VIPだけ暖房、放置ゴミの山…北京五輪「閉会式」ヒドすぎる裏側
国際線並みのボディチェックに、会場に放置されたゴミの山……
日本勢として過去最多のメダルを獲得して幕を閉じた北京冬季五輪。しかし、それ以上に不可解なジャッジやドーピング疑惑など、負の部分が大きくクローズアップされてしまった五輪だった。
2月20日に行われた閉会式も、テレビに映らない部分では様々な歪みが存在していた。同日午後3時、記者は北京市内にあるメディアセンターから、閉会式の会場となる「鳥の巣」へ向かった。五輪関係者用のタクシーなどでは向かうことはできず、全員がシャトルバスへ乗車する。
乗車前に北京市警による手荷物検査とボディチェックを受ける。報道陣は滞在先のホテルでも事前に検査を受けているので、「二重チェック」となる。手荷物を専用の機械に通し、金属探知機で全身をチェックされたあと、コートのポケットなどを手で触って確認された。飲み物も目の前で飲むように指示され、モバイルバッテリーの持ち込みも禁止だという。国際線の搭乗並みの厳格さだった。
メディアセンターから鳥の巣はバスでわずか10分ほど。閉会式のスタートは現地時間で午後8時からにもかかわらず、メディアセンターからの最終バスは午後5時すぎだった。
「VIPが会場に入る前に、すべての人間を会場に入れて安全を確認する必要があるのです」(全国紙記者)
すべてVIP優先ということだ。現地の気温はマイナス1度。鳥の巣は密閉型の会場ではないため、寒風が常に吹き込んでくる。数少ない休憩スペースは、暖を求めて多くの人でごった返していた。
鳥の巣にはボランティアやチーム関係者もぞくぞく入って、休憩スペースなどの暖かい場所に密集していた。これではいくら他の場所で感染対策を行っても、一発でクラスターが起きるのではと感じた。
こうした状況は2月4日に行われた開会式でも同様だった。多くの人が休憩スペースに殺到し、帰りのバスもまったくこない。ようやくバスがくると、人が押しかけ満員電車のような状態になる。そうした「密」な状態があちこちで起きていたのである。
ほかにも開会式会場では、あちこちに段ボールのゴミの山ができていた。スタッフやボランティアたちの食事を入れていた段ボールだったのか、すぐ近くではスタッフたちが地べたに座って食事をとっていた。開始まで2時間ほど前のことで、スタジアムの席にはいくらでも空きがあるのに、使用が許可されていないようだった。
開会式でも閉会式でも、もっとも会場が盛り上がったのは習近平国家主席が入場したときだった。ステージのダンサーたちが一斉にVIP席に向かって手を振り、観客席からも大きな歓声と拍手があがった。
「鳥の巣の観客席には基本的に暖房などは設置されていませんが、VIP席があるゾーンにだけは取り付けられていました。その熱で、VIP席の真上に位置する席でもかなりの暑さを感じたほどでした」(同前)
習近平国家主席とIOCのトーマス・バッハ会長が会場に向かって手を振ると、またも観客席からは大きな歓声が起きた。記者席の中国人記者も小さな国旗を振って、快哉を叫んでいた。
閉会式が幕を閉じ、再び満員バスに詰め込まれて帰途についた。
バッハ会長は閉会式のスピーチで「ありがとう、中国の友人の皆さん」と、中国に向けて感謝の言葉を述べた。いったい誰のための五輪だったのか。アスリートやファンが置き去りになった気分が、最後までぬぐえない五輪だった。
- 撮影:日本雑誌協会(1、5、6枚目)