追悼・スクープカメラマンが「癒やし系動物写真家」になるまで | FRIDAYデジタル

追悼・スクープカメラマンが「癒やし系動物写真家」になるまで

追悼 小原玲さん 享年60

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アザラシの赤ちゃん、シマエナガちゃん、モモンガ……誰もが彼のネイチャーフォトに目を細めた

「護送される犯人や車で移動する政治家を撮るとき、横から狙うと窓にスモークが入っているから、あいつはボンネットに乗っかって正面から撮影するんです。ついたアダ名が『ボンネットの小原』。

田中角栄に反旗を翻した竹下登が年始の挨拶の際に門前払いされたこと(’87年)があったでしょう? 当時の写真を見ると小原が一番前。隣が『フォーカス』のKで、その後ろでモタついているのが俺。小原の突進力を象徴する悔しい写真です」

報道カメラマンの宮嶋茂樹氏(60)と小原玲さん(享年60)は同い年。共に大学卒業後の’84年に本誌専属カメラマンとなった。駆け出しのころは小原さんの後塵(こうじん)を拝し続ける日々で「はっきりいってフライデー時代は敵。目の上のタンコブ。暗室(写真を現像する場所)で一緒になっても、口をきかなかった」と宮嶋氏が苦笑いする。

「小原とは俺の結婚式を機に仲良くなった。新郎新婦が誓いのキスをするとき、ふつう目の前で撮るじゃん? 小原は俺たちの後ろに回り込んでスーパーワイドで撮った。新郎新婦越しにカメラを構えた参列者が全員入った凄い写真だった」

「世界で活躍したい」と専属カメラマンを辞めたのもほぼ同時期だった。

小原さんは天安門事件の写真で米『LIFE』誌の『ザ・ベスト・オブ・ライフ』賞を受賞。宮嶋氏は「手の届かないところに行ってしまった」と思ったという。

「ところがしばらくして文春ネスコから『アザラシの赤ちゃん』という写真集が出て、クレジットを見てビックリした。『ボンネットの小原』が? ウソだろ?って。転身のキッカケは天安門の写真だった。戦車を攻撃しないように学生同士が手を繋いでお互いをなだめていたのに、『手を繋いで戦車を止める学生たち』と紹介された。『LIFE』は変更を認めず、報道に愛想を尽かしたと言っていた」

アザラシの赤ちゃんは天敵のいない流氷の上に産み落とされる。好奇心旺盛で人間を見つけても警戒せずカメラに近寄ってくる

中3で『第12回野生動物写真コンテスト』に入賞、富士フイルムフォトサロン東京にて、史上最年少で個展を開いた「一番弟子」の藍沙(あいしゃ)さん(15)が、動物写真家・小原玲の素顔を明かす。

「まず最初に教わったのが、動物の目線に合わせてカメラを構えることでした。雪の上に降りたシマエナガの目線に合わせ、腹ばいになってシャッターを切ると写真がグッと良くなった。ちなみに私が『第37回「日本の自然」写真コンテスト』で朝日新聞社賞を受賞した作品は小原さんと’20年2月に北海道で撮影したシマエナガです。他のお弟子さんたちがいるなかで、『僕たちが撮った写真の中で一番いい。これ、賞取るよ』と小原さんが言ってくださった写真でした」

宮嶋氏が盟友から久しぶりに連絡をもらったのは、亡くなる半年前だった。

「モモンガが飛び立つところを撮りたかったみたいで『遠くからシャッターが切れる遠隔装置はないか』という相談でした。亡くなったと聞いて、本気でクマに襲われたかと思った。ショックやった」

もっと撮りたいものはあるけど、撮り逃したものはない。小原さんはそう言い残して旅立ったという。

母乳で毎日2kgずつ増量。コロコロ転がって過ごす。

吹雪(ふぶき)に遭っても自分で顔を拭(脱ぐ)えないので自然に雪が溶けるのを待つ

シマエナガちゃん

シマエナガには北海道の緑の多い公園や神社、緑地で会える。1月〜3月中旬くらいまでは見つけやすいが春以降は目撃率が下降
愛くるしいフォルムでロケットのように飛ぶ。
体長は14cm程度。冬の間は群れで暮らし、春が訪れる頃にはつがいになる

モモンガ

エゾモモンガの赤ちゃん。巣穴で生まれ、1ヵ月ほど中で過ごす。外には出てこないが、目の前の景色を掴もうとする姿が可愛い
夕方、巣穴から出た赤ちゃんが近くの木に飛び移り、滑空の練習を始めた。まだ5mほどの距離だったが、しっかり宙を舞った

一番弟子の藍沙さんと。最後の教えは「周りに流されず、ジックリ撮りなさい」 ©志葉玲

おはら・れい
’61年東京生まれ。カメラ好きだった父の影響で、高校時代から写真を撮り始める。フライデー専属カメラマンとして活躍した後、世界進出を目指してスカーレット・オハラと著名写真家のマン・レイを模した現フォトネームに変更。
’90年からは動物写真家に転身し、癒やしのスクープを連発した。’21年11月17日、肺がんで逝去。

主な著作に『シマエナガちゃん』『アザラシの赤ちゃん かわいいのヒミツ』『もっとシマエナガちゃん』(いずれも講談社)がある。

2019年発売
2016年発売
2017年発売

『FRIDAY』2022年2月11日号より

  • PHOTO小原玲

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