中国メディアも称賛連発!「羽生結弦が現地で人気沸騰」の納得理由 | FRIDAYデジタル

中国メディアも称賛連発!「羽生結弦が現地で人気沸騰」の納得理由

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男子のフィギュアスケートで五輪3連覇を達成すれば94年ぶり。羽生への期待は日本だけでなく中国でも高まっている(写真:共同通信)

「羽生結弦選手が中国でも人気」という記事が、このところ日本のネット上ですこぶる人気だ。我が国のアスリート界の至宝が中国でも人気を集めているという話は、日本人からすると決して悪い気はしない。いささか誇らしくさえあり、優越感をくすぐられる人もいるだろう。

浙江省の地元メディア「銭江晩報」は「全世界が羽生結弦を探している 羽生人気はどれほどか? 常に検索トレンド上位に」との記事を掲載。記事では、

「羽生結弦の名前は常に検索上位にあがっている。羽生が何かをしたわけではなく、何も動きがないからこそ、検索されているのだ」

と説明。さらに、

「困難に向かって絶えず挑戦する勇気と執念。これこそ羽生の魅力である」
「彼の演技は、フィギュアスケートの美しさを余すことなく表現している」

と持ち上げた。また、NHKに相当する中国中央電視台のスポーツ解説者である陳瀅氏は、

「私たちはたいへん幸運だ。羽生結弦の選手として最高の時期に出会うことができたのだから。いつか青春の時が過ぎ去ったとしても、人々の心の中に羽生結弦の記憶は永遠に留まるに違いない」

と絶賛している。

微博で羽生ファンを公言していた30代の中国人女性にも連絡を取って話を聞くと、

「2014年のソチ五輪からファン。羽生結弦は天賦の才があり、努力家で気骨がある。芸術性の高さは、群を抜いている。あの才能に魅かれる」

と語っていた。

羽生結弦は、なぜ中国でかくも人気があるのか。

・2014年にグランプリシリーズ上海大会の公式練習中、羽生は中国の閻涵選手と衝突し負傷したが、最後まで演技をやり切り、感動を呼んだ。

・2015年には「感謝中国」と中国語でサインした。

・2017年にフィンランドで行われた世界選手権の表彰式で、中国の金博洋選手の手にしていた国旗の裏表が逆だと気づいて手助けをした。羽生は中国語で「加油!(=頑張れ!)」と中国選手にしばしば声をかけていた。

などのエピソードがしばしば挙げられているが、このほかの理由についても考えてみたい。

2月3日付「銭江晩報」の記事。「羽生はスーパースターだ!」と称賛している

まず大前提として、羽生結弦は規格外に強い。五輪2連覇という偉業を成し遂げ、北京五輪では3連覇に挑戦する。サッカーのロナウドやメッシ、バスケのマイケルジョーダン、古いところでは陸上のカール・ルイス等々、歴史に名を残すようなトップ選手は、それだけで海外でも人気が出る。

もちろん、中国での羽生人気の理由は、単に強いからというだけではなさそうだ。理由の一つとしてしばしば挙げられるのは、中性的で柔和かつ優美な印象のルックス。ウェイボーのファンアカウントでは「少女マンガの主人公のよう」とも評されていた。羽生結弦はスキンケア商品「雪肌精」の広告にも出演しているが、それが可能になる男性アスリートは、そういないはずだ。

中国人の抱く日本人男性のイメージというと、反日映画(抗日映画)に登場する日本兵の姿が強固に存在する。その多くは粗暴で無慈悲な人でなしとして描かれており、羽生イメージとは対極に位置する。戦後は1980年代以降、高倉健が中国で圧倒的な人気と知名度を誇ったが、高倉健は無骨で不器用、無口で真面目というイメージが強い。事実、ある世代までの日本人男性は、そのような人が多かったのだろう。

あとは小泉純一郎、安倍晋三、石原慎太郎といった政治家たちの知名度も非常に高いが、彼らの中国内でのイメージは推して知るべしというか、完全に「怖いおじさん」である。「日本人男性=男尊女卑の塊で女性に対して常に威張っている」という負のイメージも、中国では根強い。

羽生結弦は、中国人のなかに強固に存在するこうしたネガティブイメージを、心地よく裏切ったに違いない。例えば、本人には申し訳ないのだが、もしも高橋大輔が五輪2連覇を達成していたとして、中国で同様の人気を博していたかどうかは分からない。高橋大輔のキャラクターは男らしさが強いため、中国人の固定観念を裏切るほどの意外性は、生じなかったのではないか。

また、男子フィギュアスケートでは中国の金博洋選手が上位に食い込んではいるものの、トップ選手の争いは熾烈で、羽生の存在を脅かすレベルには達していない。中国人選手が羽生のライバルとなれば、当然、応援の声は自国選手に傾く。陸上や水泳などのメジャー競技では、世界レベルの中国人選手が多数いるため、日本人選手を応援する構図にはならなかっただろう。

そして、スポーツ界で偉業を達成したとしても、これが柔道や空手といった「日本らしさ全開」の競技であれば、中国人として手放しで応援はできなかっただろうし、それほど注目もされなかっただろう。フィギュアスケートという欧米由来の華のある競技だったからこそ、羽生人気は花開いたと言える。

北京五輪は、現地ではあまり盛り上がっていないと聞く。北京在住の日本人男性は「街中のあちこちにオブジェがあるものの、ほとんど話題にはならない。開催を知らない人すらいるんじゃないか」と語っていた。

羽生人気にあやかって、少しでも北京五輪を盛り上げたいという中国当局の思惑もあるのかもしれない。そうでなければ、前述の銭江晩報のような政府公認メディアが羽生の応援記事を世に出したり、外務省の報道官が羽生結弦について「現地での応援は)お任せください!」とわざわざ取り上げたりするハズもない。全方位的に配慮ある対応ができる羽生は、中国政府から見ても、安心して応援できる対象なのだ。

神対応を連発できる人間性と、柔和なルックス、中国人ライバルの不在、北京五輪を盛り上げたい政府当局……。中国の羽生人気は、もうしばらく続きそうだ。

2月3日付「銭江晩報」の記事。北京五輪開幕前日だが、検索ランク1位に「羽生結弦」の名前があがっている
2月3日付「銭江晩報」の記事の一部。中国人好みの容姿?なのかもしれない
2014年11月、フィギュアGP中国杯の直前練習中に中国選手と激突し、係員に抱えられる羽生結弦(右、写真:上海/共同)
「羽生結弦王者のメソッド」(文春文庫)の中国語簡体字版、中信出版社の新書「羽生結弦王者之路」が中国国内で発売されている(写真:新華社/共同)
  • 取材・文西谷格

    ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。新潟日報記者を経て、フリーランスとして活動。09年〜15年まで上海に移住し、現地から中国の現状をレポート。著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)など。

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