奮起して優勝!御嶽海を支えた「フィリピン出身母の金言」
万年大関候補ーー。
1月23日の千秋楽で3度目の優勝を決めた関脇・御嶽海(29)は、不名誉な呼ばれ方をされてきた。これまで、18年7月場所と19年9月場所で優勝。2度の大関昇進のチャンスがあったが、いずれも直後の場所で5連敗、3連敗と大事なところで取りこぼし。年下の貴景勝や同世代の正代に、先を越されてしまった。優勝インタビューでは、こう振り返っている。
「(貴景勝らに)先に上がられ、すごく悔しかった。早く上がりたいと、上をずっと目指していました」
波に乗り切れなかった理由は、自身の意識。「あと何勝すれば大関に昇進できる」と星勘定をし、プレッシャーを感じ自分の相撲を見失っていた。今場所は具体的な勝ち星を意識せず、「2ケタ白星だけを目指そう」と考え方を変更。最後まで得意の突き押しを貫き、念願の大関昇進を決める。
「29歳1ヵ月での昇進は、過去6番目の年長です。この歳まで御嶽海が気持ちを切らさず大関に挑戦できたのは、ずっと応援し続けているフィリピン出身の母親マルガリータさん(51)の存在が大きいでしょう。小学生の時から相撲をしている御嶽海の最も熱心なファンで、最大の理解者です」(相撲協会関係者)
〈ヒー君はヒーロー〉
『FRIDAY』は御嶽海が幕内に昇進した直後に、マルガリータさんをインタビューしている(15年11月27日号)。長野県で夫の大道晴男さんと暮らし、機会があれば両国国技館まで応援に駆けつける彼女。息子への愛情と思いやりが溢れる、マルガリータさんの言葉を紹介したい。
〈一人息子ですから可愛くてね。私にとってヒー君(本名・久司)はヒーローです〉
御嶽海の特徴は、自分よりも身体の大きい相手にも真正面から向かっていく気持ちの強さ。子どもの頃から負けず嫌いだったようだ。
〈小学1年生の時に地元の相撲大会に出て1回戦で負け、泣いちゃってね。悔しくて町のクラブに入ったのが、本格的に相撲を始めたキッカケなんです。それからは自宅の庭石の上で毎日400回、四股を踏むのが日課になっていました〉
東洋大学で学生横綱となった御嶽海。卒業後は社会人相撲の強豪・和歌山県庁へ就職する予定だった。しかし……。
〈私たち夫婦も県庁に挨拶に行っていたから、ヒー君から大相撲に進みたいと聞いて驚きました。安定した職についてもらうのが、親としては一番じゃないですか……。でも息子が決心したことなので、こうアドバイスしました。『自分の人生だから、自分で選んで後悔しないようにしなさい』と〉
普段の御嶽海は、とても謙虚で礼儀正しい。出世が遅れても決して大関昇進を諦めなかった背景には、マルガリータさんの金言がある。
〈(相撲界は)チヤホヤされる社会ですからね。『自分を見失うな』『絶対に天狗になるな』と、口酸っぱく言っているんです。ここまでこられたのは指導者の方など、『周りの方々に恵まれたことを感謝し精進しなさい』ってね〉
30歳を前に、念願がかなった御嶽海。最近は大関昇進の夢を公言せず、優勝インタビューでは「ひそかに狙っていたほうがカッコいいじゃないですか」と笑っていた。ようやく堂々と胸を張って、大関昇進を最愛の母親に報告できる。
- 撮影:船元康子