タレント本コレクター・吉田豪「1万冊収蔵の魔窟」に潜入! | FRIDAYデジタル

タレント本コレクター・吉田豪「1万冊収蔵の魔窟」に潜入!

金曜日の蒐集原人・第4回「プロ・インタビュアー吉田豪さんのタレント本棚が見たいー!」

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コレクションはおもしろい。特定のテーマに沿って集められた充実のコレクションを見るのも楽しいけれど、それ以上にコレクションすることに夢中な人間の話はもっとおもしろい。この連載では、毎回いろいろな蒐集家の元を訪ねて、コレクションにまつわるエピソードを採取していく。人はなぜ物を集めるのか? 集めた先には何があるのか? 『金曜日の蒐集原人』とは、コレクターを蒐集したコレクションファイルである。

今回ご登場いただくのは、プロ書評家であり、プロ・インタビュアーでもある吉田豪さんだ。入念な事前の下調べと、対象者の著作物には可能な限り目を通しておくことから、「本人より本人のことに詳しい」と言われるほど。彼が取材の対象とするのは、プロレスラーなどの格闘家を始め、俳優、アイドルなどの芸能人、いわゆる“タレント”が多い。

そのため、膨大な量の「タレント本」をコレクションしている。吉田さん自身もマスコミに登場する機会が多く、仕事場の本棚がチラリと背景に写っていることもある。それだけでも圧巻なのだが、現場はどうやらそれどころではないらしい。そんな「タレント本の魔窟」へ潜入してきた──。

2つあるマンションのすべてを本が占拠している

──玄関を開けたら、梅宮辰夫さんの漬物屋の人形に出迎えられました。

吉田 あれは正確には梅辰亭というコロッケ屋の人形なんですよ。コロッケ屋と漬物屋では造形が違うんです。

──いきなり普通の人にはどうでもいい話題!(笑)

──というわけで、今日は大量のタレント本を持っているという吉田豪さんの本棚を見せてもらいに来たわけですが、しかし本棚がありすぎて部屋の構造がよく把握できません。ここは2DKくらいでしょうか?

吉田 そうですね。玄関入ってすぐのこの部屋が9畳あって、この奥に少し狭い部屋がもうひとつあります。借りた当初はこの9畳間を全部本棚にして、奥の部屋を生活の場にしてました。で、実家も3部屋か4部屋をボクの本が占拠していたんですけど、そこを姉夫婦に明け渡さなければならなくなって、荷物が全部送られてくることになったんですよ。

──うわ、入りきらない!

吉田 それで、このマンションにもう1部屋借りようとしたら信用がなくて無理で、やむなくこの近くにマンションを買う羽目になりました。

──本のためだけに(笑)。

吉田 そっちは70平米くらいあるのかな。向こうの方が広いし、風呂にテレビが付いていて、台所も広いし、生活するにはあっちの方がいいんですけど、ボクはこっちに住んでいるというね。なぜかというと、向こうはふた部屋あるうちの大きい方が完全に本棚で埋まってるんですよ。四方を本棚で囲んで、その内側にも本棚を並べて。

──ああ、図書館みたいなスタイル。

吉田 こうやって(カニ歩き)しないと通れないような状態で、蛍光灯の光も当たらないから本棚の上にもいろんなライトを付けて。でも、そこまでやってるのにその本棚の中が整理されてない(笑)。いちおうベッドもあるんだけど、ベッドの上も物置になってるので、機能していない。だからベッドを捨てて、向こうのマンションは完全に書庫に作り変えてしまう手はあるんですが……。

──その時間がない(笑)。

吉田 とにかく、向こうのマンションは人が入れる状態ではないので、自分以外の人間は入れないようにしてます。

──話をこの部屋に戻しますが、こちらも四方八方を本棚に囲まれていて、とくに震災対策をされているようには見えないんですけど、地震は怖くないですか?

吉田 全然気にしてないですねえ。東日本大震災のときも、もうひとつのマンションの方は耐震グッズをいろいろ使ってたんで、そんなにダメージもなくて、こっちの部屋がいくつか本棚が倒れたという感じでした。

──いま、蔵書の量がどれくらいあるのか把握されてます?

吉田 数えたことはないから適当ですけど、たぶん向こうのマンションに3万冊くらいあって、こっちのマンションには1万冊くらいあるのかなー。

──マニタ書房の蔵書が最大で5000冊でしたから、それの8軒分! このいま我々がいる部屋はとても9畳には感じられないんですが、それは壁の本棚の手前にも本棚があるからですね。

吉田 この部屋も本当はいまボクらがいる位置まで本棚があったんですよ。それが、猫舌SHOWROOM『豪の部屋』(※吉田さんがやっている対談の配信番組)という番組をこの部屋から配信することになって、その撮影スペースを確保するために本棚を何台か潰したんです。そのせいで、この後ろ(玄関側)に2列ある本棚のところへは、もう入っていけなくなっています。

玄関を開けて目に飛び込んでくる光景。本棚と本棚の間にも物があふれていて、足の踏み場もない

──猫舌SHOWROOM『豪の部屋』では、アイドルの女の子との対談も多いですが、この部屋を見た彼女たちはどんな反応を示します?

吉田 「本がいっぱーい」「古本屋さんみたーい」で終わることが多数です。それが9割。棚の中の本にまで興味を示す人はほとんどいないですよ。男性の一部が興奮して「おーっ!」ってなったりする。ちょっと前に高木完さんが来たときはずっと漁ってましたね。あとオーケン(大槻ケンヂ)さんとか、そういう人たち。女子の中でも上坂すみれさんなんかはひたすら漁って興奮してたけど、基本的にはただの背景というか、書き割りみたいに感じるんでしょう。ハウススタジオとかにある洋書が並んだ本棚みたいな感じなのかも

──わはは、だいたい予想していた通りの結果です。興味のない人にとって、情報量の多さはただの景色になるんでしょうね。

吉田 若い女の子にとって(ここにある本の著者は)ほとんど知らない人たちじゃないですか。知らない人の知らない本が並んでるだけなんですよ。パッと目につくこの辺を見たところで、根津甚八、原田芳雄、杉良太郎っていう名前になんの興味も感じない(笑)。

子供の頃から「人が集めないもの」を狙う

──この状態の部屋の主には聞くだけ野暮な質問ですが(笑)、子供の頃からコレクター気質ってありました?

吉田 完全にそうですね。スーパーカー消しゴムあたりから集めてました。あまり裕福ではない家だったので、超合金とか高めのおもちゃは買ってもらえず、ミクロマンをちょっと買うくらい。それで消しゴム文化から一気に「これなら集められる!」って。切手も微妙にやったりとか。

──切手はコレクターの入り口ですよね。吉田さん、若い頃はアニメが好きで、それ関連の本を買い集めていたそうですが。

吉田 その前に「コロコロ」の頃から集めてたので。小学生の頃は藤子不二雄のレア漫画を集めたりしていて。『ドラえもん』はみんなも持ってるから、ボクが買ってもしょうがない。単行本に未収録の雑誌の付録を買い漁ったりとか、よりレアな漫画の方へ行くタイプ。

──そんな若い頃から(笑)。

吉田 当時ボクは江古田在住で、地元の縁日に50円で付録漫画が出てたんですよ。

──ありました。昔の少年漫画誌には付録で薄いコミックスが挟まっていて、それだけが縁日に流れるんですよね。

吉田 それを集めたり、あとはやっぱり『仮面太郎』なんかのレア藤子漫画ですよね。最初にコロタン文庫を揃えて藤子作品の全貌を把握して、そこから持ってないやつを次々と……。

──あっ、完全にコレクターの行動!(笑) もうその頃からそんなことをやってたんだ。そこから順当にアニメを好きになり、それで吉田さんのおもしろいのは、そのあとアニメをあっさり卒業しちゃうんですよね。

吉田 中二くらいまでの段階で結構なコレクションがあったんですよ。でも、全部友達にあげたり捨てたりしちゃって、それは後になってずいぶん後悔しました。ちゃんと隙間も突いてたんですよ。絶対人が集めないものに行かなきゃと思って。

──「人が集めないものに行く」っていうのは一貫してるんですね。

この本棚の持ち主を当てるクイズを出されても、当てられる人はまずいない

──そして、吉田さんはタレント本を集めるようになっていくわけですが、仕事のために本を集め始めたのか、それよりまず本を集めること自体が好きだったのかを聞こうと思っていたんですが、ここまでのお話を聞いた限りでは完全に本集めが先ですね。

吉田 そう、古本屋通いは小学生くらいからずっと続いていて、それで高校生になったあたりから中古盤屋通いも始まり。

──中古盤屋通いはパンクに目覚めてから?

吉田 そうですね。そういう流れがずっと続いているだけで。その後にこの仕事を始めたわけです。

──吉田さんは、編集プロダクションに入るところからキャリアをスタートさせてますよね。

吉田 ペーペーの頃って最初はお使いじゃないですか。原稿を取りに行ったり、資料を届けに行ったり。それで、お使いの途中の経路のどこに古本屋があって、どこに中古盤屋があるかを完全に調べて、必ず30分から1時間は寄り道をして、いろいろ買い漁ってました。

──古本屋も中古盤屋もたくさんあった時代ですね。

吉田 あの頃はやっぱりよかったと思いますよ。銀座にだって中古盤屋があったんだから。ハンターとか。どの街でもやりたい放題でしたよ。

記憶頼りのせいで同じ本を何冊も買う

──吉田さんの特徴として「同じ本を複数買う」というのがあります。

吉田 いちばんひどいのがこれ(『小林亜星の夫婦でダイエット』が並んでいる場所を指差しながら)ですね。小林亜星コレクションをしてるときに、これが全然出てこなかったんですよ。それで15年くらい前に広島でイベントをやったんですけど、ボクは地方イベントに出る条件として「ブックオフを回らせてほしい」っていうのがあって(笑)、車を出してもらったりしてたんですけど、行ったブックオフにこれが大量に並んでいて、興奮してあるだけ買っちゃった。

──ブックオフの人も驚いたでしょう。

吉田 全部買っていくって意味がわからない。帯付きと帯ナシくらいでいいのに。あと、そこにあるチッチョリーナの本もそうですよね。四国に観覧車が付いてる有名な書店があるんですよ。基本は新刊を売ってるんですけど、一部バーゲン書のコーナーがあって、そこにチッチョリーナの本が新品で大量に並んでるのをツイッターで見かけて、これは行かなければ! と思って四国まで行った。

──それを根こそぎ?

吉田 いや、あるだけ全部は買わずに2、3冊は残しておいて。

──コレクターのマナーを守って。

吉田 でも、ボクがツイッターとかラジオで騒いだからその後すぐになくなって

──みんな買いに走ったんだ(笑)。

吉田 そのチッチョリーナの本は何がヤバイって、版元が三協映画っていう梶原一騎の作った映画会社なんですよ。そこはなぜかチッチョリーナの来日に関わっていて、そのときに本をひっそりと出していた。そのことを当時ボクは知らなかったんですけど、掟ポルシェとかと岡山へ行って古本屋巡りをしていたとき、エロ本コーナーで「豪ちゃん、イイもん発見したよー!」ってこの本を見せびらかされて、本気で羨ましがったら掟さんが泣く泣くボクに譲ってくれたという。

──わはは、いい話! 掟さんいい人伝説ってたくさんありますよね。

吉田 「豪ちゃんがあまりにも悔しそうな顔してたからさあ」って。

──タレント本でも、あえて手を出さない分野とか人物とかってありますか?

吉田 よく言うんですけど、定価でも買うべき本と、半値なら買ってもいいかなっていう本と、100円なら買う本っていうのがあって、だいたいは100円なら買ってもいいかと思うんですけど。

──タダでもいらないっていうのは、名前は言いづらいでしょうけれど。

吉田 まあ、あるっちゃあ、ありますよね。タレントさんの自伝的なものだったら欲しくなりますけど、番組本的な内容の薄いやつとかはどうかなあと。

──ああ、お笑い芸人さんなんかは番組の企画を本にしたりしますからね。それまで買ってたらキリがない。

吉田 だけど、いざっていうとき必要になったりすることもあるんで、100円なら買っておくかという感じです。

──先ほどの小林亜星さんの本とかチッチョリーナの本もそうですけど、そんなに何冊も買うのはなぜなんでしょう?

吉田 何かスイッチが入っちゃうんでしょうね。

──吉田さんは、レアだから転売して儲けるなんてこともしてないでしょう?

吉田 そもそも、このレアさをわかってくれる人なんて少ないですから(笑)。

──取材のときご本人に差し上げて喜んでもらったりするそうですが、それでも2冊持っていれば十分なわけで。

吉田 古本屋を回ってると、良さげな装丁の、でも自分は興味ないジャンルの本というのがあって。その分野に詳しくはないけど、古本屋では滅多に見かけないもの。たとえば、江戸川乱歩の何か凝った箱入りのやつ(『春陽文庫版江戸川乱歩名作集』全9冊)とか、そういうのが安く出ているのを見つけたら、とりあえず買っておいて、その分野に興味ある人を取材したときにプレゼントするとかはあります。

──それで心を開かせるんだ(笑)。

吉田 あと単純に、ダブって買うのは自分が何を持ってるか覚えてないんですよ。

──これだけあると(周囲の本棚を見回して)把握しきれないでしょうねえ。

吉田 「うわっ、こんな本あるんだ!」って大喜びで買って帰ってきて、本棚に挿した瞬間に「あれ? 持ってた……」みたいな(笑)。そんなことはよくあります。

──チェックリストを作ったりしませんか? そういうタイプじゃない?

吉田 作らないです。記憶に頼るだけ。

かなり充実している黒柳徹子コーナー。ここにも同じ本が何冊も並んでいる

──『徹子の部屋1』『徹子の部屋2』『徹子の部屋3』『徹子の部屋4』なんて、チェックリスト作んなかったら絶対に間違えて買うじゃないですか。そういう気質はないんですね。

吉田 ないですねえ。雑ですホントに。

五十音順だからこそ生まれるシュールさ

──同じ本を買うといえば、バリエーション違いがヤバイですね。千葉真一さんの『スポーツ特訓』という本で、表紙の千葉ちゃんの表情が微妙に違うやつを持っていて、それを見た植地毅さん(デザイナー)が「豪ちゃん、そんなものまで買うの!」って驚いた話がぼくは大好きなんですよ。ここに現物あります?

吉田 それはちょっとどこかに行っちゃって、いま出せないんです。他にも、大橋巨泉さんの本で微妙な表紙違いとかそういうのがあるんですけど、ただ、ア行がご覧の通りの状態なので、とても引っ張り出せません。

カメラのズームで捉えた大橋巨泉コーナー。よく見ると巨泉の手前にジャイアント馬場が、棚の上にはジャンボマックスがいて、はからずも「巨」コーナーを形成していた

──ブックオフに通っていて「おっ、この本またあった!」と手に取ったら自分の記憶してるのとちょっと違うなっていうことはありますよね。ケニーくんの『スケボーに乗った天使』っていう本は、背表紙に「映画化」って入ってるのと入ってないのがあって。まあ、これも普通の人にはどうでもいい情報ですが。

吉田 大好きな、長門裕之さんの『洋子へ』にも表紙違いがあるんです。たぶん売れすぎたせいで暴露話に苦情が来たりして改訂版が出たんですけど、改定前にはエラーコインみたいな感じで表紙の写真がキリヌキ(輪郭を切り抜いて合成すること)が露骨にわかる背景の緑色が薄いバージョンもごく少数存在するんですが、なぜかAmazonの画像はそっちになってるんですよ。そして、その初版がバカ売れした後に改訂版が出たから、そっちは数が少ない。

──そういうジャンルの本の改訂版まで追いかける人なんて普通いません(笑)。

吉田 でも、改訂版の方がおもしろいんですよ。どこが直されたかわかるから。初版の暴露話が改訂版だと「……という夢を見た」みたいな夢オチになっていたりして。

──わはは、雑な修正だ! それは揃えたくなりますね。あと古本界で有名なバリエーションものとしては、サラ金の帝王・杉山会長の伝記『新・悪の錬金術 世の中 金や金や!』ですかね。

吉田 それはあの辺(人が入っていける場所)にありますよ。多分そこにあるのでほぼ全種。なかなかそれだけの数は揃わないですよ。正確には中身もちょっと違いがあって、3種類くらいのバリエーションがあるんですけど、まあ同じようなもん(笑)。

上段左から2番目の背景が水色のやつはとくに珍しい。ぼくがやっていた特殊古書店マニタ書房の在庫以外でこれを所有している人は初めて見ました

──プロ・インタビュアーを名乗る吉田さんにとって、蔵書は単なるコレクションではなくて仕事のための資料でもあります。

吉田 すべてのコレクションが後に仕事になるはず、という。昔集めていた漫画もそのノリでやってましたからね。いつかボクはこれを好きになるはずだから、みたいな。

──よくコレクターや蔵書家は「いつか役に立つ」と思って買い集めて、でも「それが役に立った試しはない!」と言って処分するじゃないですか。

吉田 逆ですよ。全然役立ってますよ。

──そう、吉田さんの場合は役立っちゃってるから余計に厄介なんですね(笑)。ここにある本の並べ方には、自分なりのルールがあるんですか?

吉田 いちおう本はタレントさんの名前の五十音順ではあるんですよ。

──それは守られてます?

吉田 守っていても、仕事に必要で抜き出して戻さなかったりするんで、どんどんカオスになっていくわけです。そもそもあの辺(玄関近くのア行の本棚付近)は本を戻すこともできないから。

──必要になってからでは入手が困難だから、あらかじめ買っておいたはずなのに、いざ必要になったときに取り出せないってことになるじゃないですか。

吉田 だから、ちょっとずつ本棚をズラして、ようやくたどり着いた! と思ったら以前抜いたままどこかへやっちゃってたのが判明して、「はぁぁ……」って崩れ落ちるんですよ(笑)。

──吉田さんの仕事ジャンル的に「格闘家」とか「俳優」とか「アイドル」とか、そういう分類にしようとは思わないですか?

吉田 うーん、難しいんですよ。実家に置いていたときは親がなんとなく仕分けしてくれてたんですけど、親にはボクの感覚とかわからないじゃないですか。大仁田厚はタレントじゃないよ! みたいな(笑)。

──複数の属性にまたがる人物がいますからね。でも、こうして本棚を見渡してみると、五十音順だからこそのおもしろさも感じられます。

吉田 あくまでもタレント本という大きなジャンルのものを名前順に並べているだけですからね。そうすると五十音順のシュールさっていうのが生まれてくるんです。「きゃりーぱみゅぱみゅ」の次が「キャロライン洋子」で、その次に「キャロル」がくる並びとか。

味わい深い「キャ」で始まる名前のコーナー。「キャロル」と「キャンディーズ」の間にある「すたぁ行進曲」は何かと思ったら「きゃんみゆき」だった

──そこ最高ですよね~。久宝留理子と窪園千恵子、黒木香と黒木瞳の並びとかもグッときます。

ある種の知の集積としてのタレント本

──今日の取材もそうですけど、よく本棚企画ってあるじゃないですか。「本棚が見たい!」的な。そういうのは来たことないですか?

吉田 一回、『本の雑誌』の企画で来てますよ。でも、あまりにもボクだけ知性を感じさせない本棚で申し訳なかったんですけど。

──わはは。これだけタレント本が集まると、これはこれで独特の知性の集積というか、ある種の社会の縮図だと思いますけどね。ご自分の本棚でお勧めのポイントとかありますか?

吉田 竹村健一コーナーとか、おもしろいと思いますよ。竹村健一さんのエロい側面の本がけっこうな数揃ってるんで。

──ははぁ、『世界珍行漫行』とか『世界の女は俺の手に』とか、けっこうエロいテーマの本を出してるんですね。

生涯で300冊以上の著書を発表した政治評論家の、グッとくる一面がここに集まっている

──この金沢明子の『宿便とり痩身法』とかもいいですね。

吉田 芸能人のダイエット本は意外にちゃんと買ってます。せっかくダイエット本を出したのに、そのあとリバウンンドして、ダイエットし直したりとか。

──心霊本を出す芸能人も多いじゃないですか。稲川淳二さんとか丹波哲郎さんみたいにそれを商売にしている人もいれば、意外な人が突然そっち方面の本を出したり。

吉田 ありますあります。橋幸夫もヤバイの出してましたよ。

──比企理恵が突然『神社でヒーリング』って本を出したり。

吉田 たぶん出版の直前に何かあったんだろうなーって(笑)。正司歌江さんの『歌江の幸せくるくる心霊喫茶』っていうタイトルだけは有名な本があったりとか。

マニタ書房でも『歌江の幸せくるくる心霊喫茶』は見つけるたびに仕入れて、トータル10冊くらい売りました。生前、まついなつきさんが来店されたときも嬉々として買っていかれました

吉田 ぼくが「タレント本コレクター」としてかなり初期の段階で紹介されたのが、20数年くらい前の『タモリ倶楽部』なんですよ。そのときタモリさんに「この『歌江の幸せくるくる心霊喫茶』ってどんな本なの?」って聞かれて、「いちいち読んでないですよ」って答えて怒られました(笑)。

──あはは。古本コレクターに「読んだの?」は愚問ですよね。

吉田 ここにある本の1割も読んでるかどうかくらいのもんですよ。取材が決まったら読みますけどね。

死ぬまでにはすべて正しい順番で並べたい

──蔵書家でも、本棚が飽和状態になってくると価値の低い本や重複している本は手放すなどして、コレクションをシェイプアップしていきます。そういうことはしませんか?

吉田 タレントさん本人とか仕事相手とか友達にあげる以外では本は手放さないですねえ。

──とはいえ、これからも蔵書は増えていく一方でしょう。そうするともう1つマンションを借りるとか、買うとか、あるいは人を雇って整理してもらう。または重複してる本を処分してスペースを取り戻す。いろいろやりようはあると思います。

吉田 処分する気はないです。ただ、整理はしたいんですよ。バイトをちゃんと雇って。以前、テレビの企画で「部屋を一度空っぽにして体育館に全部並べてプロが整理整頓する」みたいな話が来て、最高じゃないですか! と思ったんだけど、初回の人の放送がそんなに視聴率を取れなかったらしくて、立ち消えになりました。

──あら残念。

吉田 あと、出版界に余裕があった時代には、なんか雑誌の企画にかこつけて手伝ってもらったりもしたんですよ。ガールズファッション誌の女の子が手伝ってくれて。

──どういう企画なんだ(笑)。じゃあ、これまで本を処分したこともないですか?

吉田 過去にアニメ関連書籍の処分をしたことをいまだに後悔してるので、捨ててたまるかという気持ちが強いです。おもちゃから何からけっこうなものを友達にあげちゃいましたから。

──ぼくは吉田豪さん(プロ・インタビュアー)の真似をして「プロ・コレクター」なんて名乗ったりしてますが、案外と捨てちゃうんですよ。定期的に物欲がふっと消えるときがあって、一気に捨てたり売ったりしちゃうんです。だから古本屋もやれていたんでしょうけれど。

吉田 ボクの場合は、これ以上この部屋に置けなくなったら、他にまた部屋を借りればいいや、っていう発想がどこかにあるんで。だから生活できるところをもう一個借りちゃおうっていう思いはあるんです。生活のためだけの部屋を。

──そうですね、寝に帰るためだけなら家賃の安いアパートだっていいわけじゃないですか。でも、いずれはその部屋にも本が溢れるようになっちゃうのかな。

吉田 初めて一人暮らしを始めたときは、ここにはモノを持ち込まないってルールを決めて、服とテレビくらいしかなかったから、幸せに生活できていたんですよ。でも結局こうなってしまうので、多分無理ですね(笑)。

塾講師なのに暗黒街の人にしか見えないことで話題を集めた、金ピカ先生こと佐藤忠志さんの写真集。こういういい本が無造作にその辺に置いてある

──コレクター取材の記事って、普通なら取材の最後は「コレクションに埋もれて死にますよ」って感じになるんだけど、この場所(吉田豪さんの書斎)はそういうことともちょっと違うものを感じます。それは「死蔵」ではなく「活蔵」されてるからなのかな。今後、吉田さんご自身の願いとしてはなんでしょう? もっと広いところに移りたいとか?

吉田 まあ、そうなんですけど「本棚をちゃんと整理したい」ということに尽きるんですよ。死ぬまでにすべて正しい順番で並べたい。探してる本がすぐに見つかるようにしたい。雑誌も順番に並べたい。

場所をとるものを集めることに意味がある

──かつては積極的に古本蒐集に出かけていたでしょう? 最近はどうですか?

吉田 忙しいというのもあるし、ネットでだいぶ済むようになっちゃったから、そんなに行かなくなりましたねえ。がんばって出かけて行っても正直掘り出し物がない。

──店もネット販売に切り替えているところが多いですし、マニアが増えて値段が釣り上がってきたりもするのかな。

吉田 無駄遣いの勢いは全然変わってないんですけどね。最近は海外通販が増えたりしてます。

──海外通販で何を買うんですか?

吉田 ブート(bootleg)のTシャツとかにすっかりスイッチが入っていて。オフィシャルも買いますけど、日本のプロレス、漫画、アニメとかのTシャツが海外でも出てるわけですよ。ハードコアパンクの、勝手に出したら怖いことになるようなやつも普通に出てる。

──ああ、どのバンドとは言いませんが、怖いのが。

吉田 そういうのを買いまくってますねえ。買うと気のいいブローカーがオマケとかも付けてくれるんですよ。

(ここで奥の部屋へ行き、Tシャツを何枚か持ってきてくれました)

吉田 いまサラッと目に付いたやつを抜いてきたんですが、これが『ラブアタック!』のTシャツ。それから、たのきんトリオ3球コンサートのTシャツ。これが超レアな沢田研二Tシャツ。

──どこがレアなのかわかりませんが、たぶん理由を聞いてもよくわからないと思うので聞きません(笑)。

吉田 あと、なぜか持っているZZトップの76年ツアーTシャツ。

──なぜ吉田さんがそんなものを。

吉田 30年くらい前のおもちゃショーに激安で出ていて。たぶん価値を知らない人が500円くらいの値付けをして出してたんですよ。

──場違いなシャツが(笑)。ところで、こっちのタレントグッズの山の上に赤いスタジャンが置いてありますけど、これはひょっとして……。

吉田 マッチ・明菜ものですね。日本に存在しちゃいけないものですよ。

近藤真彦と中森明菜が共演を果たした映画『愛・旅立ち』の撮影スタッフ用ジャンパー。なぜ存在しちゃいけないかは、説明しなくてもわかりますよね?

吉田 M&Aなんて、あってはいけないワッペンが付いているという。

──すごいなーこれ! こういうものを集めているのは、純粋に興味から?

吉田 そうですね、本人も持ってない歴史上データとして残ってないものが大量にあるんで、ボクが買わなきゃっていう義務感が湧いてくるわけですよ。

──そういうレアなタレントグッズはどうやって探すんでしょう? 存在を知ってるものなら、その名前で検索すれば見つかるのかもしれませんが。

吉田 いまはそんなにやってないんですけど、以前はヤフオクで片っ端から探してました。「タレントグッズ」というカテゴリーがあるんで、そこをひたすらシラミ潰しに見ていって。アタマおかしかった時期は、1日に1万円入札するまではヤフオクをやめちゃいけないっていうルールを課して。

──月30万円ルール! それはたしかにアタマおかしい(笑)。

吉田 「タレント本/男」で検索したりして、99パーセント要らないものしか出てこないんですけど、まさかの品と出会うためにひたすら続ける。もう苦痛でしかないんですよ。

──ぼくも「レコード」のカテゴリーで似たようなことやってるので、吉田さんを笑える立場じゃないな。

吉田 いまはそこまでやらないので少しは楽になりました。スタッフジャンパー検索とかはいまだにやってますけど、やっぱり要らないものばかりで、ごくたまにこういうの(マッチ・明菜もの)を発掘するわけです。

──こんまりメソッドじゃないけど、世の中は「要らないものは捨てましょう」という流れですが。

吉田 ときめかないものは捨てましょう、って言われてますね。

──そうか。この部屋にあるものは、すべて吉田豪の心をときめかせたものなんだ! このビートたけしさんのカレー屋(北野インド会社)の立像とかはぼくでもときめきますけど、まあ、欲しいかと言われたら要らないです。だってこんなデカイもの、メチャメチャ邪魔でしょう。玄関には梅宮さんもいるし。

吉田 いや、場所をとるものを集めることに意味があるんですよ。

──おおー(感動)。

ただでさえ本棚だらけで、その手前にも本が積み上げられているというのに、その隙間、隙間にこうした場所をとるものが鎮座している。そして、このマネキンの服は……

──たけし人形と梅宮人形のインパクトで見落としそうになりますが、このマネキンに着せてある衣装って、ひょっとして?

吉田 そうです、木村一八さんから直々にもらった横山やすしさんの衣装ですよ。

──うわーっ!

吉田 「豪くんさ、親父の服とか要る?」って言われて、「要りますよそんなもん!」って即答。「トロフィーとかは?」「要りますよ!」「競艇のトロフィーなんか要らないか」「いや、いや競艇も!」で、一式送ってもらいました。帽子もメガネも本物。

──すごいなー。ヤッさんも豪快な人だったけど、一八さんも豪快すぎるなー。でも、いちばん大切にしてくれる人のところに来たのかもしれない。

吉田 さすがにこれはキチンと飾りたくて、生まれて初めてマネキン(トルソー)を買って、着せました。

──いやあ、タレント本の物量もすごいけど、グッズに貴重なものが多くて、最終的には博物館にでも入れたいですね。誰もが価値を認める貴重な品というより、時代の徒花のようなものだから、吉田さんが集めなきゃ残らない。

(取材後記)
マニタ書房はおろか、そこそこ頑張ってる古本屋でも、吉田豪さんの部屋の物量にはかなわないと思える様相で、そこには日本の芸能界のいろんな顔が詰まっていた。新井素子さんや京極夏彦さんの本棚のように、吉田さんもそろそろ巨大スケールの書庫を構築するべきなのでは? と、ご本人もそうしたいのは山々であるとおっしゃっていたが、もしかすると、この混沌とした感じこそが「タレント本」という宇宙には似合っているのかもしれない。

(この連載は、毎月第1金曜日の更新となります。次回は3月4日の予定です。どうぞお楽しみに!)

 

  • 取材・執筆とみさわ昭仁

    コレクションに取り憑かれる人々の生態を研究し続ける、自称プロコレクター。『底抜け!大リーグカードの世界』(彩流社)、『人喰い映画祭』(辰巳出版)、『無限の本棚』(筑摩書房)、『レコード越しの戦後史』(P-VINE)など、著書もコレクションにまつわるものばかり。最新刊は、自身とゲームとの関わりを振り返った『勇者と戦車とモンスター 1978~2018☆ぼくのゲーム40年史』(駒草出版)。

  • 撮影村田克己

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