プーチンが進める「ウクライナ奪取後の長期計画」恐ろしすぎる全貌 | FRIDAYデジタル

プーチンが進める「ウクライナ奪取後の長期計画」恐ろしすぎる全貌

軍事ジャーナリスト/プーチンウォッチャー黒井文太郎の状況分析と警笛

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ロシアのウクライナ侵攻は、入り口に過ぎない。プーチンの「壮大な野望」を解き明かす 写真:REX/アフロ

ウクライナの危機のそもそもは、2021年4月に突如、プーチン政権がウクライナ国境地帯に10万規模の軍の大部隊を進出させたことが発端だ。その後、同年6月にプーチン大統領とバイデン大統領の会談が持たれたが、和解には達せず、地中海での双方の海軍の睨み合いなどが続いた。

そして2021年10月以降、再びロシア軍は10万規模でウクライナ国境に展開する。さらに同年12月にロシア側がいきなり「NATO不拡大の確約」などの要求を持ち出し、緊張が一気に高まったという経緯だった。

勝手な言い分で「自己正当化」をはかる

プーチン大統領はそうした要求を出しつつ、「非はNATO不拡大の約束を守らず、東方拡大してロシアの安全保障への脅威をもたらした米国・NATO側にある」として、欧米側の敵対的な方針がそのまま続けば「軍事的な対抗措置をとる」と脅迫した。なお、ロシアが言うNATO不拡大約束なるものは実在せず、ロシア側が勝手にそう言っているだけだ。

いずれにせよ、こうして最初から「ロシアによって作られた危機」は、ロシアによって緊張状態が高いままに推移し、現在に至っている。

その後、ロシアと米独仏などとの駆け引きが続いているが、ロシア軍はいつでも侵攻が可能な規模の臨戦態勢を維持している。プーチン大統領はその間、要求を取り下げることを一貫して拒否しており、一切の妥協の姿勢を見せていない。

そもそもプーチン大統領は、その野心を隠しておらず、堂々とウクライナや東欧からのNATOの影響力の排除を掲げている。もともとプーチン大統領は冷戦終結からのソ連勢力圏の後退自体を大きな間違いだとしており、勢力圏の回復を打ち出しているのだ。

ウクライナが「重要」な理由

プーチン大統領が手に入れていない地域の中でも、ウクライナは最重要だ。

プーチン政権はメディアやネットを支配して民族主義と西側に対する敵意のプロパガンダを拡散し、国民をいわば「洗脳」して高い支持率を確保し、政権に反対する民主派は内務省部隊などの国家の暴力で弾圧している。

そんなプーチン政権にとっていちばん不都合な事態は、民主主義や人権擁護といった西側の人道主義がロシア国内に浸透することだが、欧州からの民主主義の浸透を食い止める防波堤があればありがたい

地政学的にみれば、その一つがロシア以上の独裁国家であるベラルーシで、同国はとくに一昨年の民主化運動弾圧以来、完全にロシアの影響下に入った。となると、残るはウクライナだ。

ロシアは強引な軍事介入で2014年にクリミア半島を手に入れた。その後、ウクライナ国内世論は急速に反ロシアに傾き、完全に西側を向くようになったが、それはプーチン政権にとってはきわめて都合が悪い。プーチンの利益としては、やはりウクライナ全体をロシアの支配圏に入れることが目標となる。

プーチン大統領は、その機会をずっと伺っていたはずで、2021年に誕生したバイデン政権がアフガニスタン撤退など迷走を示したことで、米国が有効な対抗策を打ってこないことを見越し、今回、勝負に出たということだろう。その結果はまだ出ていないが、いずれにせよバイデン政権は一切反撃できておらず、如何にロシアを宥めるかに終始している。事態はすべてプーチン大統領がコントロールしている。

プーチンの「国家的野心」の源泉は

プーチン大統領は2021年7月にウクライナとロシアの一体性を強調し、域外の国の干渉を拒否する論文を発表した。いわば「ウクライナはロシアの縄張り」だと宣言したようなもので、それは今後、プーチン大統領の行動の自己正当化に使われるだろう。

このようにプーチン大統領の狙いは、単なるウクライナのNATO加盟阻止や、ましてやウクライナ東部の親ロシア派支配地域の自治獲得などには留まらない。もちろんロシアにとってのリスクやコストも計算しながら、狡猾にさまざまな手段を駆使して事態を進めるだろうが、その目標はウクライナ全体の「奪取」にある。

しかも、その野心は単にウクライナ支配だけに留まらない。プーチン政権は中国の習近平政権と急速に連携を深めており、そこに親露派「集団安全保障条約機構」の加盟国であるカザフスタン、アルメニア、ベラルーシ、キルギス、タジキスタン、さらにイランのハメネイ政権、シリアのアサド政権、ベネズエラのマドゥロ政権、北朝鮮の金正恩政権など各地の反米独裁政権を含めた、いわば反民主主義陣営を形成している。

つまり、大きな意味での「西側との戦い」が、プーチン大統領の最大の狙いであり、その最前線が東欧からのNATO影響力排除なのだ。壮大すぎる野心のように見えるかもしれないが、米国が「世界の警察」の役割を放棄し、もう一つの反米仲間である中国が影響力を急速に強化させている今、プーチン大統領にとっては現実的なチャンス到来ということになる。プーチン大統領の戦いは「冷戦の再現」によってロシアを「大国として再建」するための戦いだ。その危険性を過小評価してはならない。

「今ここ」だけが、戦場ではない

2月18日、ロシアが米国とNATOに新たな要求を伝えたことが明らかになった。従来のNATO不拡大確約などに加え、さらにNATOとウクライナの演習の停止や武器供与の停止、バルト3国を含めた中欧・東欧全域から米軍を引き揚げることなど、要求内容はさらにエスカレートしている。

今回、仮に「交渉がこのまま長引く」とか、あるいは「武力衝突が当初は地域限定的な範囲に留まる」などしても、それで終わりではない。プーチン大統領の野望は壮大なものであり、その企ては長期にわたるだろうことを覚悟しなければならない。

  • 取材・文黒井文太郎写真REX/アフロ

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