川淵三郎氏が明かす日本代表・森保一監督が語った「衝撃のひと言」 | FRIDAYデジタル

川淵三郎氏が明かす日本代表・森保一監督が語った「衝撃のひと言」

今年はJリーグ誕生から30年目。創業者、川淵三郎氏に単独インタビュー

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日本サッカー協会内にある「日本サッカーミュージアム」で笑顔を見せる川淵三郎氏。1993年5月15日、同氏が宣誓した「Jリーグ開会宣言」の原稿の右隣にドーハの悲劇の写真も展示されている(撮影:渡部薫)

華々しくスタートを切ったサッカーJリーグが今年で30年目を迎える。Jリーグが軌道に乗ると、サッカー界にとどまらずに日本のスポーツ界でリーダーシップを発揮してきたのが、Jリーグの“創業者”で、現在は日本サッカー協会相談役の川淵三郎氏だ。

ただ、今年11月にカタールで開かれるサッカーワールドカップ(W杯)に7大会連続出場を目指す日本代表は苦戦が続く。アジア最終予選で4試合を残してB組2位と出場権は確保しているものの、3位の強豪・オーストラリアとの勝ち点差はわずか1。ファンのモヤモヤはSNS上で爆発し、昨年は日本代表・森保一監督への解任要望論がさかんに飛び交った。

今月下旬から再開が予定されるホームでの最終予選2試合(27日・中国、2月1日・サウジアラビア=埼玉スタジアム)で1敗でもすれば、再びW杯への出場権が遠のく危険性をはらむ。そんな状況下で、川淵氏は森保監督から強烈なメッセージを受け取っていた。

W杯最終予選のTV視聴率が10%台‥「ショックだった」

1998年、フランスW杯に出場して以降は、舞台に立つことが当たり前になっていたサッカー日本代表は今回、スタートダッシュにつまずいた。アジア最終予選の第3戦目となった昨年10月7日のサウジアラビア戦までに2敗した。W杯初出場以来、最終予選で2敗した日本代表の監督は本大会で指揮を執っていないため、この試合後から、森保監督の進退論がいたるところで噴出した。

負ければ「クビ確実」と報道された第4戦、ホームのオーストラリア戦(10月12日)で2-1と勝利。この試合で初先発した田中碧が主導権を引き寄せるゴールを決め、大事な結果も出た。森保ジャパンは息を吹き返したが、この翌日、世帯平均のTV視聴率が16.8%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)、個人視聴率は10.1%。サッカー人気が最高潮の頃と比べると影をひそめた。

「サッカー日本代表の人気は3割方、落ちたね。そう、思った。(オーストラリア戦は)昔なら40%近くいってもいい試合だった」

2008年まで約6年間、日本サッカー協会会長をつとめた川淵氏は歴代会長の中でもTV視聴率を常に気にかけていたことで知られる。テレビ局で最近実施される視聴率の算出方法は今とは違うが、2006年、ブラジル出身のジーコ監督が率いた日本代表は親善試合でも20%は当たり前、ドイツ大会のアジア最終予選開幕戦(2005年6月3日・対北朝鮮)では47.2%の視聴率を叩き出した。確かにあの頃の熱気には今は遠く及ばないのだ。

昨年9月、W杯アジア最終予選・オマーン戦で敗れた直後。右から吉田麻也、大迫勇也、久保建英。この敗戦が苦難のロードの引き金となっている(写真:アフロ)

今、なぜあの熱気がなくなってしまったのか。今回の最終予選からアウェーでの試合は地上波で放映されなくなったことと決して無縁ではない。その背景に、サッカー日本代表戦におけるW杯アジア最終予選のTV放映権は全てアジアサッカー連盟(AFC)の収入になる仕組みがある。

AFCは昨年からスイスと中国の合弁会社「DDMCフォルス」と8年総額推定20億ドル(約2100億円)の契約を結んだ。同社が窓口となりアジア最終予選の放映権を販売。1年あたり262.5億円というそれも史上最高額に設定された。コロナ禍も重なり、体力が落ちている日本のテレビ局は全額払って買う体力は到底残っていなかった。

「(放映権は)アジアサッカー連盟(AFC)の問題なのだけど、多くのサッカーファンを無視するような、蔑ろにするようなことが起きている。そして日本代表の人気度を落とすような流れになっている。僕としてはそれが残念でならない」とした上で、ファンと同じ視線でこうシンプルに言い放った。

「これまでの代表にはヒデ(中田英寿氏)や本田(圭佑)がいた。ヒデで10年、本田で10年。でも今はいわゆるスーパースターがいない。今の日本代表の中で誰を見るのか? というような状況だよ」

次世代の有力選手の一人にスペインリーグで活躍する20歳、MF久保建英(20)がいる。

「まだ(20歳と)若すぎる。久保を日本代表の柱にするやり方もあるとは思うけどね。(スーパースターに)なりかかっているとは思うよ。でも、まだヒデや本田の域ではない。

ヒデが躍動していた時には(中村)俊輔(横浜FC)もいた。それに稲本(潤一、南葛FC)や小野伸二(札幌)もいた。本田の時には長谷部(誠、フランクフルト)や遠藤(保仁、磐田)もいた。中心選手を支える中盤でしっかりした選手がいたからね」と、“顔”となる選手、および“顔”を引き立たせる日本代表の人材難を的確に指摘した。

Jリーグが発足する前は、サッカー日本代表は1968年メキシコ五輪で銅メダルを獲得した時が人気の頂点だった。そこから一気に転げ落ちたことで今から30年前、当時企業スポーツだったサッカー界を「プロ化をして日本代表をW杯に出場させる」と声高に叫び続けていたのが川淵氏だった。

「いろんなプレゼンをしたけど、ほとんどの人がキョトンとしていたよ」

五輪出場でさえ遠ざかっていた頃は「W杯なんて、出られるわけがない」と思われてきた。だからこそ、地域に根ざしたプロクラブを軸にリーグを作り、そのレベルを上げて世界に挑戦する仕組みが必要、とJリーグ創設によるプロ化を訴えたのだ。

今年最初のW杯最終予選となる27日の試合は守備の要、吉田麻也、冨安健洋が負傷で欠場。森保監督の采配が問われる試合となる(写真:共同通信)

「私は冷酷な男です」

今は協会の一線からは退いているが、「サッカー日本代表が僕の原点だから」という思いは今も変わらない。だからこそ、森保ジャパンの苦境に、サッカーファン同様、気が気ではいられないのだ。

昨年末、日本サッカー界の年間表彰式の一つ「Jリーグアウォーズ」に出席した川淵氏のもとに、ある男が挨拶に来た。森保監督である。

口火を切ったのは川淵氏ではなく、森保監督だった。

「僕に思うことがあったら言ってください。何を言ってもらっても構いません」

川淵氏はその時のことをこう振り返った。

「何を言ってもいいのかい?と聞くと、『はい』と言うんだよ、森保が。それならばと思い、言わせてもらった。

『君の選手に対する優しさはよく分かる。でも遠慮をしていないか。(試合にも)昔の名前で出すんじゃなくて、自分で決断して気にせずにやらなきゃいけない』とね」

さらに「このあと、(森保監督から)何という答えが返ってきたと思う?」と逆にインタビュアーに質問を投げかけた。当時の衝撃を思いだすように、その後、暫し沈黙を続けた後、こう明かしたのだ。

「私は川淵さんが思うような、優しい男じゃありません。冷酷な男です」

これは、その仕草によって、自分自身を大胆に見せる歌舞伎役者の「見得(みえ)」とは違う。正真正銘、森保監督の本音だった。森保監督の言葉はさらに続いた。

「川淵さんが心配なさっていることは、『これで僕が(日本代表監督として)ダメなら日本人監督はダメだ、という烙印を押される-』そういうことにつながることも僕はよく認識しています」

この言葉は、川淵氏が胸の内にずっとしまっていたことを見事に言い当てていた。普段は柔和な表情に見える森保監督からは想像できない、目力が入った熱い言葉ばかりが続いたのだという。

「腹が据わっているよ。驚いたね。(森保監督が話したことは)思っていたとしてもなかなか口には出せない。それを話したんだから…。とてつもない重たいものを森保に背負わせている、とも思ったよ。でも個人的には、これなら任せられるとも考えた。とことんいくしかない」

川淵氏は日本協会会長の時はジーコジャパンだった。一度だけ解任が頭をよぎった試合がある。2004年3月31日、W杯アジア1次予選、アウェーで行われた格下のシンガポール戦だった。日本はベストメンバーで挑み、30本以上のシュートを放ちながら、ゴールはなかなか奪えず、後半37分、途中出場のMF藤田(俊哉氏)のゴールで2−1と逃げ切った。

「あの試合はペットボトルの水を何本飲んだか、覚えていない、後半は負けたら決断しなきゃいけない」とそればかり考えていた。

自ら選んだジーコ監督の解任は免れたものの、川淵氏の考え方の根幹にあったものが大きく変わった。

「サッカー日本代表はいい試合をすべきと、ずっと思っていた。でもこの試合を境にこう思うようになった。『中身はいい、勝てばいいんだ!』とね」

1月下旬に再開するW杯アジア最終予選は残り4試合。ホームで行われる今回の2試合はドローも許されない。勝利を期待した上で、川淵氏はこう続けた。

「ここでひと頑張りして、国民に納得してもらえるような試合をすることによって、多くのファンを取り戻す。それを一番わかっている男が、森保だから」

自ら「冷酷な男」と明かした森保監督が新年最初の2試合でどんなタクトをふるうのか。日本代表もさることながら、サッカー人気そのものの今後を左右する大事な決戦を控え、川淵氏はファン同様、かたずを飲んで見守っている。

撮影:渡部薫
  • 撮影渡部薫

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