総額4億級?前代未聞納車トラブル「渦中の社長」のLINEを入手 | FRIDAYデジタル

総額4億級?前代未聞納車トラブル「渦中の社長」のLINEを入手

被害者は100人以上 長野市内の車販売店で「納車無し」「返金無し」のトラブル多発

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上はO社長が被害者に入院することになったことを伝えたLINE。下は2月末にリニューアルが終われば店を再開させる意向を示したLINE(いずれも被害者提供)

<長野県長野市にある自動車販売店「デュナミスレーシング」で前代未聞の大規模な新車納車トラブルが起きている。この店で新車を予約した客が全額入金したのに、納車予定日を過ぎても納車されず、「新型コロナの感染拡大と半導体不足」を理由に納車されなどのケースが続出。

その延べ人数は100人以上、総額は4億円になるとみられる。いったい何が起きているのか。同社販売店のO社長の行動を追うと、驚きの事実が判明した。>

「うちだけで30年の間にO社長を通して8台購入しています。知人や友人にも15台ぐらい紹介してきました。これまでは何の問題もなく納車されてきました。

息子たちが買ったクルマはアルファードとハリアーです。それぞれ金利の安い金融機関からお金を借りて10年で返済する予定でした。彼らにとっては初めての新車購入だったんです。納車前に全額前金で払ってくれるならもっと安くするといわれて、アルファードは60万円、ハリアーは40万円の値引きでした。トヨタのディーラーならありえない値引き額です。

それで前金で入金することにしたんですが、なかなか納車されず、何度も何度も引き延ばされてきました。納車を催促するといろいろなサービスを無料にすると言われてガマンし続けてきました」

長野市在住Aさんは、息子さん2人のクルマの代金を「デュナミスレーシング」に入金して1年以上経つというのに、いまだ納車されていない。そんな被害が長野県内だけでなく、新潟、静岡、大阪在住の人まで広がってしまっている。

渦中のデュナミスレーシングは、日産ディーラーの営業マンだったO社長が日産自動車を退職して1995年に創業。新車、中古車の販売から車検、整備、自動車保険にいたるまで車に関する様々なサービスを展開していた。当初はチューニングショップとして有名になり、整備士が5人もいて店は活気にあふれていた。ところが、10年ほど前から整備士が次々と退職、新車の現金販売をメインとする業態になった。

約1年前の2020年12月、O社長が軽い脳梗塞で倒れたあたりから、さらに経営状態が芳しくなくなった模様だ。契約していた従業員にも給料が払われていないような状態が続いていたという。

冒頭で紹介したAさんも、O社長と日産時代からの付き合いがあった。そのつながりから被害にあった人は少なくない(以下、デュナミスレーシングにおカネを払ったのに、車が届いていないと訴える人たち、およびキャンセルしたのに返金されない人たちを「被害者」とする)。

被害者の購入車種は、トヨタ・アルファードがもっとも多く、続いて、トヨタハリアー、スズキスペーシアなど。セダン系は少なく、ミニバンやSUVが大半を占める。1人当たりの金額は400万円前後がもっとも多い。

被害規模はどれくらいなのか? 筆者の取材だけでも、40名近い被害者がいることがわかり、さらに警察関係者の話では「3ケタ行くのは間違いない」とのことだ。その額を換算すると単純計算で4億円にのぼる。

行方不明のO社長は1月半ばまで営業活動

O社長と連絡を取り合っていた複数の被害者の話を総合すると、O社長が軽い脳梗塞で倒れた2020年12月あたりから「納車されない」「返金されない」などのトラブルが増えていたようだ。

O社長の脳梗塞は、重篤な状態ではなかったようで、1か月のリハビリを終えて仕事に復帰。左半身に麻痺が残り、杖での歩行を余儀なくされていたが、右半身は問題ないため車の運転はなんとかできていたそうだ。

その後、約3カ月が経過した2021年3月の時点で、すでに「納車されない」「返金されない」被害者が数十人規模に膨らんでいたが、O社長は「コロナと半導体不足」を理由に、納車を延期していた。

ただ一方で、納車を待つ購入者や、車検や整備などでつながりができた客のLINEに、毎日のように「新車買う人紹介してください!安くしますよ!」という営業メールを送っていた。体が不自由になった分、LINEでの営業に注力するようになったと考えられる。

事態が急変するのは昨年12月28日頃。O社長からのLINEがぱったりと途絶えたのだ。納車を待つ人がLINEで連絡を試みても、「既読」すらつかなくなった。その頃から、O社長の「失踪」を疑う声が上がり始めていた。被害者のひとりはこう明かす。

「毎日のように届いていた、LINEでの『新車買う人紹介して』のお願いメッセージがぱったり途絶えました。ホントにしつこくてうんざりしていましたが、年末年始は既読もつかず、所在不明でお店に行ってみたらモヌケの殻でしたね」

年が明け、不安になった人たちが長野市内にある店舗を訪れると、店は代車と思われるクルマが数台残っているだけで、ショールームは空っぽ…。O社長の所在はもちろん分からない。これでは不安になるのも当然だろう。「デュナミスレーシングがトんだ」というウワサが急速に広まり、SNSで被害を訴える声が続々と上がり始めたのだ。

2015年のO社長。この頃は順調に納車されていたという(写真:被害者提供)

「入院します…(新車は)ディーラーで買って下さい」

払ったおカネはどうなるのか。社長に再びコンタクトできる日は来るのか…。そんな不安な日々を送る被害者をよそに、行方不明と思われていたO社長は驚きの行動をとっていた。「被害を知らずに見積もり請求した人に対してはLINEで返事を送っていた」のである。

被害者とやりとりしていた携帯電話は解約し、既存の客とは連絡が取れない状態になっていたが、被害者の存在を知らない客には見積もりを出したり、LINEで質問に回答したり、営業活動を続けていたことが判明したのだ。

見積もりを請求してO社長とやりとりができていた人たちの話を総合すると、1月15日以降、O社長は突如として「入院します」とメッセージを送っている。

<すいません●●入院しますのでしばらく駄目ですので今回は、デイラーでお願いいたします。すいません>と書かれてある。

そして、<どこの病院に入院するんですか?>という質問には<●●予定です>と返答している。

他にも同様に、1月15日夕方から夜にかけて<入院しますので、あとはデイラーで買って下さい>のメッセージを受けた人が数名存在している。LINEのメッセージ通りなら、1月16日に病院に入院していることになる。

仮に入院していたとしても、LINEでのやりとりができるはずで、「自分以外のディーラーに相談に行ってほしい」と手放してしまう行為自体、疑問が残る。客に対し、不十分な説明のまま、返答を避けているのだとすれば、「逃げた」と思われても仕方がないであろう。

また、ショールームからクルマが無くなっていることを新規の客に指摘されると<店舗のリニューアルを行うので、一時的にクルマを移動させている>とのLINEを送っていた。

警察の対応は

納車に時間が掛かり契約をキャンセルしたものの、なかなか返金されなかった被害者は、これまでも警察や弁護士に相談している。問題が表面化した1月上旬以降、それが急増した。本件の担当の警察署は長野南警察署だ。ただ、相談に訪れる被害者の数があまりに多いようだ。同署を訪れた被害者は「多い時で1日数十名が訪れていてると言われた」と証言する。

さらに、「これだけの大事になっているので慎重に捜査は進めている。(O社長が)騙すつもりで(被害者と)契約を交わしたのか、騙すつもりはない中で、経営困難となり結果騙した様になってしまったのか、そこの線引きを物理的な証拠と付き合わせながら進めていかないと(被害届の)受理に進められない」との話もあったという。

同署では現在被害者のリストを作成中とのことで、警察が本格的な捜査を始めるにはまだ時間が掛かりそうだ。

長野県警察捜査2課はFRIDAYデジタルの取材に対し、「複数の方から相談が寄せられているのは間違いないが、それぞれ相談の内容について順次確認をして必要な捜査を進めているのは間違いない。ただそれ以上の具体的な捜査状況については今、捜査中の事案なので、すべてはお答えできない」と回答した。

また、筆者が独自に入手したO社長の新しい携帯電話や長野市内にある「デュナミスレーシング」に電話をかけてもつながらなかった。このまま沈黙を続けるのであれば、顧客に対し、あまりにも不誠実だと言わざるを得ない。会社として、社長個人として、一刻も早い対応が必要だろう。「被害者」からは続々と新しい情報が寄せられており、どうやら解決には時間がかかりそうだ。

1月上旬に撮影したデュナミスレーシング店舗。展示車両はなく、駐車場に代車らしき古い国産車が数台あっただけだ(被害者提供)
年明けからこの状態に。新車のカタログだけが残されていた(被害者提供)
”もぬけの殻”のようになってしまっている店舗外観。電話で問い合わせても「お客様の都合により通話ができなくなっております」のメッセージが返ってきた(被害者提供)
O社長が、被害者に対して誠実に向き合う日が一刻も早く戻ってきてほしい(被害者提供)
  • 取材・文加藤久美子

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