声優界ではなぜか当たり前…?事前チェックの「監修」という謎習慣 | FRIDAYデジタル

声優界ではなぜか当たり前…?事前チェックの「監修」という謎習慣

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テレビアニメ終了から30年以上経て映画化された『魔神英雄伝ワタル』。左から声優の西村知道、田中真弓、伊倉一恵と神志那弘志監督。こちらは「条件なし」の自由なイベントだった
テレビアニメ終了から30年以上経て映画化された『魔神英雄伝ワタル』。左から声優の西村知道、田中真弓、伊倉一恵と神志那弘志監督。こちらは「条件なし」の自由なイベントだった

テレビ放送直前に、トークショーなどのイベントが開かれることが多いアニメの世界。声優が登場し、アフレコの様子など内幕を伝えてくれるとあって、ファンを引き付けています。

そんな現場に取材に行くと、時折不思議な出来事に遭遇します。記者には当日の流れを記した進行表が配られますが、そこに、写真に関する注意がこんな風に書かれていることがあります。

登場人物の全員の全身が入った、引きの写真のみ》

その写真であれば事務所確認が不要で、“誰かひとりだけを使うことはできない”ということを意味します。バストアップ(胸から上の写真)のように寄りの写真になる場合は、事務所の許可取りが必要になります。

そのことは声優業界では『監修』『マネジメント監修』と呼ばれています。

「チェックする」

と言わずに『監修』という言葉でマイルド化していますが、要するに掲載していいかどうかジャッジされるわけです。

写真だけではありません。イベントによっては、声優のコメントに関しても、速報で報じる場合は

「ひと言程度でご紹介ください」

という制限が付く時もあります。ロングコメントを紹介する場合も、これまた『監修』が必要になって来ます。よく見る芸能人のPR会見や他の芸能イベントにはない、声優界だけの特殊性です。

ちなみに速報とは“取材後すぐの一報という感じですか?”と確認したところ、

「きょう、あすに記事にするものはすべて速報です」

と言われたことがあります。

イベントで声優陣がどんなにいい発言をしても、それを使えるのはひと言、ふた言。全部使うためには『監修』が必要になるし、『監修』から写真やコメントが記者の元に戻るまでには、場合によっては1週間から10日かかるそうです。

イベントに来場している一般のファンは、声優の発言をSNSなどでいくらでもつぶやくことができます。もちろん、そこに『監修』は発生しません。

事情に詳しい映画宣伝関係者に、その理由を尋ねました。

「若手声優さんが登場する場合は、そういう『監修』は当たり前です。コメントについても“ひと言、ふた言にしてくれ”というのは、取材に来てくれた記者さんに申し訳ないのですが、よくあることです。声優さんも所属事務所も、自分たちの発言がどう使われるのか確認できるのが声優業界の当たり前なんです。

なぜなら、アニメを取り上げる専門誌の場合、事前に写真も原稿も全部チェックできることが多いからです。だから同じことを取材に来たメディアにお願いしてください、と言われます。広告ではないのでそんなことは難しいのですが、なかなか分かってもらえませんね」

自分たちの発言がどう切り取られ、自分たちの表情のどんな写真が出るのか気になる、という気持ちは分かります。炎上を避けたいという思いも分かります。その一方で、ベテランの声優が登場するイベントでは、そのような制限は設けられることはありません。

現在、東京・新宿ピカデリーで上映中の冒険ファンタジー作品『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸 ー再会ー』の上映記念イベントがつい先日、行われました。

『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』などの声で日本のアニメ界をリードして来たレジェンド・田中真弓、伊倉一恵、西村知道が登壇しました。取材制限は一切なし。アップの写真も自由。長いコメントを使っても自由。ごく当たり前の芸能取材の現場でした。

かつて声優は、声のスキルが何よりも優先する世界でした。今もその点は当然重要視されていますが、一方で昔より“表”に出ることも多く、ビジュアルが注目される側面も出て来ました。

自分でメークをしてイベントに出演するのが当たり前だった時代は昔で、プロのメークさんにしてもらったり、スタイリストにファッションを選んでもらう人も増えているそうです。

このように声優という存在が裏方っぽさから出方に変質し、発言の注目度も高まるようになりました。

イベント後に「この発言は炎上しそうなので書かないでください」と主催者にお願いされることもあります。同様のことは他の芸能イベントでもありますから、珍しいことではありませんが、写真や発言を「監修」することにはどうも理不尽さを感じてしまいます。

この先も「監修」という声優業界の”悪習慣”は続くのでしょうか…。

 

  • 取材・文・写真ワタベワタル

    夕刊紙文化部デスク、出版社編集部員、コピーライターなどを経てフリーランスのエンタメライターとして活動。取材対象は、映画、演劇、演芸、音楽など芸能全般。タレント本などのゴーストライターとして覆面執筆もしている

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