ワクチン3回目接種は必要か…米国在住医師が疑問に答える!
気持ちに折り合いをつけて、明るい未来を信じるために
「日本の3回目接種、あまり進んでいないようですね。もったいない。順番がきたら、どんどん受ければいいのに」
こう話すのは、アメリカ在住の医師、峰宗太郎先生だ。
「モデルナのワクチンは…というためらいの仕方はどうかと思います。今、流行っているオミクロンに対してもですが、モデルナワクチンのほうがファイザー製ワクチンよりも効果が高いというデータもあります。副反応が少し強いのは、効きがいいということの裏側でもありますね。副反応の出方はさまざまですが、反応性の副反応には一定の傾向はあるものです。
感染が大きく広がっている今、ワクチンを打つことで予防するのがよいでしょう。3回目の接種まで行うと、感染・発症・重症化の予防効果がある程度まで上がることがはっきりわかっています。
ワクチンで免疫を強化し、手洗い、マスク、3密を避けるといった基本の予防をすることで、この波を乗り越えるべきです」
「クロス接種」がいい!は、本当?
ファイザーのワクチンがいい、モデルナがいい、あるいは、前回と違うもので「クロス接種」がいい、という声も。
「ファイザーもモデルナも、基本的なテクノロジーは非常に似通っていて、臨床的には、言うほどの大きな差はありません。日本で使われたワクチンでは、アストラゼネカ製だけがテクノロジーも設計も違うのですが。
1回目2回目の接種から、抗体価は時間とともに下がってきます。なので、ブースター接種が必要です。『3回接種で1セット』と考えてください。
副反応は、免疫が反応することで、発熱や、リンパ節が腫れるなど一般的なものがみられ、ごくまれに重いものも出現しますが、それでも、メリットのほうが大きい。自分の予防のために重要です。そして、社会全体のために役に立ってくれるのも事実です」
感染をコントロールするために
「ピークは超えた」と言われ始めた第6波だが、なにしろ感染者の数が多い。
「そうなんです。オミクロンは、デルタと比べると重症化しにくく、今までのところ亡くなる人も比較すると多くない状況です。『だから大丈夫』と考える人もいますが、絶対数では感染者が多い。大流行です。流行は収めたほうがいい。高齢の方や基礎疾患のある方にとっては依然として脅威だし、労働力が削がれること、休校や営業制限などの影響は大きいです。
感染の拡大を収め、昨年の秋ごろのようにコントロールできる時期がくれば、そこでまた旅行とか会食とか、気をつけながらやりたいことをして、もっとずっと自由に経済も回していけますよね。
そして、ウイルスって、どんどん変異していくんです。また、別の『変異ウイルス』が生まれて、流行する可能性はいくらでもありますから、流行をコントロールしていくことは重要なんです」
新型コロナは、現在「指定感染症 2類相当」とされている。これを、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げてはどうか、という議論もある。
「いいとは思いませんし、はっきり言って些末な議論であり、本質ではない。現状、2類ではなく2類相当、という位置付けで、治療費の個人負担もありません。医療体制の問題はありますが、それでも、費用の心配なく医療につながれることは安心でしょう。公費負担の薄いアメリカでは、医療費で破産という例もありますから。
また、2類扱いだと『全例報告』がされるので、状況の把握ができます。流行把握も一つですが、さまざまな施策を打てるこれまでどおりの『2類相当』で、しばらくは対処していくのが適切ではないでしょうか」
やはり「特別な病気」なのだ。一方「みなし陽性」というなぞワードも使われている。
「無作為のPCR検査拡充については疑問です。全く症状がなく、とくにリスクのない人まで検査をすることで、検査の物的人的資源が消耗しますし、より重要なところへ資源が回らなくなることがあります。コストがかかりすぎますし、費用対効果も考えないといけない。限られた資源を有効に使うには、全員検査より、症状のある人や濃厚接触者、リスクの高い人や感染すると大きなリスクとなる人に確実に検査をしていくことが効率的でしょう」
気持ちも、経済も、今は「がまん」のときなんです
感染の収束を目指して、今、できることは。
「今は、『がまん』のときだと思います。変な対策をしようとするのではなく、じたばたしないで粛々と基本的予防策を徹底して、現実に向き合うときなんです。
ワクチンのブースター接種は、順番がきたらできるだけ早く打つのがよいでしょう。
くり返しになりますが、基本の対策が何より重要です。幸い日本人は、マスクをすることにあまり抵抗がない人が多いですよね。マスクをつけるだけで、確実にある程度は予防効果が上がり、リスクが下がります。そして、3密を避けること。無症状の感染者もいますから、密になればなるほど、不特定多数の人と接触があればあるほど、感染のリスクは上がるんです。
家族でも友人でも、なるべく接触を減らしていくこと、物理的な距離を保つことが、今は必要です。これも、幸い日本にはパーティなどを頻繁に行う文化がアメリカほどはありませんから、比較的守りやすいように思います。手洗いももちろん有効です」
人と向き合って得られるものは大きい。直接「会う」ことで満たされる気持ちがある。そんな「感情」や、「経済」や、感染の状況も見極めて「つどつど判断していく」ことが求められている。
「ウイルスも変異しえるし、状況はどんどん変わるでしょう。適切で確実な情報を得ること、予防・対策をすること。2年以上こんな『日常』ですが、自分のために、社会のために、スマートに乗り越えて逃げ切りたいですね。
治療薬・治療法の開発も進んでいます。流行は、上がったら必ずまた下がります。日本はこれまで、うまく乗り越えてきました。今はとにかく、がまんの時期です。でも、この波もきっと乗り越えられます」
気持ちに折り合いをつけ、状況をみる。わたしたちの未来は明るいはずだと信じたい。
峰宗太郎:医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。京都大学薬学部、名古屋大学医学部、東京大学大学院医学系研究科卒。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所等を経て、米国国立研究機関博士研究員。専門は病理学・ウイルス学・免疫学で、ワクチンの情報、医療リテラシー問題にも明るい。愛称は「ばぶ先生」