猪苗代湖ボート事故 被告が語った 「自分は無実」の衝撃 | FRIDAYデジタル

猪苗代湖ボート事故 被告が語った 「自分は無実」の衝撃

裁判は思わぬ方向へ…… 湖で遊んでいた小3児童が巻き込まれ死亡、 母親は両ひざ下を切断し義足で公判へ

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死亡事故を起こす前の佐藤被告。勝どきのタワーマンションに暮らし、派手な私生活を送っていたという
死亡事故を起こす前の佐藤被告。勝どきのタワーマンションに暮らし、派手な私生活を送っていたという

「私としても真相を知りたいという気持ちです。本当に轢(ひ)いてしまったのなら謝罪すべきでしょう。でも、剛(つよし)くんは保釈された今でも『自分じゃないと思う。他の船の可能性もある。事故があればハンドルに衝撃が伝わってくる。10年以上船に乗っているからすぐに分かるはずだ』と、無実だと主張しています」

そう語るのは、猪苗代湖(福島県会津若松市)でプレジャーボートによる死傷事故を起こした土木会社社長・佐藤剛被告(44)の親族の男性だ。’20年9月6日、水上スキーの順番待ちをするために、ライフジャケットをつけて湖面に浮かんでいた豊田瑛大(えいた)くん(享年8)とその母親(36)に佐藤被告が運転する大型ボートが突っ込み、瑛大くんが死亡したほか母親も両足切断の重傷を負った。事故から1年後、福島県警がボートを特定し、佐藤被告を業務上過失致死傷容疑で逮捕した。全国紙社会部記者が言う。

「佐藤被告は逮捕当時から一貫して『身に覚えがない』と容疑を否認していました。しかし、昨年12月27日に行われた初公判では『被害に遭われた方の大切な命を奪い、重大なケガをさせたことは、その通りで認めます。争いません。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。被害者、遺族には深く謝罪をいたします』と一転事故の事実を認めた。ただ、『被害者は見えなかった』と過失については起訴内容を否認しました。当初、逮捕の決め手となったと報道にあった『ヤバい』という慌てた声とともに走り去る動画や口止めをしていた事実は検察の調書になく、存在しなかったと見られています」

義足で公判に訪れた瑛大くんの母親は閉廷後、「(佐藤被告が事故を起こしたことを認めて)とりあえず安堵した」と語った。しかし、話はそう簡単ではない。前出の親族が話す。

「直前まで剛くんは悩んでいました。『謝罪をしたら自分がやったと認めているようなものではないか』と。ですが、弁護士の戦略として、まずは事故を起こしたことは認めて、保釈を勝ち取ろうとしたんです。剛くんは現在、いわき市の自宅に戻り、次回の公判に向けて弁護士と話し合いをし、事故についても『本当にやったのか』と、もう一度、自分なりに調べているところです」

一方、裁判を見守った瑛大くんの両親は検察官の証拠調べで事故の2日後に息子の遺体の一部が見つかった時の様子が述べられると、揃(そろ)って泣き崩れた。閉廷後、父親は報道陣にこう声を震わせ、絞り出した。

「事故当時の凄惨な現場の状況を思い出しました。水に浮かぶ息子を見た時、身体がズタズタに引き裂かれ、すぐに息がないことがわかった。可愛かった瑛大の姿が、なんであんなにならなければならないのか……」

水上事故は道路事故よりはるかに立証が難しい。証拠となるボートについた血痕や毛髪などは水で流され、事故の瞬間を収めた防犯カメラの動画もない。「過失はなかった」という佐藤被告の主張はまさに立証が困難な水上事故を逆手に取った戦略だろう。元東京地検公安部検事で弁護士の落合洋司氏が話す。

「水上での事故なので、現場を特定することも容易ではなく、現場の再現もできません。業務上過失致死傷罪は佐藤被告が運転したボートが被害者を巻き込んだという確実な証拠がないかぎり立証は非常に難しい。佐藤被告に過失の認識があったかどうかで裁判の結果は変わってきます。

接触があったとしても、佐藤被告は水面に浮かぶ被害者を認識できない状況だったと認められたら、無罪になる可能性が高いのです。初公判で一度は起訴内容を一部認めても、刑事裁判ですから、後から『轢いてはいなかった』と認否を変えることもできます」

瑛大くんの両親は「本当に瑛大は戻ってこないと突き付けられた思いです」と悲痛な胸のうちを語っていた。真相が解明される日は来るのか……。

瑛大くんの遺影を抱え、初公判を見守った両親。母親は「今頃、本当ならスノーボードに行っているはずだった」と涙ながらに語った
瑛大くんの遺影を抱え、初公判を見守った両親。母親は「今頃、本当ならスノーボードに行っているはずだった」と涙ながらに語った
事故当日、佐藤被告が運転していたボート。他にも複数のボートが現場で航行しており、特定が難行した
事故当日、佐藤被告が運転していたボート。他にも複数のボートが現場で航行しており、特定が難行した

『FRIDAY』2022年2月25日号より

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