ドン・キホーテが「驚安テレビ」のヒットを生み出せた根本理由 | FRIDAYデジタル

ドン・キホーテが「驚安テレビ」のヒットを生み出せた根本理由

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ド、ド、ドンキー、ドン・キホーテ、ボリューム満点、激安ジャングル〜。

特色ある店内BGMでお馴染み、大型ディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、ドンキ)が2月10日、2022年6月期第2四半期(21年7~12月)の連結決算を発表した。

この並びを見ただけで行きたくなってしまう不思議…(AFLO)

売上高は9176億8000万円(前年同期比7.6%増)、営業利益は436億4400万円(同11.5%減)、経常利益は445億2300万円(同7.6%減)、当期利益は301億4800万円(同7.6%減)だった。

コロナ禍に苦しんではいるが、ドンキは21年度6月期連結業績で「32期連続の増収増益」を達成するなど、勢いがあることに変わりはない。さらに、ドンキは話題作りに余念がない。先日、「テレビが観れないテレビ」を販売すると、これが「NHKに受信料を払わなくてもいいテレビ」などとネットで話題になり、飛ぶように売れているという。正式名称は「42V型AndroidTV機能搭載フルHDチューナーレススマートテレビ」という。値段は税込3万2780円。通常のテレビから、NHKや民放など一般のテレビを観るために必要なTVチューナーをあえて外してしまったのだ。

ネットフリックスやTVerなど、動画配信サービスしか見ることができないが、機能を落とした分コストも低くなり、同スペックの中国製テレビより1万円以上も安い。「これこそ求めていたもの!」との評判が伝わり、発売から1ヵ月で、初回生産6000台を売り切ってしまったのだ。

環境要因に負けず、勢いを維持する。そのうえ、新たに話題となる新製品を出す。ドンキの魔法はどこにあるのか。

ドンキ躍進の秘密を紐解くにあたって、グループ化した「ユニー」の売り場改革を見ればわかりやすい。標準的な大型スーパーだった「ユニー」が「ドンキ化」して高い収益を持つ売り場に生まれ変わったのだ。

そのための改革とはなんだったか。それは「単品管理」という手法の導入だ。

店をオープンし営業を続けていくと、経営者は「消費者は来てくれて当然」という錯覚に陥りがちだ。オープン当初は「本当にお客さんは来てくれるのだろうか」と真剣に悩んでいた人であっても、お客が来る風景が当たり前になってしまう。

しかし、他のストアも同じような商品をほぼ同じ価格で販売している中、「わざわざ自分の店に来て商品を購入する」には何か特別な「動機」「理由」があるはずだ。それは通勤の通り道であったり、家に近いからという理由かもしれない。

商品ごとに、「これは売れる」「これはもう売れない」と思う理由をしっかりと意識しながら、商品を発注し、売れなかったらその理由を考えていく。

例えば、「明日は近くの小学校の運動会だから、飲料の在庫を増やしておこう」「<10個並べて5個売れた商品A>と<3個並べて3個売れた商品B>では、売れた数ではAの方が多いが、より売れそうなのは売り切れたBだ。明日は思い切ってBをたくさん発注してみよう」など、なんとなく売り場の調子がいいなあ、とは考えず、一つ一つの商品の「売れる理由」をみていく。

この、店舗ごとや季節や天気などでも売れ行きが全く違ってくる、一つ一つの商品を「きちんと売れるかどうか」の仮説と検証を繰り返す手法。これが「単品管理」だ。

ドンキの関口憲司専務は、ユニーがドンキのグループ入りしたときを振り返って「ユニーは、私の目からみると<金鉱脈>にしか見えなかった」として、当時のユニーのもつ大きな課題として「中央集権的なチェーンストア経営をしていた。200店舗を200通りのやり方ではなく、1通りのやり方で200店舗を営業していた」と語っている(2022年2月10日)。そこで、「店舗改革」を実施したのだ。

この店舗改革は、ドンキでは「個店経営」と呼び、店舗ごとの地域ニーズに合わせて価格や商品を選ぶ、ドンキが得意とする経営手法だ。先に述べた「単品管理」に通じる概念である。

実際に、ドンキ傘下になる前の「ユニー」の売り場では、チーズとデザートが混ざって置いてあったが、この「異様さ」を、当時の従業員は気にも留めなかったのだという。それがドンキ傘下に入り、「個店経営」が現場のパート従業員にまで浸透するにつれて、チーズとデザートは分けて置かれるようになった。あらゆる商品は驚くほどの綺麗さをもって並べられるようになったという。

チーズとデザート、同じような商品群に見えても、消費者の立場に立てば、分けて陳列した方が購入しやすいということだ。

革命的テレビ

先述したように、ドンキの最近のヒット商品に、「テレビが観れないテレビ」がある。なんと、テレビからあえてテレビチューナーを外してしまったのだ。アマゾンプライムやネットフリックスなど動画配信サービスしか見ることができないが、機能を落としたぶんコストも安くなり、同スペックの中国製テレビより1万円以上も安い。

さらに受信機能がないので「NHKの受信料を払わなくていい」と評判になった。発売から1ヵ月で初回生産6000台を売り切ってしまった。

実は、この商品は「2代目」なのだ。初代は「高画質でない」「Android OSに対応していない」という点から顧客のニーズを捕まえきれず、販売は低調に終わった。しかし、開発チームの執念の「仮説と検証」が続けられたことによって、本当に必要なものは搭載し、不要な機能だけを削ぎ落とした、2代目の販売に漕ぎ着けたのだ。それが大ヒットにつながった。

結局、ドンキの強さはどこにあるかといえば、「常に消費者の視点から考えること」を徹底し、仮説と検証を繰り返すことにあるのだ。日本総研リサーチ・コンサルティング部門副主任研究員で経営戦略を専門とする浜根圭佑氏は、ドンキの今後について、

「同社は、昨年度の決算で、32期連続の増収増益を記録するなど規模の拡大を続けている。経営の多角化にも果敢に取り組み、スーパーの長崎屋を買収し、ユニーを傘下におさめた。21 年4 月には米国カリフォルニア州において高級スーパーマーケットチェーン『ゲルソンズ』を運営する企業グループの持株会社であるGRCYホールディングスを子会社化。コロナでインバウンド需要が消滅したが、既存店の売上高減少を、店舗数の拡大によってカバーした格好だ。今後の同社は、<TVチューナーを外したテレビ>のような魅力があり、かつ利益率の高いPB商品をいかに拡充できるかが成長戦略への鍵となるはず」

と話す。

ドンキの快進撃はどこまで続くのか。消費者の期待が集まっている。

  • 取材・文小倉健一

    ITOMOS研究所所長

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