逮捕者急増!いま、日本で「違法薬物密輸」が急増する意外な背景 | FRIDAYデジタル

逮捕者急増!いま、日本で「違法薬物密輸」が急増する意外な背景

ノンフィクション作家・石井光太が日本社会の深層に迫る!

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17年9月、愛知県で押収された違法薬物600キロ(画像:共同通信社)

新型コロナウイルスの感染拡大以降、覚せい剤をはじめとした違法薬物の密輸において、日本に暮らす在日外国人の逮捕が相次いでいるのを知っているだろうか。

昨年11月には、日本に暮らすベトナムやブラジルの国籍を持つ5名が、覚せい剤密輸の疑いで逮捕された。

5名は、トルコから船のコンテナ2台に段ボール箱2万4000箱の木炭計4トンを輸入した。それを調べてみたところ、木炭に覚せい剤が練り込まれていたことが発覚したのだ。

また、同年12月には、ブラジル国籍の男女5名が、覚せい剤密輸の容疑で逮捕された。20代~30代で、いずれも日本で暮らす在日外国人だった。彼らは、合計で1.2キロの覚せい剤を密輸したばかりでなく、覚せい剤の使用、大麻の所持でも逮捕された。

これ以外でも、在日外国人が違法薬物の密輸に関係したとして逮捕された事件は、枚挙に暇がない。

なぜ、日本で暮らす外国人の密輸事件が増えているのか。

そもそも、在日外国人と違法薬物密輸の関係は深い。都内の広域暴力団に属する、在日出身の60代の人物がいる。彼は父親も暴力団という家庭で生まれ育ち、違法薬物の密輸入には詳しい。

彼は、次のように語る。

「昔は日本に暮らす在日外国人たちは貧しかったので、祖国との間に非公式のルートを築いて、いろんなものをやり取りしていたと聞いている。手紙を送ったり、医薬品を取り寄せたり、売り物の商品を買い付けたり。それで商売をやっている人たちも多かったらしい。

ヤクザになった在日の人たちは、そのルートをつかってドラッグを取り引きすることもあったらしい。ヤクザだった俺の親父はドラッグだけじゃなく、酒や煙草や食べ物などいろんなものを取り引きしていたみたいだ。また、戦争中に大陸にいた人たちは中国語、ロシア語なんかがペラペラだったから、日本人のヤクザでもそういうところとの取り引きで金儲けをしていた人間もいたそうだ」

開拓した非公式ルート

その昔、日本はかならずしもアジア諸国ときちんとした国交があったわけではなかった。だから、在日外国人たちは非公式のルートを開拓し、ひそかに商品を輸出したり、輸入したりして商売をしていた。そうしたルートが、一部の暴力団によって違法薬物の取り引きにつかわれたということなのだろう。

時代の移り変わりとともに、戦後生まれの人間たちも違法薬物の密輸にかかわるようになっていく。だが、海外へ行って違法薬物を買い付けるには、それなりのコネクションや外国語によるコミュニケーション力が必要になってくる。そういう意味では、在日の家で生まれ育った人たちや、外国で生まれて日本にやってきた残留日本人、ボートピープル、日系人の一部がそれにかかわることもあったという。

先の人物は次のように述べる。

90年代以降は、新たに日本にやってきた外国人がドラッグとかかわっていた。中国からいろんな人間がやってきていたし、コロンビアとか南米の連中もたくさん入ってきたろ。それに、イラン人なんかもたくさんいた。彼らが日本にドラッグを持って来て、ヤクザがそこから買って、末端の売人に卸すという仕組みだ。もちろん、ヤクザが自分で密輸入することもあったけど、逮捕のリスクがあるから、安全を考えるなら外国人から買い付けたほうがいい」

中国人マフィアや、南米系の犯罪グループが増えはじめたのは、まさにその頃だった。また同時期には、肉体労働をしていたイラン人たちが、バブルの崩壊によって仕事を失い、一部が不良化した。来日に当たって借金を抱えていた彼らは、なりふり構わずに儲けようとして、母国とのパイプをつかって違法薬物の密輸入や密売に手を染めた。

日本の暴力団が、自ら運ぶことが少なくなっていったのは、暴対法や暴排条例も関係あるという。90年代以降、日本では暴力団を締め付ける様々な法律や条令ができて、暴力団個人への監視も厳しくなっていった。

そのため、構成員が自ら持ち運ぶことはもちろん、外国へ行って帰ってくるだけでもすぐに目を付けられる。なので、自分たちで直接手を下すより、それなりの密輸分の手数料を払ったとしても、外国人から買い付けた方が割が良いそうだ。

先ほどの人物は次のように語る。

「外国人のグループでも、大きいところと、小さいところがある。大きいところは何十キロというブツを船で運んだり、荷物に紛らわせたりして運ぶ。ヤクザと手を組んでやるケースもある。

他方、小さいグループは、運び屋をつかって個人で密輸させる。現地の貧乏な人間を利用して荷物に潜ませる、飲み込ませるなどして日本に入国させるんだ。こちらは運び込めたとしても1~3キロぐらいだ」

日本の空港では、数多くの外国人が違法薬物の密輸の罪で逮捕されてきた。ただ、その多くは日本に旅行目的を口実にやってくる海外在住の外国人だった。

だが、冒頭で見たように、今は日本に住所がある在日外国人による密輸が増えているのである。なぜか。

先の男性は述べる。

「理由はコロナだよ。20年以降は、外国人が旅行目的で日本に来ることががくんと減っただろ。だから、旅行目的で来ると税関で怪しまれて徹底的に調べられる可能性が高くなったんだ。それで、外国で『運び屋』をつかまえて密輸させるのが難しくなった。

日本に暮らす在日外国人をつかうのが増えたのはそのためだ。あいつらなら日本で長年暮らしているし、仕事をしている人間も多いから、疑われることが少ない。だから、彼らを利用することが増えたんだ」

外国人が利用される2つのケース

在日外国人が利用されるケースは大きく2パターンあるという。

1つが、日本で仕事にあぶれて不良化している外国人をつかうケースだ。彼らの中には、大金が手に入ると聞いて飛びつく者もいれば、何かしら後ろめたいことがあって組織の言いなりにならざるをえない者もいる。そういう者たちを巻き込んで密輸にかかわらせるという。

2つ目が、日本でビジネスをしている在日外国人を巻き込む方法だ。もともと違法すれすれのビジネスをしている者に声をかけるか、コロナ禍によって経営危機に陥っている者に声をかけるかして協力させる。彼らの多くは輸出入に関する事業をしているので、商品に紛れ込ませる。

男性は言う。

「コロナ禍でドラッグの世界はだいぶ変わった。これからは日本に暮らす外国人たちが捕まることが多くなるだろうし、日本人が運び屋にされて捕まることも増えると思う。そうなれば、これまで以上に失業者とかそういう人間が狙われるだろうね。

あと、外国から輸入する代わりに、日本でドラッグをつくることも増えている。栽培は昔も今も大麻が主流だけど、最近は大麻リキッドっていって濃縮したものが流行っている。これなんかは国内でつくれて、普通の大麻とはけた違いの効果があるものなんで、今は客に困らない状態になってる」

国内で大麻が増えているのは事実であり、検挙数は7年連続で増加の一途をたどっている。

20年度でいえば、覚せい剤の密輸入の犯検挙数は73件。これは前年比で減少している。一方、大麻の栽培での検挙数は近年増加しており、232人に達している。これだけ見ても、外国人による空路での密輸が減り、日本人による国内生産が増えているとわかるだろう。そしてこの大麻の検挙者の4割が、1020代の若者世代なのである。

こういう実態が明らかになると、警察が不良外国人を逮捕して母国へ送り返せばいいとか、日本人の組織を一網打尽にすればいいという結論になりがちだ。

だが、そもそも一部の在日外国人を犯罪に走らせている原因は、彼らをそこまで追いつめている社会構造にある。また、国内に違法薬物を欲する日本人がいるからビジネスは存在する。

そう考えると、単純に逮捕して強制送還させれば解決するという問題でないのがわかるだろう。外国人を窮迫させたり、日本人の若者を違法薬物に走らせたりする構造そのものを変えていかなければ抜本的な解決にはならないのだ。

アフターコロナの時代の中で、日本の違法薬物問題をどうしていくのか。若年層の使用が増える今、早急に考えなければならない問題なのである。

  • 取材・文石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

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