報酬20万で処刑に…日本人の中国麻薬密輸「驚きの犯行実態」 | FRIDAYデジタル

報酬20万で処刑に…日本人の中国麻薬密輸「驚きの犯行実態」

ノンフィクション作家・石井光太が日本社会の深層に迫る!

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押収された違法薬物。日本人の容疑者は増加傾向だ(画像:ロイター/アフロ)

中国で違法薬物の密輸や所持で逮捕された日本人が、どのように処刑されているかご存じだろうか。

中国の法律では、覚せい剤50グラム以上の密輸や売買で、国籍問わず死刑判決が下されることになっている。日本とは違い、逮捕から処刑執行までは数年だ。

一時代前、中国の処刑は銃によって行われていた。現在は主に、毒物を使用した薬殺刑である。

プロセスはいたって簡単だ。中国には、死刑執行車というバンがある。車内には、執行用のベッド、毒薬、遺体保存のための機器、監視装置などが完備されている。この車が各地を回って死刑囚の執行を行う。

まず死刑囚は、車内にあるベッドに横たえられ、備え付けのベルトで体を固定される。血管に注射針を通し、麻酔薬を流す。そして死刑囚が意識を失った後、致死量の毒薬が注入される。

現地の報道によれば、毒薬を注射されて数十秒後に体が痙攣しはじめるという。そして数分かけて死に至るそうだ。

これまで中国で死刑を執行された日本人も同じようなプロセスをたどったとされている(死刑執行車ではなく、施設内で執行されたようだ)。日本から来た家族との面会が許されるなどの配慮はあったものの、注射によって薬殺されるというのは現地の人と同じだ。

中国における外国人の処刑の詳細は秘密にされており、外に漏れ出てくる情報は皆無に等しい。

同じく薬殺刑を認めているアメリカでは、死刑につかう薬物が不足するとか、死刑執行から約40分経っても絶命せずに死刑囚を苦しめたといったニュースが入ってきている。

現在、中国ではアメリカとはけた違いの、年間に数千件の死刑執行が行われていることを考えれば、処刑現場には様々なトラブルが起きている可能性がある。

中国で処刑される日本人とは……

では、このように中国で処刑になっている日本人とは、どういう人たちなのだろう。

中国には大連など覚せい剤の産地として知られている地域が複数ある。中国の違法薬物シンジケートが密造しているのだ。

こうしたシンジケートが日本に密輸する場合もあるが、この場合は中国人が運び屋になる。日本人が運び屋になるケースは、日本の暴力団、あるいはそれに準ずる密売組織が行うケースだ。彼らが中国に覚せい剤を買い付けに行き、それを日本人に運んで密輸させるのである。

薬物の密輸で逮捕歴のある指定暴力団の構成員は次のように述べる。

「俺は親が台湾人で、台北で生まれ育った。13歳で日本に来て、その後ヤクザになったんだけど、生まれがそんなんだから中国語ができた。最初は日本で中国人ブローカーが運んできたクスリを卸してもらって売りさばいていたんだけど、その中国人ブローカーが逮捕されちまったんだ。それで俺は中国へ行って、そこで直にクスリを購入して日本に持ち込むようになった。言葉が通じたので、彼らもすぐに信用してくれたよ」

彼の場合は現地で買った覚せい剤を、中国の海運業者に頼んで日本に密輸してもらっていたそうだ。日本で待機しており、船が無事に港に入ると、そこへ駆けつけて引き取る。一度に5キロ~15キロ単位の取り引きだったそうだ。ちなみに、これは末端価格にして数億円から十数億円になる。原資は暴力団のネットワークで借りるそうだ。

彼はつづける。

「逮捕された時のリスクが高いから、俺は自分で直接密輸をしたことはない。でも、密輸にかかる手数料が高いから、リスクを承知で金儲けをしようと考えるヤツや、1、2キロの小規模の密輸をするヤツなら、自分たちで運ぶこともある。

とはいえ、ほとんどの人間は中国で捕まれば、一発でアウト(死刑)だって知っているから直接運びたがらない。それで、自分は仕切る側に立って、運び屋にやらせるんだ。運び屋は日本からつれてくることになる」

たとえば、2010年に、中国で覚せい剤関連の容疑で捕まった日本人4名が、薬物による死刑を執行されたことがあった。この時に死刑にされた日本人たちが、まさにこういうグループだった。

グループの1人は、主犯とされた男だった。彼は暴力団に近い立場にあり、日本でも数々の事件を起こしていた。違法薬物の密輸に手を染めるようになってからは、路上で暮らすホームレスや、職安の傍で待ち伏せして生活に困っていそうな失業者に声をかけ、「運び屋にならないか」と持ちかけていた。

この時、同じく死刑執行された男性は、まさにその手口で運び屋になった人物だった。彼は多額の借金を背負い、一時期は段ボールハウスでホームレスをした経験を持っていたという。彼はこんなふうに話を持ちかけられた。

「中国から日本にブツを運ぶ仕事をしないか。成功報酬はきちんと払う。1回につき2030万円だ。仮に中国で逮捕されたとしても、1年でシャバに出てこられるから、安心してくれていい」

死刑の対価として、2030万円とはずいぶん安いように感じるが、ホームレスや失業者を利用した場合はこれくらいが相場らしい(ちなみに、特殊詐欺の受け子などもこれくらいの金額で雇われている)。

また、日本で初犯で覚せい剤の所持でつかまった場合、実刑ではなく、執行猶予がつく場合もある。中国の法律に無知な人間であれば、そうしたことを踏まえて、「中国で捕まっても1年で出られる」という言葉にだまされてしまうのだろう。

その結果、この男性は1.2グラムの覚せい剤をベルトに隠し、中国から日本へ飛ぶ便に乗ろうとした。だが、税関で逮捕され、裁判の結果、死刑判決を受けることになるのである。裁判で彼が利用された運び屋であることは明らかになったが、情状酌量はなされずに、死刑執行されることになった。

4人が立て続けに処刑された後、中国では14年、15年、16年にも一人ずつ中国で日本人の死刑執行が行われている。すべて覚せい剤の密輸に関する容疑であり、日本大使館に通達後、場合によっては家族との最後の面会を認めた上で、薬殺刑が執行された。

このうち16年に死刑が執行された40代の男性は、その直前に次のような主張をした。

「自分はだまされたんだ。知人に呼ばれてホテルへ行ったところ、知らない中国人からスーツケースを預かった。中身が何かはわからなかった。空港へ持っていったところ、そこから4キロの覚せい剤が出てきて逮捕されたんだ」

自分は何も知らず、だまされたと言ったのである。だが、それによって情状酌量されることなく、彼は死刑執行されることになった。

元市議会議員の告白

この40代の日本人の主張が真実だったかどうかはわからない。死刑を免れたいがために嘘を言ったとも考えられるし、最後まで真実を主張していたとも考えられる。

中国で逮捕された日本人の中には、同じような主張をしている者が他にいる。たとえば、愛知県稲沢市の元市議会議員である桜木琢磨だ。

桜木は13年に中国から日本に帰る際、スーツケースから3.3キロに及ぶ覚せい剤が発見された。裁判で、桜木は次のように主張した。

「マリ国籍の男性に、商品のサンプルが入っている荷物を運んでくれと頼まれただけだ。中身が覚せい剤だとは知らなかった」

幸か不幸か、桜木は裁判の時に75歳になっていた。中国では75歳以上の人間に原則として死刑を適応しないという取り決めがあるため、死刑判決ではなく、無期懲役の判決が下された。

この桜井のケースに関しても、本当に中身を知らなかったかどうかを立証する術はない。いずれにせよ、重要なのは、逮捕された人間の主張が何であれ、中国では50グラム以上の密輸が処刑になる可能性が高いということだ。

筆者も取材で海外へ行くことが頻繁にあり、外国の空港などで見知らぬ外国人から声をかけられ、

「スーツケースを持って行ってくれないか」と頼まれたことは多数ある。日本の成田国際空港でも経験した。

また、最近はネットを通して仲良くなってから、荷物を持ち出すことを頼むケースも増えているそうだ。SNSなどを通して海外を行き来している人間を捜し出し、ダイレクトメールで親しくなってから、実行に及ぶという。日本人はNOと言うのが苦手なこともあり、うまく利用される者も少なくないのだろう。

本当に悪い犯罪者は、自分の手を汚さずに、一般の人間をだまして捨て駒として利用しようとする。それが彼らの常とう手段なのだ。

残念ながら、こうした犯罪から身を守るのは、各々の意識しかない。一旦逮捕されてしまえば、何をどう叫ぼうとも死刑判決が下される可能性が高い。

私はマレーシアで死刑判決を受けた元看護師の日本人女性に何度か獄中インタビューをしたことがある。彼女の母親とともに刑務所へ行き、アクリル板越しに面会したこともあった。

彼女がなぜ死刑判決を受けたか、事件をモデルにした拙著『死刑囚メグミ』に譲りたいが、彼女が泣きながら母親にこう語っていたのが忘れられない。

「ごめんなさい。何も言えない……本当にごめんなさい」

面会の間、ただただ「ごめんなさい」としかくり返さなかった。死刑という重い判決の前では、ひたすら泣いて謝るしかなかったのだろう。

短絡的な行動がこういう事態を引き起こすことを、海外で行われている日本人の死刑問題からしっかりと考えるべきだ。

  • 取材・文石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

  • 写真ロイター/アフロ

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