ノーマスク宴会も開かれた北京五輪「超厳戒バブル」のヤバイ裏側
FRIDAY特派記者の現地レポート 「バブル方式」にこだわりすぎてかえって「密」に。 食べ物や日用品がまるで手に入らない。 夜になると外国人記者たちがノーマスクで酒盛りを……
スキージャンプ男子ノーマルヒルの小林陵侑(りょうゆう)(25)の金メダルを皮切りに、北京冬季五輪での日本勢の活躍が続いている。しかし、華やかな舞台の裏側では、実は多くの問題や騒動が起きている。

2月4日午後4時、本誌特派記者は北京市の中心部にある『北京国家体育場』に到着した。「鳥の巣」の愛称で知られるスタジアムは、4時間後に開会式が迫っているのが信じられないほど静まり返っている。スタジアムの廊下には段ボールのゴミが散乱し、ボランティアスタッフたちが地べたで食事をとっている。ここに入るまでの厳戒態勢が嘘のようだ。
「報道陣はメディアセンターから『鳥の巣』まで専用バスで向かうのですが、乗車前に北京市警による手荷物検査や、金属探知機によるボディチェックが行われました。水分が入った容器は中を確認され、モバイルバッテリーの持ち込みは禁止されるなど、国際線の航空機に搭乗するレベルの厳重さでした」(全国紙記者)
報道陣はホテルでも簡単な手荷物検査などを受けるため、二重チェックという念の入れようだった。開会式の日、「鳥の巣」周辺の道路は数㎞にわたって封鎖され、多くの警察車両が集まっていた。
今回の五輪の「バブル方式」は徹底している。関係者はバブル内のみにとどまり、ホテルや競技場間の移動は専用バスなどで行う。専用バスは運転席とそれ以外が厚いアクリル板で隔てられており、運転手と乗客が接することもない。しかしこの方法にこだわりすぎて、かえって「密」になる状況も発生している。
「開会式のあとも報道陣は専用バスに乗らなくてはいけなかったのですが、輸送能力が追いつかず、多くの人が少ないバスめがけて殺到していました。会場の出口周辺は多数の人でゴッタ返し、バスの中も満員電車並みの混雑になっていた。徒歩移動など他の手段も認めればこんな状況にはならなかったはずですが、組織委員会は頑(かたく)なにバス輸送にこだわるのです」(民放テレビディレクター)
青島ビールで大宴会
開会式だけではない。朝晩のコアタイムや人気競技の前後などにはバスに人が殺到する。一つの競技場の敷地内にメイン会場とサブ会場がある場合でも、そこを移動するためには専用バスに乗らなくてはいけない。結果、北京市内の至るところですし詰め状態のバスが走り、「密」な状況が多発している。
感染リスクが高い状況はこれだけではない。メディアセンターにあるレストランでは機械が調理、配膳をする「ロボット飯」が導入されている。少しでも人と人との接触を減らすのが目的だが、ここで元も子もない事態が起きている。
「夜になるとアルコールの販売が行われるのですが、それを購入し、宴会を始める外国人記者が多いのです。販売されている青島(チンタオ)ビールが飛ぶように売れています。ときには十数人規模の宴会になることもあり、ノーマスクの人も多く、感染リスクは非常に高いと思います」(同前)
バブル内にいる関係者は毎日PCR検査を受けている。しかし、これではいつクラスターが起きてもおかしくない。
一方で関係者たちのストレスが充満しているのも間違いない。食事は滞在先のホテル、あるいはメディアセンターでとるしかないが、高額なうえに、お世辞にも美味しいとは言いがたい。韓国の選手団から選手村の食事への悲鳴が報じられているが、バブル内はどこも同様の状態だ。前出・記者が語る。
「そもそも食料を確保するのが困難なのです。競技は早朝から始まるものや深夜に及ぶものも多く、レストランなどの営業時間に間に合わないことも多い。しかし、メディアセンターの売店には2種類のカップラーメンと小さなパン、あとは少しのお菓子程度しかありません。さらに日用品もまるで手に入らない。売店は配送が追いついていないのか、空の棚が目立ちます。あるのも歯磨き粉、電卓、クシなどわずかな商品だけです」
中国政府が胸を張る「超厳戒態勢」の内側には不都合な真実が広がっている。



『FRIDAY』2022年2月25日号より
PHOTO:日本雑誌協会(1枚目)