昼間に眠くなる人は必読! 「睡眠時無呼吸症候群」はこんなに怖い

〔最先端医療特集〕横綱・白鵬や俳優・高橋英樹も苦しんだ潜在患者1000万人の病気

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今年10月、神奈川中央交通の運転手が意識を失いバスが高架橋の柱に激突。運転手は無呼吸症候群だった

「い、意識が朦朧(もうろう)として、た、大変な事故を起こしてしまった……」

神奈川中央交通の平敬文(たいらたふみ)運転手(50)が、動転した様子で会社に電話をかけたのは10月28日の夜9時過ぎのことだ。

平運転手の乗ったバスは、始発のJR横浜駅東口を出て2〜3分すると左右に大きく蛇行し始めた。ガードレールや民家の壁に接触しながら、走行すること約900m。JR桜木町駅付近で信号待ちをしていた乗用車に追突するなど2台を巻き込み、高架橋の柱に突っ込んだ。乗っていた男子高校生が死亡し6人が重軽傷。自動車運転死傷処罰法違反の疑いで逮捕された平運転手は昨年6月に、ある病気に罹(かか)っていたことが判明している。睡眠時無呼吸症候群(SAS)だ。

「平運転手には、月1回の医師の診療が義務づけられていました。高血圧とも診断されていたとか。それでも会社は、これまでの業務に大きな支障がなかったため、運転に問題はないと判断したようです」(全国紙社会部記者)

潜在患者は1000万人

こうした、SASが原因と思われる事故が多発している。主なモノをまとめたのが下の表だ。20年間SASを研究してきた、順天堂大学大学院教授で公衆衛生学が専門の谷川武氏が話す。

「寝ている間に何度も呼吸が止まり、睡眠の質が低下。そのため、日中に強烈な眠気や疲労を感じるのがSASです。呼吸が止まる回数によって軽度、中等度、重度に分けられます。10秒以上呼吸が止まる状態が睡眠1時間あたり5回以上20回未満を軽度、20回以上40回未満が中等度、40回以上が重度です。日本で中等度以上のSAS患者数は、300万人とも400万人とも言われます。保険が適用されない軽度の患者を含めると成人の10%、実に1000万人ほどが罹患していると考えられているんです。とくにドライバーは注意が必要。運転中に居眠りし、人の命を奪う大事故を起こしうるからです。問題は大半の患者が、自分がSASだという意識がないこと。米国での研究によると、SASに罹っていても認識がない人は8割近くにのぼります」

谷川氏は「SASになる要因は大きく四つある」と続ける。

「まず一つは、アゴの骨格が小さいこと。呼吸するための気道が狭い。舌が落ち込み気道を塞(ふさ)ぐこともあります。二つ目は肥満。私が約5300人のトラック運転手を調査したところ、BMI(肥満度指数)が30以上の人は標準値(18.5〜24.9)の人に比べ4.4倍の割合でSASでした。これは脂肪により気道が狭まるためです。三つ目が加齢。気道は周囲の筋肉によって広げられていますが、加齢によってそれが弱まってしまいます。四つ目が酒とタバコ。酒は筋肉を緩め、タバコは気道の炎症を引き起こします。痩(や)せていてもSASの人がいますが、たいていは酒が原因です。SAS患者に共通するのが、いびきが大きいこと。家族から『いびきがうるさい』『よく寝ている時に息をしていない』と指摘されたら、医師の診断を受けることを勧めます」

SASは呼吸が停止する状態を繰り返すことから、酸素が身体中に十分行き渡らずさまざまな合併症を起こす可能性が高い。高血圧や心筋梗塞、脳卒中などで死に至るリスクもあるのだ。

「SASの患者に限らずランダムに選んだ40代〜60代の人を、4500人ほど4年間調査したことがあります。すると睡眠1時間あたり15回以上無呼吸状態がある人は、糖尿病のリスクがSASでない人の1.7倍。5〜15回の人でも、1.3倍あることがわかりました」(谷川氏)

アスリートや芸能人もSASに悩まされている。横綱・白鵬もその一人だ。

「横綱がSASと診断されたのは’05年の7月です。『グオォォォォ〜!!』という凄まじいいびきで、壁を隔(へだ)てた隣室にいる弟弟子たちが驚いて飛び起きてしまうほど。当時は目が虚(うつ)ろで、集中力を欠きあっけなく負ける相撲が続いていました。ただごとではないと、親方が病院に行かせSASと判明したんです。原因は入門時(’00年12月)から、80kgも増えた体重でした」(相撲協会関係者)

俳優の高橋英樹もSASに苦しんだ。

「高橋さんの睡眠中に何度も呼吸が止まるので、妻の亜紀子さんが録音して知り合いの医師に持って行ったんです。診断を受けると、高橋さんは一晩に288回も無呼吸の状態になる重度の患者でした。父親も大きないびきをかくなどSASの兆候がある人で、狭心症で亡くなっています。高橋さんは『昼間にどこでも寝られるのがオレの特技だ』と自慢していましたが、それはSASの影響だったんです」(芸能プロダクション関係者)

誰でも罹りうるSASだが、前出の谷川氏は「必ず治る」と語る。

「私は患者に、5kg痩せることを目標にさせています。5kg痩せれば気道が1mm広がりますから。有効なのがシーパップ(持続陽圧呼吸療法)です。専門器具で気道を広げ、睡眠時の無呼吸を防止する療法です。1日最低4時間、10日のうち7日間以上使うことで必ず効果が出ます。器具は20万円以上と高価ですが、レンタルであれば保険適用で月5000円ほど。マスクなどの部品は、壊れても無料で交換できるので長期間使えます」

死亡事故を起こし、死の病を誘発するSAS。「よく眠れないな」「昼間だるい」と感じたら、早期の対応が必要だ。

昨年11月、小田急バスの運転手が居眠りで走行。バスは電柱にぶつかり乗客、運転手11人が軽傷を負った
九州場所直前の稽古を終えた白鵬。入門直後の急激な体重増から無呼吸症候群となり疲労感に苦しめられた
今年10月に財務大臣賞の授賞式に現れた高橋英樹。夫人が睡眠時の音声を録音したため無呼吸症候群が発覚
自身の研究室で取材に答える順天堂大学大学院の谷川教授。無呼吸症候群について研究し始め20年以上になる

 

  • 撮影坂口靖子写真共同通信社 時事通信社

Photo Gallary7

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