英断!岸田の電光石火「ウクライナ戦争難民受け入れ」の舞台裏
国内外の称賛と「さすが宏池会」の声も
岸田首相は2日夜、首相官邸で会見し、ロシアの軍事侵攻でウクライナから逃れた難民を「日本に受け入れる」と表明した。
この日18時過ぎから、ドイツのシュタインマイヤー大統領とおよそ30分間の電話会談を行った岸田首相は、続けて19時過ぎからポーランドのモラウィエツキ首相との電話会談が予定されていた。
この間、わずか20分。この時間に、秋葉剛男国家安全保障局長、神田真人財務官、外務省の山田重夫、鈴木浩両外務審議官、宇山秀樹欧州局長、保坂伸資源エネルギー庁長官らと相次いで協議し、「即時対応事案」の指示を矢継ぎ早に飛ばした。
そうして、「難民受け入れ」の準備を進め、モラウィエツキ首相との電話会談で「受け入れ」を表明したのだ。
政権発足以来、「判断が遅い」「存在感が薄い」と言われ続けた岸田首相の見事な「英断」だった。
モラウィエツキ首相と電話会談で、岸田首相はこのように切り出したという。
「我が国はポーランド国民、EU諸国と連帯し、ロシアのウクライナ侵攻は断じて許さないことを表明します。そして、避難民を受け入れた各国には必要な経済支援と、ウクライナの戦争難民を我が国においても受け入れる態勢を整え、いつでもチャーター機を出せる準備をしました」
この力強い言葉に、驚きとともに、国内外から賞賛の声が上がった。
関係各方面へ電光石火の「確認」を
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のケリー・クレメンツ副高等弁務官は、ロシアの侵攻後1週間足らずで、「70万人近いウクライナ人が戦争避難民となった」と発表している。現状、その大半をポーランドが受け入れている。岸田首相は、そういった周辺国への支援も行うと表明した。
岸田首相は、ウクライナ戦争避難民受け入れは「現行の入管法でできる」こと、「入国者上限枠を超える受け入れが可能」であることを確認して、法務省、国交省、外務省へ、即時対応をするよう、極めて迅速な判断と指示を発していた。
平和を希求する宏池会の存在意義
ポーランドのモラウィエツキ首相は、
「日本の支援に対して最大級の謝意を表明したい」
と感謝の意を述べたという。自民、宏池会の幹部議員は胸を張ってこう語った。
「岸田首相は、自民党ハト派の保守本流政権として、平和を希求する宏池会という政治集団のあるべき姿を示した。面目躍如だ」
そして、岸田首相は言った。
「毎日毎日大量の難民が発生している。できるだけ早く戦争避難民の受け入れ手続きを進める」
世界の危機に「当たり前のこと」かもしれない。日本の難民対応は深刻な問題が多い。けれどもこれは、日本にとって大きな一歩だ。条件を付けずに難民受け入れを表明したのは、岸田首相が初めてなのだから。
取材・文:岩城周太郎写真:代表撮影/ロイター/アフロ