「ヘリ婚」民間ヘリとブライダルがコロナ禍でタッグを組んだ背景 | FRIDAYデジタル

「ヘリ婚」民間ヘリとブライダルがコロナ禍でタッグを組んだ背景

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一見バブリーだけど…

“なし婚”が加速する中、それでも結婚式を挙げたいと願うカップルは多い。けれどコロナ禍では会場の収容人数など規制も厳しく、なかなか思い通りにならないのが現状。「だったら広い空で密を気にせず、心に残るふたりだけの結婚式をしてほしい」。そんな思いで誕生したのがヘリコプター内結婚式、「ソラマリ」だ。

この結婚式、実はウエディング・プロデュース会社の老舗、オフィース・マリアージュと一般財団法人国際災害対策支援機構のコラボ企画で、“カップルがヘリを使って結婚式をすると災害対策支援につながる”という。

いったいなぜそういうことになるのか。国際災害対策支援機構に聞いた。

セレブのウエディング? いいえ災害救助です…(写真:オフィース・マリアージュ)
セレブのウエディング? いいえ災害救助です…(写真:オフィース・マリアージュ)

災害大国・日本なのに、民間ヘリを降ろせる場所は圧倒的に少ない

同機構では全国自治体との協定のもと、有事に備えて訓練を行い、全国の首長で構成される「空の駅勉強会」の事務局を担当。また、慶應義塾大学などさまざまな研究機関と共同研究を進め、ヘリコプターとドローンを併用した空からの災害対策支援を推進している。

災害時にはよく“自助・共助・公助”と言われるが、同機構が行っているのは共助の部分になる。

「災害時、公助の部分では消防、警察、自衛隊の3つが共同して動きます。それぞれに管轄があり、自治体からの要請があって初めて出動となるのですが、災害時には自治体も被災しているわけです。

災害時に大切なのは発生から72時間の対応。人の生死を分けるその72時間に、被災自治体は署内の流れを復興させるのがせいいっぱいということもあります。その間に民間にできることは何か、自治体との事前の連携構築をテーマに活動しています」(一般財団法人国際災害対策支援機構 以下同)

なるほど! 自治体が体制を整えて再始動可能になる前に、たとえばヘリで上空から地域全体を撮影して被害状況をマップ化しておけば、すぐに救助に結びつけることができる。必要であれば医師を怪我人のもとに運ぶことだってできるのだ。でも、それと結婚式に一体なんの関係が?

「初めての場所に着陸する際には国土交通省航空局に着陸申請を出し、許可が出ると登録されます。一度登録すると、更新さえしておけば、いつでも降りることができるようになるんです。災害時は後日申請でよいのですが、初めての場所で着陸できるポイントを探し、土地の所有者の同意を得るのは困難です。現状、民間ヘリを降ろせる場所は圧倒的に少なく、なんとか平時に増やしておくことができたら…」 

だんだんわかってきましたよ。ソラマリは「二人が希望する場所の上空で式が挙げられる」というのが最大のメリットなのだ。初めて出会った場所だったり、実家や新居の上空でもOK。たとえばカップルどちらかの出身小学校の上空で結婚式をして、そのまま校庭に着陸し、思い出の校舎などで記念撮影をすれば、カップルは心に残る思い出が作れるし、同時に緊急時の民間ヘリの離発着地点も確保することができる。

「同機構は自治体と連携していますので、例えばIターン、Uターン活動に力を入れている自治体さんと共同で、地元に戻って来られる出身者の方や、地元在住の方のウエディングをヘリ婚で支援しましょうというプロモーションも始めています」

熱海を襲った土砂災害でも力を発揮したブライダル業界とのタッグ

「ソラマリは去年スタートしたばかりなので、ヘリを降ろせる場所はまだ数ヵ所です。けれど、これがある程度周知し出して“うちでも取り扱いできそうです”と言ってくださるホテルさんなどが出てきてくれたら、その敷地内に着地場所を探し、拠点を増やしていくこともできます」

実際に去年、熱海で発生した土砂災害では、同機構がオフィース・マリアージュに「熱海でヘリを降ろせる場所を知りませんか?」と問い合わせ、何軒かのホテルを紹介してもらったという。その中から、以前ヘリを降ろしていた経験があるホテルが見つかり、そこを拠点に活動することができた。 

2021年7月、関東・東海を襲った記録的豪雨による熱海での土砂災害。この時、報道関連以外の民間ヘリで現地活動を行なったのは、同機構だけだった(写真:アフロ)
2021年7月、関東・東海を襲った記録的豪雨による熱海での土砂災害。この時、報道関連以外の民間ヘリで現地活動を行ったのは、同機構だけだった(写真:アフロ)

計100ヵ所のヘリポートが作れたら、全国どこでも燃料補給が可能に!

ブライダル事業者は全国のホテルや式場の情報を豊富に持っている。そして大抵のホテルや式場には広い駐車場がある。そこを観光と防災のヘリの拠点として使うことができれば、平時には各施設で遊覧や送迎にヘリが活躍し、パイロットもスキルアップできる。

「きっかけは災害だったかもしれませんが、それが縁で復興のために利用展開していただけたら嬉しい限りです。

ほかに、今お願いしたいのはキャンプ場なんです。キャンプ場は火が使えるので調理ができますし、キャンプ用品は全て災害時に活かせます。たとえば72時間は無料開放するなどといった協定を結び、そこにヘリで物資や医師を運ぶこともできます」

同機構の今の目標は、まずは“場外”と呼ばれるヘリコプターの離発着ポイントを全国に100ヵ所設置すること。次の目標は、そこを管制があって人が常駐し、格納庫もあるヘリポートに拡大していくことだ。修理や燃料の補給を現地で行うことができれば、空からの共助はさらに大きな力になる。

そのためには今、ぼんやりと結婚を考えているそこのあなた! 今こそあなたの出番です。なし婚などと言ってないで、どんどんヘリで結婚式をしてくださいね。

災害時に火を使うことができるキャンプ場。「炎は被災した人たちの心を和ませてくれる効果もあります」と機構(写真:アフロ)
災害時に火を使うことができるキャンプ場。「炎は被災した人たちの心を和ませてくれる効果もあります」と機構(写真:アフロ)

一般財団法人国際災害対策支援機構 空からの災害対策⽀援を⽬的とした「技術⼒・開発⼒強化推進⽀援事業」と「寺社活用文化向上支援事業」の2つを柱に活動。災害対策にヘリコプターとドローンを活用するための環境整備、各所研究機関との実践研究、災害対策に関わる産学官連携事業、災害対策技術革新に取り組んでいる。

国際災害対策支援機構のHPはコチラ

「ソラマリ」(オフィース・マリアージュ)のHPはコチラ

  • 取材・文井出千昌

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