「一流ホテルの枕が1990円」ニトリはなぜ商品を安く作れるのか | FRIDAYデジタル

「一流ホテルの枕が1990円」ニトリはなぜ商品を安く作れるのか

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このシンプルなロゴにも経営哲学が詰まっている(AFLO)

家具・インテリア製造・小売り首位のニトリホールディングスは、巣ごもり消費の追い風を受けた前期に大幅増益だった反動で、直近の第3四半期(2021年8月21日~11月20日)に限った純利益は218億4900万円(前年同期比19.0%減)にとどまった。

しかし、これは「前期の売れすぎ」が原因となった減益。それでも十分な利益を出しているのだから、その底力は恐ろしい。過去には34期連続の最高益を達成し、日経新聞の算出によれば、株価は30年半で57倍となった。ニトリの強さの秘密はどこにあるのだろうか。

ニトリがこれだけ日本社会に受け入れられる理由は、ニトリの宣伝にもあるように「お、ねだん以上」のあくなき追求であることに尽きる。筆者自身、10回以上にわたってニトリに取材してきたが、その中でも特に印象に残っているのは、似鳥昭雄・ニトリホールディングス代表取締役会長の掲げている「ニトリ憲法」だ。

「一に安さ、二に安さ、三に安さ、四に品質、五にコーディネート」

これがニトリ憲法だ。一から三までが「安さ」となっているところに、似鳥氏の執念が滲む。品質を上げるために一番簡単な方法は、価格を上げること。しかしそれでは、「誰もが買える」商品ではなくなってしまう。だから憲法の一から三まではすべて「安さ」にした。最優先すべきは「安さ」。そのうえで品質をとことん上げていく、というのだ。シンプルだからこそ、従業員にも顧客にも浸透する。先に答えを言ってしまえば、このニトリ憲法こそが「ニトリの強さの秘密」なのだ。

さて、ニトリが公表した「2021年ニトリで最も売れた商品ランキング」をみると、枕部門で「ホテルスタイルまくら 標準(Nホテル2)」が年間1位を獲得している。値段は1990円。やはり憲法を遵守している。商品の説明欄には、バイヤーのアピールポイントとして「まるで一流ホテルのような上質な寝心地をご自宅で!」とある。

同社のPB商品であるがゆえに、同性能同品質の他社製品と比べることはできないが、「ホテル気分を味わえるふわふわのまくら」という商品がchocho(楽天市場)で2490円などで売られている。

堂々と、一流ホテルのような寝心地をうたい、それが消費者に受け入れられていることからも、本商品は「お、ねだん以上」の真骨頂といえよう。

ではニトリが「お、ねだん以上」の商品を生み出し続ける秘密はどこにあるのか。それは彼らが「製造物流小売業」を掲げている点にある。

たとえば消費者が、ニトリではないショップの木製のテーブルを楽天市場で買った場合を考えてみよう。消費者の手元に木製のテーブルが届くまでに、森林業者(木を切る)、製造者(製品を企画し、テーブルをつくる)、販売者(ショップ)、プラットフォーム(楽天)、配送者、そして、モノを運ぶ物流の手が必要となる。各業者がバラバラであるがゆえに、コスト高になりがちだ。

これに対し、ニトリは製品の企画、製造、販売、さらに物流までもニトリ一社で担う。その上で、それぞれの管轄で徹底したコストダウンを図っているのだ。すべてを一体化することで、「いま何が売れているのか」「何が売れそうなのか」を、販売・流通部門からダイレクトに製造部門に伝えることができるのも大きなメリットだろう。

ニトリでは、商品を売れ筋の順に、A・B・ C…とランク付をしており、一番売れているランクAの商品は「絶対に欠品させてはならない」という強い経営方針がある。

この方針を貫くことは、製販が一体となったニトリでなければできないことだ。先に述べた枕も、売れ筋になった以上は決して欠品させないことが、ニトリの社員に課せられた至上命令なのである。

似鳥氏は、コロナ禍でも売り上げを伸ばした秘訣についてこう打ち明けている。

<弊社がお客様にとって「ディスティネーションストア」(最終的に選ばれる店)として認識していただけたことです。いつもならあちこち回って商品や価格を見比べるお客様も、外出を控えなければならない状況下では品揃えや価格や品質がいちばん充実している店にまっすぐ向かう。住関連のディスティネーションストアとして、ニトリを選んでいただいたお客様が多かったのではないでしょうか>(2020年10月2日号 プレジデント)

ニトリへ行きさえすれば「安い価格で、高品質の商品が、なんでも揃う。売り切れもない」という消費者の認識が根付いていることが、コロナ禍での売上増にもつながっているのだ。

日本総研リサーチ・コンサルティング部門副主任研究員で経営戦略を専門とする浜根圭佑氏は、「ニトリは、1990年代から東南アジアでつくってきた自社工場をフル活用して、収益性の高いPB商品の多くを調達している。<2032年までに世界で3000店、売上高3兆円>という中期目標達成に向けて、成長戦略を練っていくだろう」と、そのビジネスが一過性のものでは終わらないことを指摘する。

グローバルに目を向ければ、ウォルマートがネット企業を買収し、Amazonは食品雑貨大手ホールフーズを買収するなど実店舗に力を入れている。ニトリにも、これまでの垣根を超えた企業戦略が必要になるだろう。

しかし、そこもぬかりはない。ニトリは島忠のM&Aをはじめ、次々と新しい戦略を打ち出している。家具から家電、最近ではネット通販、レストラン経営にまで手を広げているのだ。

アマゾンやウォルマートというグローバル企業に対して立ち向かっていくだけの力を、ニトリは今、虎視眈々と蓄えている。

  • 取材・文小倉健一

    ITOMOS研究所所長

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