5話無料配信 『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』理由とは
著者・松本ひで吉さんインタビュー
「面白すぎ!」「可愛くて癒される!」「共感しっぱなし!」Twitterで400万「いいね」100万リツイートを記録。瞬く間に書籍化され、それもまた大ヒットした話題の漫画があるーー。天真爛漫な犬くんと、ツンデレな猫さま。対照的な2匹との愉快すぎる暮らしを描いたエッセイ漫画『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』だ。
主役の犬くんと猫さまのほかに、ときおり出てくる先代や先先代の犬のことからその出会いまで。著書である松本ひで吉さんに聞いた、犬猫との痛快エピソードを紹介しよう。
ーーやっぱり幼い頃から犬猫が好きだったのでしょうか?
「犬猫に限らず動物ならなんでも好きでした。子どもの頃って、お絵かきするとき女の子ならだいたいお姫さまとか描くじゃないですか。でも、私はひたすら犬を描いていました。色鉛筆も茶色だけやたら減っていましたね」
ーーはじめて動物を飼ったのはいつ?
「小学生の頃でした。当時、すごく犬が飼いたかったんですよ。でも、母に『ダメ!』と言われてずっと我慢していたんです。そんなある日、『あぁ、犬飼いたいな〜』と思いながら、家の近所を歩いていたら、正面からリードをつけた茶色い雑種のような成犬がドドドドッと私の方へ向かって走ってきたんですよ。『やぁ!』みたいな感じで(笑)。
その頃はネットが今ほど普及していなかったので、保健所に問い合わせたり、動物病院や地元の新聞に協力してもらって飼い主を探したのですが現れず。結果、うちで飼うことになったんです。
とても賢い忠犬でしたね。当時は外で飼うのが普通のことだったのですが、ある日、家のギリギリ敷地外でうんちをし、力尽きていた姿を発見したことがあるんです。首にはくさりと軽く5kgはあるブロックをつなげたまま。いつも散歩中にしか用を足さない子だったので、家の敷地内では『しちゃダメだ!』って思い込んでいたんでしょうね」
ーーそれが漫画にも出てくる先先代の犬ですよね。次にやってきた先代のトイプードルはどんな子でしたか?
「先先代の犬が亡くなって、3〜4年経った頃だったかな。母がブリーダーから『いちばん大きい子にしたよ!』ともらってきたのが出会いです。
空の酒瓶を置いていたら、すぐに匂いを嗅ぎに飛んでくるような酒好きでしたね。もちろん飲ませてないですよ(笑)。あと、ドッグフードよりも野菜を好んで食べるヘルシー志向な子で、トイレの位置を少しズラしただけでも気にしまくる、神経質な一面がありました」
ーー猫さまとの出会いは?
「犬歴がどんどん長くなっていく中、猫を飼ってもいないのに猫漫画を描いていたんですよ。いい加減に『猫も飼おう!』と思い立ち、ペットショップに行ったら、欲しいと思っていたブリティッシュショートヘアが30〜40万くらいして。さすがに無理だと諦め、とぼとぼ帰り道を歩いていたら、子猫の鳴く声が聞こえてきたんです。『ここなら拾えるかも!?』という淡い期待を持って、よく野良猫がいる道を選んでいたんですけどね。『これは神が与えしチャンスや!』と思い、鳴き声をたどり塀の向こうに子猫を見つけました。『逃げるなよ〜』と念じながら、おそるおそる手を伸ばしたら、びっくりするほど逃げなくて。なんか、グッタリしてやる気がない感じでした(笑)」
ーーはじめての猫のいる生活ですよね。先代の犬との絡みはどうでした?
「先代の犬が10歳くらいになった頃だったと思うのですが、もともと神経質な犬だったので、子猫はケージに入れて、ゆっくり時間をかけて2匹の距離を縮めましたね。
猫がよく犬に頭をぐーーーっと押しつける謎の行為をよくしていて。気になって調べてみたら、『頭突きは「大好きだよ」を意味する愛情表現』と書いてあって。ジーンときましたけど、先代犬はもともと細かったし、歳もとっていたので辛かったんじゃないかな。ヨタッてなっていましたし(笑)」
ーーその後、いよいよ犬くんとの出会いが訪れるのですね。
「そうですね、猫を拾ってわりとすぐ、母が突然『私も小さい生き物が欲しい!』と言い出して。なぜか猫を“娘の猫”だと思っていたみたいです。
ということで、早速2人で、先代と同じトイプードルを見にペットショップへ行きました。保護犬や、里親になるための情報を当時は知らなかったので……。そしたら、1匹だけ『忍者ハットリくん』に出てくる獅子丸みたいな毛量の多い子がいたんです。『こ、これはすごいな』と、ゴクリと息を呑むほどの(笑)。『ちょっと動きを見てみましょう』ということで、子犬を何匹か放したら、その子だけピョンッと上にジャンプしてから走る、みたいな変な動きをしていて。『よし、この子にしよう』と迷わず連れて帰りました」
ーーついに猫さまと犬くんの対面ですね。
「ちょうど大学で家を出ていた時期とも重なっているので、あまり記憶がないんです。確かな記憶といえば、『猫は新入りの犬に頭突きをしていなかった』ですかね(笑)」
ーー猫さまと犬くん、2匹の関係性は?
「仲は良いですよ。漫画に描いてある通りなのですが、とにかく犬が猫のこと大好きなんですよ。だからいつも全力で猫に絡みに行くんですが、猫は先輩だという自覚があるらしく、犬の前ですごく格好つけるんです。はしゃいでいる姿を私たちには見せないですね。いつもスンッとしてます。
本当は“甘えた”なところも、ビビリでダサい一面も私は知ってるので、いつも、『なんでこのヒトこんな格好つけてんだろw』と思って見てますけどね」
ーー毎日あんな面白いコトが起こっているなんて。ネタがつきることは?
「今のところネタに困ったことはないですね。一応書き溜めてはいますが、フレッシュなネタがほとんどです。たまたまうちの犬が犬らしく、猫が猫らしい子だから、というのもあるのかもしれません。でも、漫画に描いてあることって、私にとっては面白いコトというよりただの日常なんですよね」
ーー最後に。ずばり、幸せな瞬間は?
「我が家にはヒョウモントカゲモドキもいるのですが、猫がトカゲを見るのがすごく好きなんです。興味津々でトカゲを観察している猫の様子を、犬が『今日も猫は素敵だな』と憧れの眼差しで見ている。その様子を私が『フフフフフ』とほくそ笑みながら、眺めている時でしょうか。
犬が無条件の愛をくれると言うならば、猫は条件付きの愛なのか? と言われたら、そうでもないんですよね。犬も猫も、表現方法は違えど、“無条件の愛”を教えてくれる大切な存在です」
犬派からも猫派からも共感を集め、10月に待望の第2巻を発売。現在、累計35万部の売り上げを誇る漫画『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』。「ネタには困らない」という著者・松本さんの言葉通りであれば、3巻、4巻と続くであろう2匹のさらなる物語に期待したい。
- 取材・文:大森奈奈
- 写真:松本ひで吉