もう誰も死なせない…「人として扱う」弁護士・駒井知会の夢 | FRIDAYデジタル

もう誰も死なせない…「人として扱う」弁護士・駒井知会の夢

【インタビュー】「難民に寄り添うことは、わたしたちみんなのためなんです」

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「弁護士になりたくてなったんじゃないんです。難民と呼ばれる人たちの力になりたい。外国から、危険を避けて日本にやってきた人、祖国から命がけで逃げて日本にやってきた人たちを守りたい。そのために、弁護士という武器がほしかった。だから、弁護士になったんです」

駒井知会(ちえ)さんは、きっぱりとこう言う。仕事のほとんどが、難民申請もしくは入管手続きに関わる案件だという。

昨年3月に入管施設で命を奪われたスリランカの女性、ウィシュマさんのことも。

先ごろウィシュマさんの映像の一部が、ようやく遺族らに公開された。「編集」されたそのビデオには、目を覆う出来事が映し出されていたという。ここでは「人として扱う」最低限のことが守られていない

「調べれば調べるほど、ひどいことが起きていました。これまでにも、入管施設ではたくさんの人が亡くなってきたんです。そのたびに、これで最後にしなくてはと思ってきました。もう、ひとりだって失いたくないです」

柔和な表情が曇って、絞り出すようにこう話す。

「ウィシュマさんのご遺族に連絡をとったら、『なぜ姉が死ななければならなかったのか、知りたい』と言われました。もっともです。で、『病気で亡くなったのなら、医療の記録があるはず。監視カメラの映像を見れば、姉のようすがわかるはず。だから、それを確認したい』と。スリランカに住む妹さんたちにとってそれは当たり前のことなのかもしれません。でも、日本のシステムは違うんです。情報は、容易に開示されません。人が死んでいるのにその理由は明らかにされず、その状況すら正確に知らされないんです」

国際的にみて、日本の「入管行政」はかなり特殊なのだという。

「入管の施設で起こっていることは、尋常ではありません。目を覆うような非道があります。収容されている人がそのことに抗議すると、驚くような幼稚な方法でやり返してくることもある。そんなことの繰り返しだったんです。

わたしが担当した方に、アフリカのある国から逃げて来た人がいます。政情が極めて不安定な国です。祖国にいたら、拘束され、拷問にあい、命が奪われる可能性が高い。だから、祖国を逃れて他の国に逃げるんです。祖国の仲間でアメリカやヨーロッパに渡った人たちは、その国で難民として受け入れられ、現地で仕事を得て家族を持ち、暮らしています。

けれども、日本に来た彼は、収容施設と仮放免の生活ばかり。5年も10年も、時が流れていってしまうんです」

そんな日本に、なぜ「逃げて」来たのだろう。

「日本を選んで来たわけではないんです。命の危険に晒されて、とにかく逃げなければと思ったとき、いちばん最初に行ける国だった、というケース。国を脱出するルートが他に見つけられなかったというケース。なかには『カナダに逃がす』といわれて出国したものの、成田で置き去りにされた、というケースもあります」

その人たちは、日本に「来てしまった」ことを後悔している…?

「それでも、祖国にいて明日の命も危うい状況からすると…。けれどその逃げた先にあったのが、入管施設での非道な扱いだったり、仮放免という不安定な境遇では、救いがありません」

人を「幸せにしない」理由がない

たとえばカナダには、他の国から来て定住を望む人を「カナダ市民」として暮らしていけるようにサポートするプログラムがあるのだという。

「地域に受け入れセンターがあって、さまざまな国の言語に対応できるメンバーが生活の基盤作りを手伝います。以前、出張でカナダに行ったとき、たまたま乗ったタクシーの運転手さんが突然『自分は難民だった』とおっしゃって。『カナダに来て保護され、こうして仕事をして生きてこられた。リタイアしたら、カナダのために尽くしたい』とおっしゃったんです。

日本に保護されて恩義を感じた人は、日本を好きになるでしょう。難民の保護は国際的な義務ですが、これは、日本にとっても財産になると思うんです」

今、「技能実習生」という名目で来日し、労働力として活躍している外国人がたくさんいる。

「技能実習生制度は、かなり多くの場合、人権蹂躙(じゅうりん)の温床になっています。システム自体が間違っているんです。

コンビニのレジで働いている人の名札を見ると、外国の方かなという名前をよく見かけますよね。外国人が来ると日本人の仕事が奪われるという声を聞きますが、そうでしょうか。農業や介護など、人手が足りない職場がたくさんあって、もう、外国からの労働力なしでは回っていかないのが現実ではないでしょうか。

外国から来た人が日本で働いて、納税してくれて。家庭をもって、地域社会で生きていく。そのことに、どんなデメリットがあるのか、私にはさっぱりわかりません。

家庭をもって、もし子どもが産まれたらその子どもを『幸せにしない』ことになんのメリットもありませんよね」

「この社会、怖くないですか」

ひとつひとつの言葉に、力を感じる。駒井さんはもともと、難民に関する研究者を目指していた。が、実態を見るにつれ、弁護士になって直接寄り添い、ともに戦うことを選んだ。

「弱い人がさらに弱い人を叩くような、一部の人のバッシングに胸が痛みます。差別されたり傷つけられているのは、もちろん外国人だけではないですから。

わたしは、小学生のときにひどいいじめを受けていた時期があって、死にたいとすら思いました。10歳のころです。人を人として扱わないようなことには、自分の身がよじれるような痛みを感じます。

国籍を問わず性別を問わず、誰もが同じ人間だという当たり前のこと。『人間扱いされているかどうか』が、なにより大切という意識がずっとあります。

今、外国の人にしていることは、もしかしたらいつか、自分の身に起きることかもしれない。そう考えたら、今のこの社会、怖くないですか」

怖いです。狭いところに閉じ込められて誰にも会えず、ひとりぼっちで何日も何年も暮らすなんて想像しただけで怖い。

「そう。孤立が、いちばん怖いし、危険なんです。だから、わたしたちが施設に行って面会をすると、それだけでも力になります。子どものころ感じたあのひとりぼっちな気持ち。死にたいと思った気持ち。でもね、死んじゃいけない。生きて、幸せにならなければ。わたしはあのとき、死ななくてよかったと思っています。わたしの依頼者の方たちにも、そう思ってほしい。

入管で、これ以上、誰も死なせるわけにいかないんです」

1月13日、「入管施設に不当に収容されていたことは国際法に違反する」として、その犠牲になった2人が国に対して自由権規約に基づく損害賠償請求の訴えを提起した。「入管収容の歴史を変える」ために行う、前代未聞の訴訟。駒井さんはもちろん、その弁護団だ。

「バレンタインチョコレートの習慣を日本に広めたのはロシアからきたモロゾフさんたちです。混じり合うことは豊かさなんです。半径3メートルの近しい人だけでなく、その先、その向こうにいる人のことを想像して、理解する、尊重する。それは、誰かのためではなく、自分自身のためでもある。誰かが生きにくい社会は、わたしにとっても生きにくい社会ですから」

弁護士・駒井知会さんは、大きなバッグを抱えて前のめりに歩く。日曜日の朝、携帯が鳴ると「依頼者の身になにかあったのでは」と不安になるという。そして「こんな社会を終わりにしたい」と。

誰もが人として扱われ尊重される社会をつくる。それが駒井さんの「夢」だ。そしてわたしたちみんなの「夢」のはずだ。

駒井さんの眼差しは真っ直ぐだ。ウィシュマさんの映像を見た駒井さんの言葉に、身がすくむ思いがした。もう二度とこんなことが起きてはいけないのだ
  • 撮影TEN

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