ホントに実在してますか…?未知の海洋生物たちの「神秘の造形」
ゆらゆらと漂う赤い目の透明エイリアンから、浮遊する黄色のバルーン、虹色に光るスケルトンUFOまで――
人知れず海中に棲(す)み暮らす摩訶(まか)不思議な生き物たち。日本を代表する海洋写真家が捉えた、深遠で神々しい海の世界を感じてほしい――。
リーフィーシードラゴン ●オーストラリア・エスペランス
「元々私はカメラマンじゃなかったんです。しかし、海に潜り美しい生物を目の当たりにし、彼らを写真に収めたくなって写真の勉強を始めました。彼らの存在には底知れぬ魅力を感じます」
そう語るのは写真家の吉野雄輔氏。高度経済成長期、ダイビングが一般的な趣味ではない頃からその美しさに魅入(みい)られ、世界中の海で写真を撮ってきたという。
地球の表面積は、約5億1000㎢。その約70%が海であり、約25万種もの海洋生物が生息しているが、今回はその中でも特に色彩豊かで個性的な造形をもつ生物たちを紹介する。
背景が黒であるため、一見すると深海の写真かと見まごうが、その多くは水深1〜10mほどで暮らしている。
「こんな美しい生き物を目の当たりにした時、背景は目に入らないんですよ。それなら背景が真っ暗になるよう撮影した方が良い。実際に遭遇した際に見入ってしまうような、生き物の色や形が強調されると考えています」(同前)
こういった海洋生物の写真を多く撮れるようになったのは、デジタルカメラが普及してからのこと。撮影枚数が限られたフィルムカメラで動き回る海の生き物の写真を撮影するのは、至難の業だった。
国内外様々な環境で暮らす、色とりどりな魅惑の生物たちの姿をお楽しみあれ。
水中を浮遊する赤い目のエイリアン
タルマワシ ●山口県・青海島
幼生の姿で体長は約2㎜。映画『エイリアン』のモデルとされる。他の生物の中身をくり抜いて食べ、住処(すみか)とする。
イソギンチャクモドキカクレエビ ●高知県・柏島
約5㎜の透明なボディが、「イソギンチャクモドキ」というカラフルなサンゴの仲間に擬態して鮮やかに発光する。
サクラコシオリエビ ●高知県・柏島
10本の脚をもち、1㎝ほどの身体にはびっしりと長い毛が。海外では「ピンクスクワットロブスター」と呼ばれる。
フリソデエビ ●高知県・柏島
大きい方がメス、小さい方がオスとみられる。ペアで行動しているのがよく目撃されている。体長は約5㎝。
オトメベラ ●沖縄県・西表島
全長20㎝ほど。日の光を受け、蛍光色に輝く。実際に遭遇した際もこの写真通りの発色で見えるとのこと。
フラミンゴタン ●カリブ海・バハマ諸島
外側を覆うヒョウ柄の肉膜が目を引く。触ると殻内に膜をしまい、薄ピンクの貝となる。体長は約3㎝。
ヤジロベエクラゲ ●山口県・青海島
傘部分の大きさは1.5㎝ほど。日光にあたると体内で光が反射し、グリーンに見える。
ビワガニ ●山口県・青海島
体長約1㎝ほどの幼生の姿。3本の脚を動かし、ハエの様にスピーディーに移動するため、撮影は至難の業だという。
生まれて間もない頃だけの特別な輝き……
ホシムシ ●山口県・青海島
成長すると釣り餌のゴカイと似た姿になる。UFOのような傘をしまい、丸くなることも(写真下)。体長は5㎜。
ヒラミルミドリガイ ●高知県・柏島
「ヒラミル」という海藻を食べ葉緑体を取り込み、体内で光合成させることでエネルギーを得る。体長は約3㎝。
クダヤギクモエビ ●静岡県・城ヶ崎
甲羅の大きさは7㎜ほど。エビとカニの中間の形をしている。「クダヤギ」というサンゴの仲間を宿主とする。
吉野 雄輔(ヨシノ ユウスケ)
四十数年スチール写真を専門とする。広い大きな海から、ミクロの世界まで、写真集、図鑑、児童書、雑誌、広告の世界で活躍。2009年よりキャンピングカーで、日本全国の海を撮影中!
『世界で一番美しい海のいきもの図鑑』(創元社) 吉野雄輔・著/武田正倫・監修
『FRIDAY』2022年2月28日号より
- PHOTO:吉野雄輔