プーチンにはウンザリ……反戦デモに参加する「ロシア人の本音」
渋谷駅に降り立つと、真っ先にウクライナ国歌が耳に入ってきた。
ロシアのウクライナ侵攻から2日後の2月26日、日本在住のウクライナ人、約2000人が駅前広場に集まり、戦争反対デモを行っていたのだ。ウクライナ国旗のツートンカラーが覆い、そこには「プーチンは殺人者だ」「ナチスの復活」という激しい字が踊っていた。なかには、「ウクライナを救って」というプラカードを持ち、記者を見つめる幼い子供の姿もあった。


デモに参加した首都・キエフ出身のキイロバ・クリスティーナさんは、記者が話を聞いている最中にもウクライナの従兄弟と安否の連絡をとり、何度もため息をついた。
「両親には『1時間ごとに連絡をしてくれ』と言われています。毎回、電話をすると『3時間しか寝れていない』と、心身の疲労を訴えていて、心配でたまらない。日本から会いに行きたいけど、ウクライナに行く飛行機がない。会いたくても会えないのが悔しい。コロナの影響もあり、3年以上会えていないうえに、こんなことになるなんて……。
今年の3月で50歳になる父親は『今の状況が耐えられない』と言って武器を取り、予備軍に参加しています。父親はそもそもウクライナ国籍ではなく、ブルガリア国籍なので、参加必須ではないのに自分の意思で志願した。私は父親の事を応援していますし、父親のように勇敢な人が沢山いれば少しは状況も変わるかもしれない。でも、心配で耐えられない気持ちが大きいです」

記者を驚かせたのは、たくさんのロシア人がデモに参加していたことだ。その中の一人、アナスタシアさんは「ウクライナの人々に申し訳ない」という言葉を何度も口にした。
「ウクライナ人の友人がいたのに、今回の戦争で会ってくれなくなった。複雑な思いです。日本の皆さんに知ってほしいのは、プーチン一人が悪いということ。時間がかかっても、ウクライナに住む友人と元の関係に戻れることを願っています」
別のロシア人女性(匿名希望)はこう怒りを爆発させていた。
「こんなにロシア人に生まれたことを恥じたことはない。ロシアの政治家たちはいったい、2度の世界大戦で何を学んだのか。いったい、どれだけの命を奪ったら満足するのか。国民は戦争なんて望んでいません。私の祖母には4人の兄がいましたが、みんな戦死しました。誰よりも家族を大事にしている人たちでした。でも、ロシア軍に参加していた叔父が10日前から突然、連絡が取れなくなりました。きっと、ウクライナへ行ったのだと思います。
祖母は再び、悲しみに打ちひしがれています。昨日、祖母と電話で話したとき、涙ながらにこう語っていました。『あの子はロシアを守りたいから軍に入ったはずなのに。優しい子だから、人なんか殺せない。教会に行って祈ることしかできない自分が悔しくてたまらない。私はこれ以上、愛する家族を失いたくない』。私も気持ちは同じです。プーチンが国の頂点にいる以上、ロシアに未来はありません」
プーチン大統領が今すべきことは国民の声を聞くことではないか。
取材・文:岡田将貴写真:蓮尾真司