世界が視線を注ぐウクライナ大統領の「意外な素顔と手腕」 | FRIDAYデジタル

世界が視線を注ぐウクライナ大統領の「意外な素顔と手腕」

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「敵は私を第一の標的に定めた」

ウクライナのゼレンスキー大統領(44)は2月25日のビデオ演説で、厳しい表情でこう訴えた。

米国紙『ワシントン・ポスト』によると、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻で最大の目的とするのが、傀儡となる親ロ派による政権の樹立だという。そのために反発的なウクライナの政治家や学者をリストアップ。ゼレンスキー大統領は、最大のターゲットとされる。

「ロシアが目論んでいるのは、ゼレンスキー政権を転覆させる『斬首作戦』です。プーチン大統領は親ロ派の住民を虐殺しているとして、ゼレンスキー氏をナチスドイツのヒトラーになぞらえています。ウクライナ軍兵士に対しては、『権力を奪取してロシア側についてほしい』と訴えている。

ゼレンスキー大統領は、したたかに対応しています。米国のバイデン政権は暗殺者の存在を示唆し、ゼレンスキー大統領に首都キエフから逃れるよう勧めたそうです。しかしゼレンスキー大統領は現地にとどまり、『土地、国、子どもを守る』と徹底抗戦の構え。一方で2月27日にはロシア側との協議を行うと表明し、対話姿勢もみせています」(全国紙記者)

現実になった大ヒット主演ドラマ

陽気な性格でバラエティ番組の人気者だった
陽気な性格でバラエティ番組の人気者だった

世界から言動が注視されるゼレンスキー大統領。その経歴は異色だ。78年1月、ウクライナ東部のドニエプロペトロフスク州出身。大学教授の父と技術者の母のもとで生まれた。

「快活で頭の良い子どもだったそうです。冗談を言っては、周囲の人を笑わせる。13歳の時には、ウクライナ代表としてロシアのバラエティ番組に出演しています。

高校卒業後は、ウクライナの名門キエフ経済大学に入学しました。法律を専門にしていましたが、お笑いの才能があることを自認して、卒業後は自身で立ち上げた『第95街区』というコメディ集団を結成。台本、脚本、番組制作なども手がけトップお笑いタレントになったんです」(同前)

転機となったのが、15年にウクライナの国営テレビで放送されたドラマ『国民の僕』だ。同ドラマで、ゼレンスキー氏は大統領に就任し、ユーモアも交えながら政界の汚職や不正と対決する素人政治家を好演。国民的な人気を得る。

「ドラマと国民の人気に押され、ゼレンスキー氏はドラマと同名の政党を立ち上げ、『作品の続編を現実にする』と実際に大統領選出馬を表明。19年4月、得票率70%以上の圧倒的な強さで、第6代大統領に選出されます。当時41歳の若さです。同年10月には来日し、赤坂の迎賓館で安倍晋三首相(当時)とも会談しています」(同前)

大統領選に当選し夫人と熱いキスをするゼレンスキー氏(画像:アフロ)
大統領選に当選し夫人と熱いキスをするゼレンスキー氏(画像:アフロ)

就任当時の支持率は70%超。だが、政治経験のないゼレンスキー氏にとって、大統領という役職は当初は重責だったのだろう。ほころびが露呈する時期もあった。東ヨーロッパ情勢に詳しい、筑波大学の中村逸郎教授が語る。

「ゼレンスキー大統領のつまずきは、主に2つあります。1つ目は、自身が立ち上げたコメディ集団『第95街区』の映像メディアスタッフを政権の中枢に据えたこと。政治の素人たちの集まりで、パフォーマンスが優先し、行政の現場では実績をあげられませんでした。

2つ目が、昨年11月に定めた財閥解体についての法です。政権が成果を出せないため、政治的な影響力を持つ財界人が反発を始めます。ゼレンスキー氏は政治に口出しする彼らを遠ざけたために、財界と政界の対立が、決定的になってしまったんです」

国内は混迷し、ゼレンスキー大統領の支持率は19%ほどにまで低下する。「ウクライナはロシアと同じ民族」と考えるプーチン大統領にとっては、介入する絶好のチャンスと映っただろう。ゼレンスキー大統領の政治により、「困窮する親ロ派の国民を助けるため軍事行動を起こさなければならない」という口実を与えてしまったという側面を指摘する分析もある。

だが、危機は人を変える。ゼレンスキー大統領は「決して逃げない」「皆さんとともに戦う」という勇気づけられるようなメッセージを次々に発信しつつ、国民の命を守るためロシア側との交渉姿勢もみせ、外国諸国から称賛をえている。ウクライナだけでなく世界の支持を背景に、ゼレンスキー大統領は国難を乗り切ることができるだろうか。

大統領選挙期間中は卓球などで庶民派をアピール
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19年10月、夫人と来日した当時の写真
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ロシアの侵攻に対しては徹底抗戦をアピール。表情が以前とはまったく違う
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  • 写真ロイター/アフロ AFP/アフロ

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