伊藤詩織さんが明かした「裁判中の想像を絶する恐怖」 | FRIDAYデジタル

伊藤詩織さんが明かした「裁判中の想像を絶する恐怖」

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二審勝訴の会見で淡々と気持ちを語る伊藤さん(AFLO)
二審勝訴の会見で淡々と気持ちを語る伊藤さん(AFLO)

「被害を公にしたことについての後悔はありません」

1月25日、ジャーナリストの伊藤詩織さん(32)は判決後の会見でそう述べた。

伊藤さんが、元TBS記者のワシントン支局長で、ジャーナリストの山口敬之氏(55)から「望まない性暴力被害で精神的苦痛を受けた」として、1100万円の損害賠償を求めた控訴審で、東京高裁は19年12月の1審に続き「合意がないまま性行為に及んだ」と認定。330万円の賠償を命じた1審から治療関係費として2万増額の332万円の支払いを山口氏に命じた。

訴状などによれば、15年4月、伊藤さんは山口氏との食事で酒に酔って意識を失い性的暴行を受けたとして被害届を出す。準強姦容疑での刑事告訴は不起訴となったが、民事訴訟では19年12月に伊藤さんの主張が認められ、高裁の判決も1審を追認した形となった。

判決後の伊藤さんは会見でマイクを握ると開口一番こう語った。

「20代後半から30代前半は裁判に向き合う日々だった」

2017年の取材時に、「街中で感じる恐怖」について語った伊藤さん
2017年の取材時に、「街中で感じる恐怖」について語った伊藤さん

提訴から4年4カ月もの時が過ぎた。実名で顔も出して被害を公表した伊藤さんには「売名行為」「カネ目当て」などの誹謗中傷も相次いだ。

「影響は想像以上に大きかった。家族も私も誹謗中傷の標的となり、(裁判で)負けたら日本に住めなくなる、という恐怖もあった」(伊藤さん)

会見では言葉を濁したが、筆者にはこの言葉に思い当たることがある。というのも、伊藤さんは17 年9月に筆者の単独取材を受けてくれた際、こう語っていたからだ。

「道を歩いて、頑張ってください、と声をかけてくれる人もいましたが、いきなり写真を撮ってくる人もいる。カフェで友達とお茶をしていたらムービーで撮られたこともある。自分だけならまだしも家族や友達もいる。自分は仕方がない、と思っても周りに迷惑がかかる。そう思うとふさぎ込むし、日本で暮らすの止めようかな、と」

伊藤さんは裁判中、英国で、セラピストの治療を受けながら生活していた。そのような苦痛を感じていたさなか、17年、世界中で話題となった「#Me Too」によって声をあげる女性が増え、社会の変化の潮流を感じ取ったという。

会見に同席した西廣陽子弁護士は「常識に従った説得力のある判決」と讃え、こう述べた。

「大変な思いをして性被害を公表した。泣き寝入りしない、なんとかしてほしい、と思い、訴えた。判決はそれに応えた」

一方、判決では一審では認められなかった山口氏の反訴も一部認定。伊藤さんの著書『Black Box』などで「山口氏から薬を飲まされた可能性がある」と訴えたことについて、「薬を飲ませたと認める証拠はない」「社会的評価を低下させた」と山口氏のプライバシーを侵害したと認定。1億3000万円の賠償を求めた山口氏の反訴を一部認め、伊藤さんに55万円の支払いを命じた。

高裁がいわゆる「デートレイプドラッグ」について認めなかったことを伊藤さんに問うとこう答えた。

「当時、デートレイプドラッグといっても、日本であまり知られておらず、『何?』という反応だった。公言したことで、実際に被害があると知ってもらうきっかけになったので、自分の中では大きな一歩につながり、有意義だったと感じています」

一方の山口氏は判決後、司法記者クラブレク室でこう述べた。

「デートレイプドラッグについての伊藤氏の不法行為を裁判所が認めたことは評価する。事実でないことを事実のように世界中のメディアでばら撒いたことに強い憤りを持っていた。判決全体には不満があり上告する」

「声をあげること、それが大事」と会見で語った伊藤さん
「声をあげること、それが大事」と会見で語った伊藤さん

山口氏が最高裁への上告の準備をし、裁判がまだ終わらないことについて伊藤さんに尋ねるとこう返した。

「ゴールが先にある。ゴールはないかもしれない」

として、マイクを強く握ってこう述べた。

「声をあげたら時間がかかっても必ずどこかに届く。誹謗中傷もあったが、友人や弁護士など、助けてくれる人がいたのでここまでこれた。

どんな事件でも被害者側に沈黙させるほうが被害者のためによい、とされる社会なら、今後も誰かが長期の間、苦しむ。被害者が司法で守られ、おとしめられるような事がない社会であることを願います」

司会が終わりを告げると、支援者から拍手が起こり、記者やカメラマンの一部からも拍手が沸き起こった。伊藤さんは頭を下げながら会場を後にした。

  • 取材・文岩崎大輔写真AFLO

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