィスを構え、海外にも人脈はある。ただ、選手としては高校時代に大阪・交野FCで全日本クラブユース選手権全国3位までのぼりつめたものの、プロにはなれなかった。

同世代にのちにJリーグで活躍する北澤豪氏や中西哲生氏らがいたが、青学大に進学した高田氏は選手としてプロを目指すこと以上に、「プロになれる選手を育てること」に魅力を感じ、大学卒業後は一般企業に就職。仕事をしながら、空いた時間で少年サッカーの指導に夢中になった。

会社を辞め、欧州で公認資格をとり、帰国後に都内でGKスクールを開いたものの、最初の2か月は生徒が1人しか来なかった。「この子をうまくすることに自分の人生がかかっている」という忍耐のときを乗り越えて、評判を聞きつけた生徒が集まり、コーチとしても成長したいわば“たたきあげ”だ。

「(就任要請の)オファーがあったことは事実です。私とともに日本代表チームで戦ってくれたコーチやスタッフの取り組み全体が世界4位の国から認められた、と捉えています」

高田氏はオファーがあった事実を認めたが、それ以上多くは語らなかった。ただ就任を前向きに考えていると言われる。選手としてもコーチとしてもJリーグ経験のない、指導者のたたきあげが、欧州強豪国の日本人監督の第1号になるか。高田氏の契約の動向に日本サッカー界の夢が詰まっている。

国際視覚障がい者サッカー連盟が公表しているランキング。黄色の枠が昨年のパラリンピック出場国。ちなみにパラリンピックでは金メダルがブラジル、銀メダルはアルゼンチン、銅メダルはモロッコだった
試合中、エース黒田智成(右)に指示を送る高田氏。目が見えない選手にポジショニングを伝えるときに、選手の背中に書いて説明することが多かった。
パラリンピック初勝利をあげたフランス戦。トルコ代表監督就任が実現すれば日本サッカー界の歴史の扉も開くことになる(写真:アフロ)
  • 撮影内田和稔

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