強気の設定!DAZNが突如「料金1000円アップ」した真の狙い | FRIDAYデジタル

強気の設定!DAZNが突如「料金1000円アップ」した真の狙い

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
2月1日、ワールドカップアジア最終予選・サウジアラビア戦で代表戦4試合連続ゴールを決めた伊東純也やアシストした長友佑都ら。3月24日、オーストラリア戦でこの光景がみられるかどうかにDAZNの今後がかかっている(写真:アフロ)

スポーツ専門の定額制動画配信「DAZN(ダゾーン)」が、2月22日から本会員に対して月額料金の約1000円値上げをスタートさせた。新規加入者への1か月の無料体験サービスも廃止。これまで月額1925円(税込)からほぼ1.5倍となる3000円という価格設定が大きな波紋を呼んだ。

値上げのキーポイントは「サッカーの森保ジャパン」

英ロンドンに拠点を置くDAZNは2016年、自国で行われるサッカープレミアリーグの放送で日本での配信をスタート。その年の7月に2026年までの10年間で総額約2100億円の放映権契約をして話題になった。

翌2017年からは明治安田生命Jリーグの全試合配信をスタートさせ、6年目を迎えた今年は現時点でプロ野球やモータースポーツなど10競技に加え、eスポーツやドキュメンタリーなども視聴できる。

今回の値上げは、他の配信媒体と比較しても12000以上ある圧倒的なコンテンツ数から「月額3000円が適正価格であろうと判断した」(DAZNジャパン・山田学エグゼクティブバイスプレジデント)。この強気の値上げの〝本当の狙い〟はいったい何か。

スタート当初はわずか4か国だった配信も現在は200以上の国の提供に拡大したDAZN。今年1月25日に唐突に発表された値上げだが、実際は違う。綿密な計画があったものと推測される。多くの民放関係者が「3月24日を〝意識〟した値上げに他ならない」と断言する。

では「3・24」とは何の日か。それはサッカーW杯カタール大会アジア最終予選・オーストラリア戦(シドニー)が行われる日だ。キックオフ時間は日本時間の18時10分からである。TVの地上波なら19時から22時までのゴールデンタイムで放映できる。今回のアウェー戦はDAZNとアジアサッカー連盟(AFC)が2028年までの放映権契約を結んだことで、地上波では一切放送がない。

「最終予選開幕前からアウェーの3・24(オーストラリア戦)が出場権決定試合になるというのが、我々テレビマン大方の予想でした。森保ジャパンは絶対に落としてはいけないホームの開幕戦を落として苦戦しましたが、5連勝でこの試合に勝てばW杯出場が決まることになった。

仮に地上波放送があったなら、TV視聴率が厳しくなったとはいえ、30%近い数字は見込めるでしょう。その数字を見込めるのであれば、事前にスポンサーに営業しに行った際も、大幅に値段をあげて売ることが可能になると思いますよ」(民放関係者)

DAZNにとっては「3・24決戦」を見据えて、加入者の大幅増加とそれに伴う収入増を睨んでの値上げの可能性が高い。そのタイミングを4年に1度のW杯出場決定試合にぶつけてきたわけだ。

今年1月、DAZNは2021年の加入者の視聴動向を発表した。「ライブコンテンツの視聴ランキング」では、なんとトップ5までが今回のW杯アジア最終予選だった。それも1位のベトナム戦(昨年11月11日)から4位のサウジアラビア戦(同10月8日)まで、DAZNが独占放送するサッカー日本代表のアウェー戦がずらりと並んだ。

DAZNは世界での総ストリーミング時間が年間10億時間近くにもなり、その2.2億時間以上が日本でのストリーミング時間だったことも発表。スポーツ配信における購買意欲も業界トップと胸を張った内容だった。強気の値上げを行っても十分行けると確信したデータが揃った。

気になることがある。加入者数だ。DAZNはスタート当初から加入者数を対外的には「トップシークレット」としてきている。ちなみに2007年から10年間、Jリーグ放映権を所有していたCS放送のスカパー!は「Jリーグの視聴目的の加入者は20〜30万人で推移していた」(Jリーグ関係者)。

2017年8月29日の記者会見では、DAZNのジェームス・ラシュトン最高経営責任者(CEO)(44)が「日本での加入者数が1年で100万人を突破した」と明かしている。2018年3月19日、NTTも「DAZN for docomo」(月額1950円)の契約数が100万人を突破したと発表した。

そのNTTも「DAZN for docomo」も4月18日以降の新規契約者を対象に月額3000円に値上げすることを発表した。DAZNが値上げした2月22日の1日前に公式発表されるという不可解さだった。(DAZNは「各社パートナー様によって価格改定に関しての発表はそれぞれ異なります」と返答)

 

2016年7月20日、JリーグとDAZNが10年間の放映権契約を締結したときの会見。右端は鵜浦博夫・NTTGroup代表取締役社長(当時、写真:アフロ)

複数の関係者の話を総合すると「DAZNの日本での加入者数獲得目標は約300万人、現在確実に到達しているのは150万人程度」ではないかと思われる。この推定が合っていれば、300万人が加入すれば損益分岐点に到達するが、現状では半分しか到達していない、ということなのだという。

DAZNがJリーグと結んだ、2017年から2026年までの「10年間総額約2100億円の放映権契約」は話題になった。ところが先行投資がかさみ、大幅な赤字を計上。さらに追い打ちをかけるようにコロナ禍によるスポーツイベントの中断などがあり、2020年にはJリーグとの契約期間を2年延長、12年間総額約2239億円に変更した。2017年に最初に契約を結んだ当初は3年間の放映権料を定額として支払う方式から、毎年一定額を支払う契約に変えた。

契約期間こそ2年間延長しているが、年間の契約金額は最初に結んだときの210億円から約187億円と1年間あたり単純計算で23億円減っている計算になる。ここにDAZNのジレンマが見え隠れする。

だからこそ、加入者数の増加が見込める3月24日の前に値上げを図ったのだろう。ちなみに、今回の値上げで仮に月額3000円を支払う本会員数が、2017年に最高経営者のラシュトン氏が明かした100万人で推移できれば、1か月あたり単純計算で30億円。関係者の間で囁かれている「加入者数150万人」が値上げの前の月額1925円で視聴していたと仮定した場合、1か月の収入は28億8750万円となり、仮に加入者が50万人減ったとしても収入は増える計算になる。

ただ、値上げが施行される数日前の2月18日、DAZNのサイト内に以下のような記事があがった。DAZNの筆頭株主である「Access Industries」がDAZNに対して43億ドル(約4980億円)の資本増強を発表した、というものだった。

記事を読み進めていくと『Access Industries」は追加で2億5000万ドル(287億ドル)の新株を引き受けたことになっている。これだけの豊富な資金がありながら、それでもDAZNはなぜ、値上げを断行して契約者(加入者)からの支払いを求めたのだろうか?

DAZNに問い合わせると、以下のような回答が返ってきた。

「2016年ローンチ当初より最初の5年間は投資期間と掲げてまいりました。この期間、値上げは行っておりませんでした。しかし、この間、Jリーグ全試合配信を始め、プロ野球11球団、F1、プレミアリーグ、2021年にはW杯アジア最終予選を含む14のAFC大会などのプレミアスポーツコンテンツが追加されました。そして、6年目に突入したDAZNジャパンは、日本のファンの皆様により良いスポーツ視聴体験をお届けするために、尽力してまいります」

DAZNが今回値上げを行った理由のひとつは、「先行投資の期間は過ぎた」ということなのだろう。そして今後はそれを〝回収〟する段階に入ったと言える。

DAZNは主軸コンテンツのひとつだった、英・プレミアリーグの放映権契約を更新できず、今季で終了になる。かわりに韓国の定額制動画配信サービスを行う「エクラ・メディア・グループ」が日本を含むアジアの放映権を獲得したという。

英紙『デイリー・メール』は、来季からプレミアリーグのアジア向けを含む海外放映権料の総額がなんと最大53億ポンド(約8325億5000万円)になったと報じた。より良いコンテンツを作るために、この世界でも巨額なマネーを動かす“戦争”が起きているのだ。

したがって、DAZNは日本の市場において、月額の値上げをしたことによる、加入者数の落ち込みを最小限に食い止め、新しい展開にトライできる資金を集めるためにも、まずはサッカー日本代表にW杯に行ってもらうことが最低条件、と考えているだろう。

繰り返しになるが、DAZNの昨年度トップ10の上位4位までを占めたのがサッカー日本代表のアウェー戦。7大会連続のW杯出場をかける日本代表が万が一、本大会出場を逃すようなことが起きれば、DAZNにとってはキラーコンテンツのひとつを失うことになる。3月24日のサッカー日本代表の勝敗だけでなく、それに伴う自社コンテンツへの加入者数の変化についても、かたずを飲んで見守っているはずだ。

Photo Gallery2

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事