秋の弁護士ドラマ対決!本当の勝者は『SUITS/スーツ』説

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視聴率ランキングで首位を快走する『リーガルV』の面々。左から菜々緒、向井理、米倉

イケメンなムロツヨシで話題の『大恋愛』。”#ドラえもん”や”#シャブ山シャブ子”がTwitterでバズった『相棒』など、今年の秋ドラマでは、予想外のところから盛り上がりが起きている。

そんな秋ドラマの中で、密かに注目していたのが、 “弁護士もの”2作品の対決だ。織田裕二主演の『SUITS/スーツ』(フジテレビ、月曜よる9時)と、米倉涼子主演の『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』(テレビ朝日、木曜よる10時)である。

視聴率では、『リーガルV』がこれまで全ての回が15%超。一方『スーツ』は、初回こそ14.2%と好調だったが、その後一桁を記録する回もあるなどやや苦戦中だ。視聴者の“満足度”も視聴率と同じ結果になっており、現時点では『リーガルV』の完勝である。しかしながら視聴データを丁寧にひも解いていくと、最後に笑うのは実は『スーツ』である可能性が見えてきた。

満足度は「リーガルV」に軍配が上がるものの…

弁護士2ドラマの視聴率と満足度。リアルタイム視聴率と満足度は『リーガルV』が圧勝しているものの…

テレビの視聴状況を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(eight社、調査対象960人)の10月度満足度調査によると、『リーガルV』が4・00(5段階評価)でドラマ部門(朝ドラ~23時台ドラマ)7位。一方『スーツ』は、3・65で19位と低迷した。

「その明暗を分けた鍵は“テンポ”」と同調査を行った大石庸平室長は言う。
まず『リーガルV』への調査対象者の感想。

「スピード感があり楽しく見ている」(47歳男性)
「面白いしスピード感があっていい」(52歳女性)
「テンポが良くていい!」(30歳女性)

明らかに“スピード感”や“テンポ”に対してポジティブに反応する視聴者が多かった。一方『スーツ』への感想は対照的だった。

「引き込まれる内容や展開ではなかった」(29歳女性)
「話のテンポが遅い」(33歳女性)

「テンポの悪さを指摘する声が目立ち、引き込まれないというネガティブな意見が確かに多い。実は満足度上位ドラマでは、引き込まれるか否かが大きな要因となっている」と、大石室長は分析する。
例えば満足度が4.12でトップだった『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS、金曜10時)の感想も、そこが鍵を握っていたことを示す。

「一話で急接近しこれから二人の関係が見逃せない」(32歳女性)
「展開が早く、この先どうなるのか興味をもった」(50歳女性)
「急展開とも感じられたが、次々と起こる展開が興味深い」(25歳女性)
「テンポがいい。今後の展開のためかもしれないけれど、それがいい」(21歳女性)

明らかに“テンポの良さ”と“引き込まれ度合い”が大きくものを言っている。

このように『リーガルV』の満足度4.00は高い数値だが、それでも『大恋愛』を初めとする上位6作品に及ばなかった。
その理由の一つには、米倉涼子の大ヒット作“ドクターXの名残”が挙げられる。

「私失敗しないので…と似た雰囲気を感じた」(45歳女性、満足度5)
「大門未知子がまた観たい。払拭するかの様に今度は弁護士か…」(51歳女性、満足度5)
「面白いけど、ドクターXとほぼ同じ」(52歳女性、満足度5)

いずれも満足度は最高の5と評価されているが、『ドクターX』の方が良かったかのような印象を残す感想が多い。

「ドクターXと比べるとね…」(13歳男性、満足度4)
「ドクターXの匂いがする」(57歳男性、満足度3)

前作と比較した結果、満足度を下げた視聴者も少なくない。
「今作が『ドクターX』を超える、もしくは塗り替える作品になっていたかと言えば疑問。視聴者も素直に高い満足度を付けられずにいる」と大石室長が指摘する通り、『リーガルV』は視聴率で成功したが、評価では失敗している。

『ドクターX』を大きく裏切らない同路線の作風は、要は“保険を掛けた”安全策。
その“パターン化”と“分かりやすさ”で、視聴率獲得には成功した。それでも視聴者に“物足りなさ”を残したのも事実。人は繰り返しに必ず飽き始める。類似パターンの多用は、“スカッと爽やか感”を次第に失わせる。
米倉涼子で二匹目のドジョウを狙った路線は、新たな展開に挑まなかった点で残念だった。

『SUIT/スーツ』逆転の可能性

アメリカ版のリメイク作である『スーツ』。原作版を視聴した人の声に注目してみよう。

「元の海外ドラマよりとっつきやすくてエンタテインメント性が高い」(47歳女性)
「海外版の設定をうまくアレンジしていてとても楽しく鑑賞できた」(40歳男性)
「アメリカ版のイメージがあったが、なかなかいける!と思った」(48歳女性)

ポジティブな意見がある一方、ネガティブな意見も同程度ある。

「アメリカ版のほうがストーリー的にも面白い」(33歳女性)
「本家が大好きなので観ているが、なんだか物足りない感がある」(34歳女性)
「オリジナルの方が面白い」(42歳男性)

まさに賛否両論。
「本国アメリカではシーズン7まで続く人気シリーズのため、否定意見があるのは当然。でも否定意見と同じだけ賛成もあるということは、リメイク作品として成功といっても良いと思います」(大石室長)の通り、同作は一定の健闘をしているようだ。

ただし日本版で初めて見た人には、“ひっかかり”が残ったのも事実。最たる部分が、主人公(織田裕二)とバディを組むアソシエイト弁護士(中島裕翔)の“経歴詐称”だ。

「織田裕二のキャラは良いが、鈴木(中島)の経歴詐称の部分には違和感がある」(70歳男性)
「天才が偽証してる事が不可解」(45歳男性)
「内容が現実離れ。弁護士資格替え玉受験とか」(42歳男性)
「現実感を出しておきながらあり得ない設定」(18歳男性)

「この設定は当然アメリカのオリジナル版にもあります。後半になるにつれ物語全体を動かす“フック”となりますが、序盤で多くの視聴者は単なる“キャラ付け”のための設定という印象を持ち、後半を想像できないまま、“ありえない”という判断をし、それが満足度を下げる一因となってしまった」(大石室長)

アメリカのドラマ文化とギャップがあるため、日本ではマイナスに作用した要素もあったようだ。それでも両ドラマを比べると、リアルタイムの視聴率では差がついたものの、タイムシフト視聴では善戦している。つまり自分の好きな時間にじっくり見る、ドラマ好きな視聴者は、『リーガルV』に負けず劣らず『スーツ』を支持している。ドラマの後半で、足を引っ張っていた“経歴詐称”設定が伏線として機能し始めたとき、ドラマファンの間でどう評価されるのかがキーポイントになる。

両ドラマがシリーズ化すると、それぞれの評価は肉薄していくかも知れない。
『リーガルV』は『ドクターX』の馴染みで受け入れられやすかったが、“パターン化”と“分かりやすさ”ゆえに、次第に飽きられる可能性がある。
一方『スーツ』はアメリカ流儀のドラマゆえ、当初は違和感を持たれ、第2話の視聴率は第1話から3ポイントも落ちた。それでも回を重ねると、日本の多くの視聴者も馴染んでくる可能性がある。現に、第2話以降は10%前後の視聴率をキープしている。そして脚本がよく出来ていることは、既にアメリカで証明されているからだ。
中長期的に視聴者の反応がどう変化していくのか。ぜひ追いかけてみたいと思わせる両ドラマである。

写真:堀田咲

 

  • 鈴木祐司(メディア・アナリスト)

    1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)

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