バーガーキングが立たされる「撤退か、成長か」の三度目の岐路 | FRIDAYデジタル

バーガーキングが立たされる「撤退か、成長か」の三度目の岐路

香港ファンド「事業売却」の余波

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写真:アフロ

コロナ禍では、「マクドナルド」や「モスバーガー」といったハンバーガーチェーンが存在感を増している。なかでも、ここ数年は「バーガーキング」の勢いが目覚ましい。

実際、2022年1月には愛知県名古屋市「イオンメイトピア店」、東京都文京区「本郷三丁目店」、大阪府八尾市「イズミヤ八尾店」と3店舗を新規オープンさせ、現在、全国で149店舗(2022年1月25日時点)を展開している。2019年5月には、当時展開していた99店舗のうち約2割にあたる22店舗を閉店するなど、苦境に立たされた。そこから、わずか3年で倍増させた計算になる。

バーガーキングの売りは「とてつもなく大きい」という意味を持つ「ワッパー」だ(※)。一般的なハンバーガーの約1.4倍の大きさがあり、そのインパクトのある大きさがSNSを中心に話題を集めている。

ただ、同店の魅力は大きさだけではない。バーガーキングのワッパーシリーズは合成着色料をはじめ、化学調味料や合成香料、合成保存料などの人工的な添加物を使用していないのだ。近年、高まっている健康意識も追い風となり、急速にファンを増やしている。

それでもなお、「バーガーキング」と聞くと、日本市場からの撤退や運営会社の移管と、二度の大きなつまずきを思い出す人もいるかもしれない。そして、今、「バーガーキング」が、三度目の岐路に立たされている。

日本での運営権を持っている香港の投資ファンド、アフィニティ・エクイティ・パートナーズが、2022年1月にバーガーキング事業の売却手続きを始めたのだ。まだ、どこの会社がどのように運営していくか不透明な点は多いが、その選択次第では「沈没」してしまってもおかしくはない。

同店の歴史を振り返りながら、その詳細に迫っていきたい。

そもそもバーガーキングは1954年にアメリカで誕生したブランドで、現在、世界で2番目に大きなファーストフードハンバーガーチェーンとして知られている。ちなみに、世界で一番大きなファーストフードハンバーガーチェーンの「マクドナルド」の実質的な創業は1955年だ。レイ・クロックがマクドナルド兄弟からフランチャイズ権を獲得し、同年にマクドナルド株式会社の前身となる「マクドナルド・システム」を設立した。

しかし、日本への上陸で比べると、両社の歩みはかなり違う。「マクドナルド」は藤田田氏がフランチャイズ権を取得し、銀座三越に第1号店を開店したのが1971年だ。一方の「バーガーキング」の日本上陸は1993年と、マクドナルドと比べると20年以上も遅い。

(※)ワッパーは末尾に登録商標マークがつく

「バーガーキング」を日本に持ってきたのは、西武グループの西武商事(当時)だ。同社はアメリカのバーガーキングとフランチャイズ契約を結び、西武池袋線「入間駅」に隣接している駅ビル「西武入間ペペ」に日本1号店をオープンさせた。しかし、アメリカの本部と店舗戦略などが折り合わなくなり、1996年、バーガーキング・ジャパン株式会社を設立したJTに事業を譲渡した。

ところが、そこにデフレ経済が襲う。ライバルのマクドナルドが「半額キャンペーン」でハンバーガーを65円で販売して「デフレの勝ち組」となる中、「バーガーキング」は効果的な手を打てないまま経営が行き詰まり、最終的には事業資産をロッテリアに譲渡。そして2001年、わずか8年で日本市場からの徹底を余儀なくされた。

バーガーキングが再上陸を果たすのは2007年だ。前年にロッテとリヴァンプの共同出資会社、株式会社バーガーキングジャパンが設立し、再び、日本市場へ勝負に来た。リヴァンプはファーストリテイリング元副社長の澤田貴司氏と、同社社長を務めていた玉塚元一氏が立ち上げた経営支援会社だ。

同社は2006年に「クリスピー・クリーム・ドーナツ」を日本に持ってきて一大ブームを作り上げるなど、海外ブランドの日本での展開に力を入れていた。その経験も踏まえ、バーガーキングジャパン社長には、日本マクドナルドで役員を務めた後、ゼンショーで日本ウェンディーズの社長を勤めた経験もある笠真一氏を据えた。そして、前回とは打って変わって外食のノウハウを駆使して市場の攻略を行ったのだ。

こうした成果もあり、2007年6月にオープンした「新宿アイランドタワー」は大行列となり、大きな話題を呼んだ。しかし、その後、なかなか店舗数が伸びないだけでなく経営も行き詰まり、冒頭の大量閉店にたどり着く。そして、経営は株式会社ビーケージャパンホールディングスに引き継がれることになる。

同社は香港の投資ファンド、アフィニティ・エクイティ・パートナーズがバーガーキングアジアパシフィック株式会社とマスターフランチャイズ契約を締結した後、日本におけるバーガーキング事業の運営会社として設立した会社だ。日本国内でのマーケティングをはじめ、店舗運営の全権、新規FCの育成、メニュー開発、販売戦略、店舗開発・新規出店などを請け負っている。

アフィニティ・エクイティ・パートナーズは、韓国でもバーガーキングの運営を手がけており、同国でライバルのマクドナルドを上回る440店まで店舗を広げている。

実をいうと、韓国市場は攻略が難しい。韓国は独自の食文化が発展しているので、日本の外食企業が進出しても、高い壁に跳ね返されてしまうケースも目立つ。そうした市場に切り込んで、店舗数を広げた功績を考える上で、アフィニティ・エクイティ・パートナーズの力は無視できない。

日本市場も同様だ。過去2回の歴史とは違い、順調に店舗数の拡大を続けている。コロナ禍にもかかわらず、その勢いは衰えるどころか加速をしており、200店舗を超えるのは時間の問題だ。そうした事情を踏まえて、今が売り時と判断したのだろう。しかし、今後も安定した成長を続けられるかどうか不安要素も大きい。

バーガーキングに立ちはだかる不安要素は、大きく分けて二つある。それが「ハンバーガーブーム」と「コロナ禍での市場環境の変化」だ。

現在、ハンバーガーは、第四次ブームと呼ばれるほど大きな盛り上がりを見せている。なお、これまでのブームの変遷は下記の通りだ。

  • 1970年 第一次ハンバーガーブーム/ハンバーガーチェーンの誕生
    →マクドナルド、ドムドムハンバーガー、モスバーガーなど
  • 2000年 第二次ハンバーガーブーム/ご当地バーガー
    →佐世保バーガーなど
  • 2015年 第三次ハンバーガーブーム/グルメバーガー
    →SHAKE SHACKやCarl’s Jr.など

第四次ブームを牽引しているのが、チキンバーガー専門店だ。コロナ禍になって以降、「鳥貴族」を展開する株式会社鳥貴族ホールディングスが仕掛ける「TORIKI BURGER」をはじめ、「ロイヤルホスト」を展開するロイヤルホールディングス株式会社が手がける「Lucky Rocky Chicken」や、「焼肉ライク」などを傘下に持つ株式会社ダイニングイノベーションのチキンバーガー専門店「DooWop」など、大手チェーン店がこぞってハンバーガー市場に参入している。

本国アメリカではチキンサンドが一大ブームに、バーキンも商品を展開した/写真:アフロ

コロナ禍では「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」による営業自粛要請などで、多くの飲食店が大きな打撃を受けた。しかし、ハンバーガーチェーンはテイクアウトやデリバリーのニーズに応えることができ、比較的、好調な売上を記録している。現に、マクドナルドやモスバーガーの業績はコロナ禍でも驚異的な伸びを見せ、あらためてファストフード業態の強さを示した。

そうした状況を受けて、ハンバーガー業態のオープンラッシュが続く。コロナ禍で業態ポートフォリオを豊かにし、安定した経営を目指す必要が生じたとき、やはりハンバーガー業態の好調さは魅力的だ。既存の業態の強みを活かした提案もしやすいため、新規での参入が相次ぐ。

しかし、そもそもチキンバーガーにニーズがどれほどあるか分からない。加えて、原材料費の高騰などが続く中、鶏肉のコストの安さに注目した企業側の論理が優先されている傾向も強い。いたずらに市場が過当競争になるだけで、各企業が消耗するだけになってしまう危険性も孕んでいる。

また、コロナ禍で、外食業界は大きな変化を強いられている。特に「外食需要の減少」と「深刻な人手不足」の影響は大きい。現在、外食の回数が減っているので、一回の食事に対する客の期待値は上がっている。しかし、店側は人手不足なので限られた人員で対応せざるを得ない。その中でも価値のある顧客体験を提供できないと「選ばれる店」とはならず、生き残っていけないのだ。

そこで外食企業各社が力を入れているのが「DX」だ。DXとは、「デジタルトランスフォーメーション」の略で、英語で記すとDigital Transformationとなり、“デジタル”による“変革・変容”という意味も持つ。簡単にいうと、「データとデジタル技術を活用」し、「ビジネスモデルを変革」した上で、「競争上の優位性を確立すること」を目指す動きである。

現在、多くの企業がモバイルオーダーや顧客管理システムを通して顧客データを蓄積し、販促や商品開発に役立てている。バーガーキングでも「モバイルオーダー」を導入するなど、テクノロジーの活用が進む。

一方で、同店の強みはSNS戦略だ。顕著なのが、2020年の秋葉原のケースだろう。「バーガーキング 秋葉原昭和通り店」の2軒隣にある「マクドナルド 秋葉原昭和通り店」の閉店に合わせて、縦読みすると別のメッセージが表れる垂れ幕を店頭に掲げた。その巧みな演出がSNSで拡散され、大きな話題を集めたのだ。こうした人の手による施策とテクノロジーがうまく噛み合えば、ブランド価値の向上などにつながるだろう。

ただ、人手不足の解決は至難の業だ。人口減少社会に加えて、外食業界が求職者から選ばれづらくなっているという現実がある。そこにコロナが直撃し、シフトに安定的に入れないことからアルバイトにも選ばれない業界になったという話も聞く。

このような状況で、店舗を拡大したくても、人材を確保できず諦めるケースも増えている。いかにDXを推進し、人の負担を減らしながら顧客体験価値を向上させるかが、店舗拡大の鍵となるのは間違いない。

それでは上記を踏まえて、どういう企業がバーガーキングの運営を引き継ぐのだろうか。そもそも外食業界はコロナ禍で消耗を強いられており、体力のある企業は限られている。それでもテクノロジーに投資する意欲があり、外食市場に精通している企業が最適だといえるだろう。もしくはウェンディーズとファーストキッチンが一緒になったように、別のハンバーガーチェーンが吸収する可能性もあるかもしれない。

世界2位のハンバーガーチェーンが日本市場を見事攻略するか。3度目の正直の行方に熱い視線が注がれている。

  • 取材・文三輪大輔

    フードジャーナリスト

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