6時間続いた暴行…トー横キッズが見た「リンチ殺人」事件の真相 | FRIDAYデジタル

6時間続いた暴行…トー横キッズが見た「リンチ殺人」事件の真相

独占告白 すべてを見た17歳 昨年11月27日、雑居ビルの屋上で40代ホームレス男性がリンチされ死亡 20代の男二人と18歳の少年が傷害致死で逮捕された凄惨事件

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事件の様子を語るトー横キッズのサトル。「何とかしたかったんですけど」と、氏家さんを助けられなかった後悔を何度も口にした
事件の様子を語るトー横キッズのサトル。「何とかしたかったんですけど」と、氏家さんを助けられなかった後悔を何度も口にした

気絶しても蹴り続けた

「あの日、僕はアイツらと一緒に屋上に行きました。まさか、あんなにヒドいことが行われるなんて思いもせず……。今でも、あのときの彰さんの顔が頭から離れない。何か助ける方法があったんじゃないかと、後悔し続けています」

昨年11月27日、新宿・歌舞伎町の雑居ビルの屋上で、ホームレスの氏家彰(うじいえあきら)さん(享年43)がリンチされ死亡するという凄惨な事件が起きた。犯人グループ6名のうち、主犯格の関口寿喜(じゅき)(26)と亀谷蒼(かめたにあおい)(24)の両容疑者と、18歳の少年AとBが傷害致死の容疑で逮捕。残りの少年CとDは暴行に加わらなかったとして、逮捕は免れた。

少年らは歌舞伎町『TOHOシネマズ』横にたむろする通称「トー横キッズ」とされ、関口と亀谷、そして被害者の氏家さんも普段から「トー横」に出入りしていた。数々の事件を起こし世間の耳目を集めていた「トー横」だが、このリンチ殺人はその無法地帯ぶりを示す極めつけの事件だった。

FRIDAYは事件当日に容疑者らと行動を共にした少年Cのサトル(仮名・17)に取材。事件の一部始終を明かしてもらった(以下、「 」内はすべてサトルの発言)。

「僕がトー横に行くようになったのは、去年の夏頃からです。特に家庭環境に問題があったわけではないんですが、地元や学校に馴染めず、気が合う仲間が欲しくてトー横に行き着いた。逮捕された関口、亀谷の二人と出会ったのもトー横でした。彼らは20代だったので、僕らのなかでは年上。ヤクザだと吹聴していたらしいですが、普段はコンビニ弁当や飲み物を奢ってくれる”良い人”でした。

少年AとBもトー横で知り合いましたが、僕は仲良くなかった。Aは不良で、Bも木更津の暴走族グループのメンバーと言われていました。人をボコボコにした写真を見せてきて、『すごいだろ』と自慢するような暴力的な奴らでした」

一方の氏家さんは、歌舞伎町の清掃などをするボランティア団体『歌舞伎町卍(まんじ)會』のメンバーだった。トー横キッズからも親しまれていたという。

サトルは普段、歌舞伎町の『ホテルリブマックス』をたまり場にしていた。事件が起きる11月27日の朝も、サトルは少年Dと『リブマックス』にいた。

「その日は亀谷とAも一緒でした。みんなでエレベーターを降りたら、偶然、彰さんと鉢合わせたんです。亀谷は彰さんを見つけると、『ちょっと来い』と脅した。そして、僕とDにもついてくるように命じました。亀谷とAは、Aが住む新宿の『ライオンズマンション』の駐車場に彰さんを無理やり連れていった。時間は朝7時頃だったと思います。

駐車場に着くと、Aと亀谷が彰さんに暴行を加え始めたんです。突然のことに驚いて、僕とDは立ちすくんでいました。15分ほど殴る蹴るが繰り返されているうちにマンションの住民がでてきたこともあり、事件現場のビルに移動しました。あのビルは屋上に入れるということを亀谷が把握していたみたいです。記憶が定かではないんですが、ビルに移動している間に関口も合流したんだと思います。
ビルへ向かう途中、彰さんは僕に何度も『助けてくれ。このままじゃ殺されてしまう』と懇願してきました。

助けるべきだ、と頭ではわかっていたんですが、もし彼らを止めると今度は自分がリンチされる、と思い足がすくんでしまった。あのときの彰さんの切羽詰まった表情は、今でも鮮明に覚えています」

サトルの記憶では、ビルの屋上に上ったのは朝8時頃だったという。

「始めは亀谷とAが彰さんを正座させて何か話し合いをしていた。しかし、決裂したのか、突然、亀谷が彰さんを蹴り上げたんです。その後に関口が続き、Aも同じように蹴りまくった。うずくまった彰さんを正座させ、再び蹴る。気絶しても、起こしてまた蹴る。リンチの最中にBが合流してからはさらに拍車がかかり、囲んで交互に蹴るというような場面が続きました。

彰さんはひたすら『すいません』『申し訳ありません』と謝っていました。あまりにもヒドい光景を見て、僕は『もう止めたほうがいい』と声をかけましたが、奴らは聞く耳を持たなかった。それ以上言えば、矛先がこちらに向くという恐怖もあった。僕とDは怖くて体が動かず、ただ見ていることしかできなかった。永遠のように長く感じられた時間でした。亀谷や関口は『俺らは優しいほうだから』と笑っていました」

誰かをボコボコにしたかった

14時を過ぎた頃、少年Bが「ズラかるぞ」と合図し、やっと暴行は終わった。リンチは実に6時間以上も続いていたことになる。意識を失った氏家さんを放置したままだったが、実行犯の4人は何事もなかったように帰って行ったという。14時45分頃に通報があり、氏家さんは病院に搬送されたが、その後死亡した。

「誰が通報したのかはわかりません。彰さんが亡くなったことは当日の夕方、ニュースで知りました。まさか死んでいるとは思ってなくて、目の前が真っ暗になった。その夜にDと一緒に歌舞伎町の交番に出頭し、せめてもの罪滅ぼしにと捜査に可能な限り協力してきました」

なぜ氏家さんはリンチされたのか。少年Bが所属する木更津の暴走族グループとの間で金銭トラブルがあったとも言われている。実際、事件の20日前の11月7日にも、氏家さんは新宿の『西大久保公園』で暴走族グループから暴行を受け、急性硬膜下血腫の重傷を負っている。

「そのときの入院代10万円をBが立て替えていたとか、トー横のメンバーから彰さんが借りたとか、いろいろ言われています。リンチのとき、関口や亀谷は『俺らの名前を出してんじゃねえよ』と言っていたので、トラブルの解決を奴らに頼み、逆に怒りを買ったのかもしれません。

ただ僕は……関口も亀谷もAもBも、彰さんに特別な恨みがあったわけではないような気がするんです。憂さ晴らしのような感覚で、誰かをボコボコにしたかっただけなんじゃないかと。ちょっとしたトラブルがあった彰さんが、たまたまターゲットになった。それが、6時間以上に及ぶリンチを間近で見た、僕の感想です。僕が身体を張っても、たぶん奴らを止めることはできなかった。でも、隙を見て通報していれば、死なせずに済んだかもしれない。ずっと後悔しています」

今年1月28日には警視庁が、女子中学生とわいせつな行為をしたとして、「トー横の王」を自称していた水野泰宏容疑者(24)を逮捕したことを発表。また2月1日には、11月7日の氏家さんへの暴行事件の容疑者として、少年二人を含む4人が新たに逮捕されたことも明らかになった。

警察は取り締まりを強化し、トー横キッズは姿を消した。だが、彼らの抱える闇を認識しないまま追い出しただけでは、いずれは第2の「トー横」が生まれ、再び事件が頻発することになるだろう。

事件の7日前、FRIDAYの取材を受けていた氏家さん。若者たちに交じって歌舞伎町の清掃活動をしていた
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事件翌日、現場ビルの屋上で「追悼式」が行われた。少年や少女が氏家さんが好きだった酒を供えていた
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関口容疑者は事件翌日に逮捕された。「貸したカネを返してくれなかった」などと犯行の理由を供述している
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亀谷容疑者は逃亡を続けていたが、昨年12月4日に新宿警察署に出頭。逮捕当初は容疑を否認していた
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現場になった雑居ビル。新宿区役所の目の前にある。屋上に入れることを知っていた亀谷容疑者がリンチの現場に選んだという
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『FRIDAY』2022年2月18日号より

  • PHOTO田中俊勝(1、6枚目) 結束武郎(2~3枚目) 蓮尾真司(4~5枚目)

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