犯罪学者が指摘!「スマホカンニング事件が起きた本当の背景」 | FRIDAYデジタル

犯罪学者が指摘!「スマホカンニング事件が起きた本当の背景」

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多様性を大事にし、社会問題にも関心が高いZ世代

冬季五輪で日本は過去最高のメダルを獲得。フィギュアスケートの鍵山優真、宇野昌磨、坂本花織、スノーボードハーフパイプで平野歩夢、冨田せな、スノーボード・ビッグエアで村瀬心椛……彼らはみんなZ世代だ。

Z世代とは、1990年代後半から2015年に生まれた、いわゆる〝デジタルネイティブ″と言われる世代。

もちろん、大舞台で緊張もするだろうし、プレッシャーも感じているだろうが、彼らの演技を見ていると、伸び伸びと、楽しんでいるように思える。インタビューでも堂々と受け答えしている。

「ケガをしちゃったとか、失敗も話しますよね。自分のことを素直に表現できるのが、すごいなと思います」 

こう言うのは立正大学犯罪学教授の小宮信夫氏。

Z世代が大活躍した北京五輪(写真:アフロ)

「Z世代全員にあてはまるわけではないけれど」と、前置きをしたうえで、

「Z世代の大きな特徴は、多様性を重んじることです。僕らはテレビ世代で、チャンネル数も限られていたけれど、ネットには無限にチャンネルがある。翻訳ソフトを使えば、いくらでも海外の情報を知ることができる。 

情報が少なければ、『こうするべきだ』『こうあるべきだ』と考え方が画一的になりますが、たくさんの情報に接していれば、多様性を持つことができる。 

人と同じである必要はない、自分は自分と思っているから、ケガをしたことも、失敗したことも、ありのままの自分を見せることに抵抗がないのでしょう」(小宮信夫氏 以下同) 

多様性を大事にしているから、LGBTやSDGsにも関心が高い。

「これからの世界を生きていくわけだから、将来、世界がめちゃくちゃになるのを避けたいという意識も高い。だから、環境問題などにも関心が高いし、正義感も強い」

その一つの表れが、電車内で喫煙していた男に高校生が注意し、逆に殴られてしまった事件だ。

「社会問題にも決して無関心ではない。僕は犯罪学を教えていますが、ゼミの中にはLGBTやホームレスを卒論のテーマにした学生もいます」 

「現在の試験で試されるのは『記憶力』。頭の中のハードディスクの容量をチェックしているようなものです。けれど、今や必要な情報・知識は自分の外にある『外付けハードディスク』に保存しておける」と小宮教授(写真:アフロ)

Z世代と合わない「昭和な受験システム」が事件を生んだ 

社会問題に関心があるというけれど、選挙の投票率はなかなか上がらない。これはどうしたわけなのか?

「おそらく今の選挙システムにあまり期待していないのでしょう。ネット時代に、わざわざ投票所まで行って、紙に名前を書くということに違和感があるのかもしれませんし、そもそも選挙で政治家を決めて、それから……という従来の政治システムに頼らなくても社会は変えていけるんだと考えているのではないかと思います」

起業する若い人が増えたのも、その流れの一つだとか。

多様性を認め、LGBTやSDGs、環境問題などにも関心が高く、しかも、自分は自分と主体性を持って生きている。素晴らしいじゃないか、Z世代!

しかし、先日、東大弥生キャンパス前では受験生たちを死傷する事件が起きたし、SNSを利用してカンニングを行った事件もあった。これらも犯人はZ世代。

「これらの事件に共通する背景に、Z世代に昭和の受験システムが合っていない事実があると考えています。 

現在の試験で試されるのは『記憶力』。頭の中のハードディスクの容量をチェックしているようなものです。 

けれど、今や必要な情報・知識は自分の外にある『外付けハードディスク』に保存しておける。さらに、保存しなくても、いつでもクラウドの情報を利用できる。なので、自分の頭にある『内蔵ハードディスク』に情報を詰め込む必要はないんです。

これから求められるのは、より早く、より的確に情報を入手する『検索力』、それを説得力ある主張に仕上げる『編集力』、そして、まだ見ぬ価値を生む『創造力』です。今のような受験システムでは、それらの潜在性を測定できません」

いい学校に入って、いい会社に入社したり、官僚になることがエリートコースと言われていたが、それも今は昔。やりたいことがあれば起業してもいいし、医師になりたいなら、画像診断やロボットを使った手術などテクノロジーを使った医学の分野を考えてもいい。Z世代にふさわしい道を提案できなかったことが事件の根源にあるという。

「SNSを使ったカンニングにしても、ワイヤレス通信できるカメラを搭載したコンタクトレンズが普及するのは時間の問題です。それ以外にも、眼鏡で撮影したり、体内に埋め込んだマイクロチップで通信したりするようになるでしょう。それらすべてを防ぐのは不可能です」

実際、スマホを使ったカンニングは、これまでにもあり、東京工業大学では、電源が入っている携帯電話がある位置を特定するシステムを開発したというが、完全に防ぐのは困難になっていくだろう。 

「かといって、外部とのワイヤレス通信を遮断すると、災害時などの危機対応に支障が生じます。デジタル時代にふさわしい新しい受験システムを検討する時期にきていると思います」 

不正行為が後を絶たない中国の大学受験「高考」。写真は、試験会場に設置されたワイヤレス検出システム(2017年中国河南省・写真:アフロ)
2013年に中国・遼寧省瀋陽市の大学受験会場で押収された隠しカメラ付きのコインと受信機を備えた眼鏡。まるで007!(写真:アフロ)

学びたい人が、学びたいときに、学びたい人から学べる時代に…

小宮氏が考える受験システムは?

「受験もそうですが、大学も変わっていく必要があるでしょう。なぜならオンライン授業であれば、翻訳ソフトを使って、世界中の教授から話を聞けるから。みんなが同じ時間に同じ場所に集まって、長時間じっとしながら一方的に話を聞くというのは、レトロな授業形態になるかもしれません。 

学びたい人が、学びたいときに、学びたい人から学べばいいのではないでしょうか。 

あとは、友だちや先生に直接会いたくなったときのためにサロンみたいなものを大学に作っておけばいい。対面授業の長所とオンライン授業の長所をそれぞれ伸ばし、その『すみわけ』がうまくいった大学が勝ち残るでしょう。 

今や有名な学者からタレントまで、個性豊かな人がYouTubeで講義をしているから、入門編から最先端の研究まで、楽しく面白く勉強することができます。

そういう意味でいえば、東大弥生キャンパス襲撃事件は、記憶力に偏った受験システムやそこから出発する学歴社会がターゲットだったのかもしれません。今後は、スマホやタブレットを駆使して解答する試験方式にシフトしていくと思います」 

いまは、世界のどこからでもTED等でビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズの講義をいつでも聞くことができる時代だ(写真:アフロ)

電気自動車や蓄電池などを手掛ける「テスラ」と、宇宙開発を担う「スペースX」を率いるイーロン・マスクの持論は、「自分が楽しめ、エキサイトできることがなければ、何も身につかない」。

「脳科学でも、楽しいことは記憶に定着するけれど、楽しくないことは定着しないと言われています。教師は、学ぶことは楽しいということを教えるだけでいいんです。そうすれば、あとは勝手に勉強しますから」 

Z世代が社会の中心になったとき、今までの社会システムはどんどん変化していくのだろうか。ちょっと楽しみだ。

小宮信夫 立正大学教授(犯罪学)。社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。本田技研工業情報システム部、国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。第2種情報処理技術者(経済産業省)。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。

代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材、全国各地での講演も多数。

HP・YouTube チャンネル「小宮信夫の犯罪学の部屋」はコチラ

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  • 取材。文中川いづみ

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