夫、ガンプラ、日本への感情…韓国「メガネ先輩」の意外な素顔
試合後、ようやく「メガネ先輩」は相好を崩し報道陣に笑顔を向けた。
「日本は手ごわいライバル。(中国と米国に)2連敗していたので、この試合に絶対勝ちたくて……。不安でいっぱいでした」
北京冬季五輪、カーリング女子1次リーグで、2月14日に10対5で日本を破った韓国。最大の勝因は、「メガネ先輩」ことスキップのキム・ウンジョン(金恩貞、31)の正確なショットだろう。日本のスキップ・藤沢五月の成功率が71%だったのに対し、キムは圧巻の90%。日本は第9エンドに「コンシード(自ら負けを認める)」を表明した。
「キムは黒縁の丸いメガネをかけ、試合中は厳しい表情を決して崩しません。競技の合間にバナナを食べる時でさえ、ずっと真剣な顔をしているんです。本人は表情が厳しい理由について、複数の韓国メディアにこう説明しています。『意識はしていないんです。緊張して一度表情が固まってしまうと変えることができない』と。
『メガネ先輩』は、漫画『SLAM DUNK』の登場人物からつけられたあだ名。韓国が日本を大差で破ると、ツイッターで『#メガネ先輩』がトレンド入りしました」(スポーツ紙担当記者)
日本でも人気急上昇中のキム。いったい、どんな人物なのだろうか。
「出身地は、韓国西部・義城郡という地方の街です。カーリングを始めたキッカケは、周囲に遊業施設がなく冬場は自然と氷の上で遊んでいたからだとか。幼い頃から頭角を現し、10年にジュニア代表入り。10年から12年まで3年連続で、アジア太平洋ジュニア選手権で銀メダルを獲得しています。
12年4月には、韓国代表に選出。キムの名前が世界に知られるようになったのは、18年2月の平昌冬季五輪でしょう。8勝1敗の成績で予選を突破すると、決勝でスウェーデンに敗れたものの銀メダルを獲得。『メガネ先輩』のあだ名も、この頃から定着し始めました」(同前)
メガネを外すと……
厳しい表情と正確なショットで、世界の強豪チームから恐れられるキム。だがライバルの藤沢は、『日刊スポーツ』のインタビュー(18年2月23日)で「メガネ先輩」の意外な素顔を明かしている。
〈メガネをしていて分かりにくいですが、外すとキレイなんです。試合中はピリピリして、キリッとした顔でよけい目立っちゃうんですが、パーティーで髪を下ろして、メガネを外すとめちゃくちゃキレい。キレいさでは負けるので私はショットで頑張ります〉
氷上を離れたキムは、とても気さくだ。
「ファンからの写真撮影やサインの要望にも、笑顔で応えてくれます。普段は笑顔が絶えない、チャーミングな女性です。競技中とは別人のようです。ちなみに趣味は、アニメ『機動戦士ガンダム』のプラモデル製作。不調の時も『ガンプラ』を作っていると、なぜか落ち着くんだとか」(前出・記者)
トレードマークとなったメガネに、注目した自治体もある。
「キムがかけているメガネは、韓国中部・大邱(テグ)市にある『ファントムオプティカル社』の『プリュム』というブランドです。同市は平昌五輪後、キムをメガネ広報大使に任命。キムはメガネ産業発展にも貢献しているんです」(日本カーリング協会関係者)
キムは18年7月に、5年間交際した韓国のスケートコーチと結婚。19年5月に長男を出産している。
「育児のため、一時カーリングから離れた時期もありました。しかし19年8月から復帰。ママになっても競技を続けるのは、彼女なりのポリシーがあるようです。周囲には、こんな趣旨のことを話しています。『子どもを育てながらでもスポーツができる姿を、世界の女性アスリートに見てもらいたい』と。日本を含め、対戦相手にも必ず敬意を示す。カーリング界の手本のような選手ですよね」(同前)
悲願の2大会連続メダル獲得へむけ、ママアスリート「メガネ先輩」の戦いは続く。
写真:アフロ