中国メディアがワリエワを過剰擁護する「特殊背景」 | FRIDAYデジタル

中国メディアがワリエワを過剰擁護する「特殊背景」

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ドーピング疑惑が晴れないまま出場し、SPでトップに立ったワリエワ。本日のフリーで金メダルをとったとき、周囲はどんな反応をするのだろうか(写真:共同通信)
ドーピング疑惑が晴れないまま出場し、SPでトップに立ったワリエワ。本日のフリーで金メダルをとったとき、周囲はどんな反応をするのだろうか(写真:共同通信)

北京五輪の女子フィギュアスケートの15歳、カミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会、ROC)はドーピング検査で陽性反応を示しながら異例の判断で出場が認められ、15日のショートプログラム(SP)に出場し、トップに立った。

様々な議論が巻き起こっているが、五輪の開催国・中国の地元メディアは、ドーピング検査を管轄する国際検査機関(ITA)が2月11日にワリエワの検体から陽性反応が示されたことを公表する1日前に、すでにこの「疑惑」について報道していた。

中国・上海の西側に位置する江蘇州・蘇州市の地元メディア『蘇州都市網』は、2月10日付で『ロシアフィギュアの新星ワリエワにドーピング疑惑 いったいどういうことなのか?』というタイトルの記事を掲載した。

その中で、ロシアのプーチン大統領のスポークスマン、ドミトリー・ペスコフの妻でトリノ五輪アイスダンスで金メダルを獲得したタチアナ・ナフカの怒りの声明を掲載している。

「世界反ドーピング機構(WADA)は、ロシア代表団に対して悪意ある挑発を行っている」

検査結果が科学的に公正に行われたのか、ワリエワが本当にドーピングをしたのか、WADAによる陰謀ではないかという疑問を、ナフカは抱いている、という。

さらに、検査結果がなぜこのタイミングで出されたのか不明だとして、以下のコメントも掲載している。

「ワリエワが金メダルを獲得した途端にドーピング疑惑が持ち出され、意図的に拡散された。ロシア代表団の名誉を貶めるものであり、参加するアスリートたちの士気にも影響を与えている」

ナフカが指摘する「検査結果が不透明な形で出された」とは具体的に何についてのことかはサイト上では言及されていない。

さらに、中国共産党中央委員会の機関紙『人民日報』の傘下の『環球網』は15日付で「ワリエワがドーピング事件について初コメント『大会に参加できてうれしい、精神的に疲労した』」という見出しの記事を掲載。これまでの事実を淡々と報道した。

ROCがワリエワの陽性反応が明るみに出た後の11日に発表した「陽性反応が出たのは昨年12月25日で五輪の期間に当たらない」「北京でのドーピング検査の結果はすべて陰性だ」という声明を受ける形で、「スポーツ仲裁裁判所(CAS)は、北京五輪ではワリエワは陰性だったと説明。出場禁止は取り返しのつかない傷を与えるとした。また、ワリエワは(昨年12月の)検査結果の公表が遅れたため、反論の機会を得られなかった」と擁護した。

さらにロシアの地元通信社からの引用として、ドーピング事件についてワリエワの初めてのコメントを掲載。

「大会に参加できてうれしい、精神的に疲労した」
「この一週間は私にとって非常に苦しく、精神的にようやく解放されました。最終判決を知り、幸福の涙がこぼれました」
「国際スポーツ法廷が正確な裁決を下したことを嬉しく思います。北京五輪に引き続き参加し、実力を発揮できるよう全力を尽くします」。

この記事に対する読者のコメントでは「米国の陰謀説」が展開された。ワリエワのドーピングが認められ、ロシアが女子団体戦で勝ちとった金メダルをはく奪されれば、銀メダルの米国が繰り上がって金メダルに輝く、という主張だ。

<アメリカの陰謀は実に陰険だ。K宝(カミラ・ワリエワのKの頭文字を取って、中国では“K宝”と呼ばれている)が個人戦に出場しなくても、金メダルはどのみちマトリョーシカ(=ロシア選手)が取っていただろう。ただ、ワリエワが出場禁止となれば、団体戦はアメリカが上位にあがれる。これが真の目的だろう>

このコメントを追う形で読者による「米国陰謀説」が以下のように続いた。

<なんという闇だろう。国家が一人の少女をいじめるとは。ワリエワは実際非常に強いので、出場すればほかの国にチャンスはなくなるな>

<試合に参加できても、すでにかなりの影響を受けただろうから、優勝の可能性は下がった。事件の発起人の目的は基本的には達成されている>

<法廷が最終的に正確な判決を下したことに感謝したい>

このあたりには中国とロシア、あるいはアメリカとの距離感が影響しているのだろう。いずれにせよ、各国の論調にここまで差があるというのはとても興味深い。

ドーピング検査で陽性反応が出ながら、16歳未満の要保護者であることを最大の理由に出場が認められたワリエワのライバルたちは「フェアではない」「五輪でこういうことが起きて残念」と公然と批判を口にしはじめた。一方、15日のSPでトップに立ったワリエワ本人は、取材エリアでの報道陣の問いかけにも応じず、上位3人が出席予定の記者会見も欠席した。

裁定が「グレー」のままで、ワリエワが無言のまま中国を去るようであれば、国内外で憶測が憶測を呼ぶ今の状態は今後も続くだろう。

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