感謝と謝罪を繰り返し…羽生結弦の「演技後の肉声」全文掲載 | FRIDAYデジタル

感謝と謝罪を繰り返し…羽生結弦の「演技後の肉声」全文掲載

報道陣や関係者に計5回も頭を下げ……

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フリーの演技を終えた羽生。五輪を終えた安堵を感じているように見えた

男子フィギュアのフリーを終えて、羽生結弦(27)が報道陣の前に姿を現したのは、日本時間で2月10日の午後4時を少し回った頃だった。選手の取材を行うミックスゾーンには報道陣がぎっしりと詰めかけ、抽選に外れた記者たちも少しでも羽生の肉声を聞こうと、ミックスゾーンの入口付近にあふれていた。

羽生は、さきほどまでグリーンルームで他の選手の演技を笑顔で見ていたときとはうってかわって、表情には疲労と、五輪を終えた少しの安堵が浮かんでいた。

少し前まで中国の選手・金博洋(24)の取材が行われていたゾーンだったため、中国人記者たちが最前列に並ぶなか、日本人記者から「3度目の五輪を終えた感想は?」という質問が飛んだ。羽生は斜め上を見つめながら、語り始めた。

「えっと……、アクセルは、たぶん今までの中で一番近かったと思いますし……。今できる、羽生結弦の、アクセルのベストがあれかなっていう感じもしてますし。もちろんサルコーの転倒は大きかったと思いますけど。でもなんか、なんか、それも含めて、あの『天と地と』っていう物語なのかなっていう風にも思いながら滑ってました」

記者から「フィニッシュポーズが6秒間あったが、何を思っていたのか」と言われると、羽生は6秒という時間に対して「長い」と言って、少し相好を崩した。何度かうなずきながら、フリーの演技を振り返った。

「そうですね、あのポーズって実は『天と地と』の『天』の意味もありますし、なんか、ある意味、自分の魂をパーンって、天に送るみたいなイメージも僕の中ではあるんですけど……。9歳の時に滑っていた『ロシアより愛を込めて』というプログラムの最後のポーズと同じなんですね。なんか、それをあの時の自分と重ね合わせながら……。なんか、ひと言で言うのはちょっと難しいですけど、いろんな気持ちが渦巻いていたというか……。まあ、でも、なんか、ある意味は……、なんて言えばいいんだろう、難しいな。あそこまで、あのポーズを終えて、刀をしまうまでが、リンクをはけるまでが、自分のプログラムのストーリーだったかなって思ってはいます」

羽生は終始後ろで手を組んだ状態で、そう語った。話しながら、自分の演技とこの五輪をどう受け止めるか、整理しているように見えた。

フリー後、リンクの氷を顔につける羽生。感謝の気持ちからだったという

記者から「リンクを出るときに顔に氷をつけた理由は?」と聞かれた。

「本当にありがとうって思って。正直、ショートであんなことになっちゃって。もちろん悔しかったし……」

そう言いながら羽生は少し、涙をこらえるような表情になった。不運な「ミス」が起きたショートの記憶が頭によぎったのだろう。

「……なんかね、いろんなことを積んできて、正しい努力もしてきたと思いますし。自分が考えうるすべてをやってきたと思っているので、『ああ、報われねえな』とかって思いながら今日までやってきましたけど……。でも本当、最終的にはやっぱり『ありがとう。ここまで飛ばせてくれてありがとう』って思いながら……、(そんな感謝の気持ちを)感じてました」

記者から「(演技後の)グリーンルームで楽しそうな様子が見えたが、この五輪は楽しめたか」という質問が飛ぶと、羽生は、

「全然楽しくなかったです」

そう間髪入れずに、即答した。この五輪に対して羽生が受けていた重圧の大きさを感じた。そう言ったあと、羽生は、

「もういっぱいいっぱいでした。はい」

そう少し冗談めかして話した。自分が感じていたプレッシャーの大きさが、あまりにダイレクトに出てしまったことに驚き、かき消そうとしているように映った。

フリー前の6分間練習でも、何度も自分を奮い立たせていた

記者から「2連覇も経験し、今回のようなこともあった。(羽生選手にとって)オリンピックとはどういうものだったか」と聞かれた。2秒ほど考えこんで、羽生は「ハハ」と少し困ったように笑いながら、こう話した。

「一言じゃ言えないですよ、やっぱ。ソチオリンピックはソチオリンピックで悔しいながらも勝ったところでしたし……、ある意味では成長できたところだったかもしれないし。平昌は、その成長のものを全部出し切れたと思ってますし。今回は……どうなんだろうな。ちょっと時間が経つと見えてくるものもあるかもしれないですけど。挑戦しきった、自分のプライドを詰め込んだオリンピックだったと思います」

話は9日の練習で痛めたとされる右足の状態に移った。羽生は慎重に言葉を選びながら語った。

「えっと……、正直詳しく話すかどうかをすごく悩んでいます。勝てたら、言ってもいいかなって思ってたんですけど……。正直、どう言ったらいいかわからないですけど、かなり、あの色々と手を加えていただきました。まあ……、うん。だからこそなんとか立てたって感じです」

そう言って少し笑ってみせた。そういった状況でフリーに向かうことの気持ちを問われた。すると、羽生は少年のような表情でこう答えた。

「『絶対アクセルおりる!』って思ってました。『絶対回りきるんだ』って。(それをしに来た?)そうですね。『自分のスケートを出し切る』って思ってました。(4回転アクセルの手ごたえは?)手ごたえはよかったですよ。すごく。『あ、これが4回転半の回転の速度なんだ』って。ここからランディングをつくるにはちょっと危険すぎるかもしれないですけど……人間にはできないのかもしれないですけど。……でも僕なりの4回転半はできてたかなって、ある意味思ってます。(空中でどんな気持ちだった?)え、なんて言ったらいいんだろう。……たぶん僕しか感じたことがないものだと思います」

羽生の言葉からは、この五輪に対して受けていた大きな重圧をひしひしと感じた

記者から「4回転半への挑戦はまだ続きますか」という質問が出た。取りようによっては、自身の進退への質問とも受け取れる。

「ハハハ。もうちょっと時間ください。ちょっと考えたいです。それぐらい……それぐらい今回やりきっています」

関係者から「ラストの質問でお願いします」と告げられると、外国人記者から「エキシビジョンに出るとしたら、どういう気持ちで、自分のパフォーマンスを出したいか」という質問が出た。

「みなさんに感謝したいです、ひたすら。今回の、今回の演技がみなさんの期待に応えられたかどうかはわからないですし……。応援してくださったみなさんの、応援をすべて受け取ってつなげられたかはわかんなくて……。正直『ごめんなさい』っていう気持ちもたくさんあります。だからこそ、みなさんにちょっとでも『ありがとう』っていう気持ちが届くような演技になったらいいなって思います」

そう言って、羽生のフリー後の取材は終わった。

「ありがとうございました。またよろしくお願いします」

羽生はそう言って、報道陣や関係者に向かって計5回、頭を下げた。最後は頭を下げながら、会場を後にしていった。

羽生の肉声からは、この五輪に対して羽生が受けていた大きな重圧と、一方で声援を送ってくれる人たちへの多大な感謝の気持ちが伝わってきた。三連覇を逃した、4回転半で転倒したーー。そんな「記録」以上に、この北京五輪の羽生の演技は、多くの人の心に残ったのではないだろうか。

  • 撮影日本雑誌協会

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