過去最高レベルの戦い!女子プロゴルフ・稲見が勝つか、新星台頭か
国内女子プロゴルフが開幕した。今季は大きな節目のシーズンとなっている。シード権や出場権などの基準が賞金ランキングから『メルセデス・ランキング』に一本化されたのだ。スポーツライターの金明昱(キムミョンウ)氏が解説する。
稲見萌寧(もね)(22)

「賞金額にかかわらず、各大会の順位や出場ラウンド数をポイント化するものです。従来の『賞金女王』制に存在した一大会あたりの格差の是正を目的として導入されました。今季からは大会の大小に関係なく、コンスタントに試合に出て、結果を残すことが重要になりました」
新体制にいちはやくアジャストし、初代女王となるのは誰か。プロゴルファーで解説者でもある村口史子氏は、昨季の賞金女王に輝いた稲見萌寧(22)が新体制の初代クイーンになると予想する。
「最大の強みは75%を記録した驚異のパーオン成功率。この数値は全選手中1位でした。安定してグリーンを捉えることができる秘訣は圧倒的な練習量にあります。1日のトレーニング量は平均10時間にも上(のぼ)るというのに、優勝した翌日でさえ、いつもどおりクラブを振る。9勝もしている選手が、そこまでストイックにゴルフと向き合う姿には頭が下がります。慢心する様子は微塵(みじん)もなく、今シーズンも優勝候補筆頭でしょう」
しかし、絶対女王にも弱点は存在する。それが先のランキング制度の変更だ。前出の金氏は稲見が抱えるバクダンを懸念(けねん)している。
「コンスタントな結果が求められる最新のランキング制度では、ケガが大敵です。稲見選手は昨シーズン終盤の10月中旬に腰痛を発症。相次いで試合を欠場しました。今シーズンもバクダンを抱えての戦いになります。身体への負担が大きい夏場の連戦をいかに切り抜けるかが、一つのポイントになると思います」
このオフに新しいスポーツトレーナーを迎え入れ、腰痛から復調しつつある稲見。そんな手負いの女王に立ちはだかるのが、昨季の賞金ランキング3位の小祝さくら(23)だ。
「昨季は8月下旬までに4勝を挙げるなど途中まで賞金女王レースの首位を快走していましたが、そこから予選落ちが続き、まさかの大失速。リベンジを期す気持ちは誰よりも強いはず。小祝はプロ2年目の’18年から毎シーズン全試合出場を達成している。1年を戦い抜いた経験があることは、新制度下で大きなメリットになります。上田桃子(35)らを指導している辻村明志(はるゆき)コーチのもと、唯一の弱点であったバンカーショットが劇的に改善。覇権奪取へ向け、視界は良好です」(前出・金氏)
有望株は他にもいる。日本ゴルフジャーナリスト協会会員でスポーツライターの赤坂厚氏は’00年生まれの『プラチナ世代』から吉田優利(21)を推す。
「’20年にプロデビューしたばかりですが、昨季2勝を挙げました。初優勝となった『楽天スーパーレディース』で、最終日に8バーディーで逆転勝ちしたように、爆発力が魅力です。今シーズンは『GOLFZON』と『ウエルシア薬局』がスポンサーにつき、責任感も増したはず。一層の奮起が期待できます」
ほかにも『プラチナ世代』には昨シーズンの賞金女王争いで5位に食い込んだ西村優菜(21)がいる。
「150㎝と小柄ですが、真っ直ぐで精度の高いドライバーが武器です。昨年は資生堂と日本女子プロゴルフ協会が発表する『Beauty of the Year』に選ばれるなど、キュートなルックスでも観客を魅了しました」(前出・金氏)
『プラチナ世代』の1学年下にも新星が現れている。赤坂氏が語る。
「西郷真央(20)はルーキーシーズンの昨季、7度2位に入る活躍でいきなり賞金ランク4位に食い込んだ。昨秋会ったときは、高校時代に比べて身体に厚みが出ていました。ジャンボ尾崎の指導のもと、かなりハードなトレーニングを積んでいるようです。一つ勝てば、勢いに乗って連勝する可能性があります」
昨季の女王が格の違いを見せつけるか、新鋭が新制度元年を盛り上げるか、注目だ。
小祝さくら(23)
昨季5勝を挙げ、次期ヒロイン候補に名乗りを上げた。開幕戦となる『ダイキンオーキッドレディス』は昨年優勝したコース。勝って勢いに乗りたい。

吉田優利(ゆうり)(21)
小祝さくらと同じく名伯楽・辻村明志コーチに師事する。昨年は念願の国内ツアー初優勝も果たした。高いパッティング精度が武器だ。

西村優菜(ゆな)(21)
デビューシーズンとなった昨季、いきなり4勝をマーク。インスタのフォロワーは11万人超えと、ビジュアル面でも注目を集める。

『FRIDAY』2022年3月18日号より
PHOTO:Atsushi Tomura/ゲッティイメージズ(稲見、西村) Yoshimasa Nakano/ゲッティイメージズ(吉田) 日刊スポーツ/アフロ(小祝)