中国が混乱に乗じて狙う「台湾・尖閣諸島制圧」のヤバいシナリオ
総力特集「暴走するロシアとプーチンの野望」
ウクライナ危機で米国の弱腰が明らかに
ロシア軍によるウクライナ侵攻の裏で、目立ったのが中国の動きだ。2月25日の国連安全保障理事会で採決されたロシアへの非難決議案で、中国は採決を棄権するなど、その存在感をアピールしている。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する。
「かねてから台湾の併合を目指してきた中国にとって、ロシアのウクライナ侵攻はこれ以上ないシミュレーションでした。ウクライナの戦況や国際社会の対応を分析して、台湾を制圧する際に資する情報や戦術を綿密に練っているのです」
実際、今回のロシアの動きに呼応するように中国が台湾へ圧力をかけ始めている。「国籍不明の航空機」に見せかけた中国機を台湾の離島上空に侵入させる「グレーゾーン作戦」が頻繁に行われているのだ。狙いは領有権の誇示と台湾軍の戦力分析だ。
「中国が今後、何かしらの軍事的アクションを起こす可能性は高い。ただ、ウクライナ情勢で、世界の反戦意識が強いうちは派手な動きは見せないでしょう。欧米諸国との経済的な関係を見ながら、虎視眈々(たんたん)とタイミングを狙っている状態です」(山田氏)
欧米諸国は以前から警告していた通り、最大かつもっとも厳しい経済制裁をロシアに発動した。制裁の中核となっているのは銀行間の国際的金融取引の仲介と実行を担う『SWIFT』からのロシア排除だ。これによりロシアは外貨取引ができなくなり、国際市場から孤立することとなる。しかし、ロシアの孤立は皮肉にも、中国経済に追い風となっている。全国紙国際部デスクが言う。
「ロシアの国際市場からの孤立は人民元の決済シェア拡大を狙う中国にとっては好都合。『SWIFT』から排除されたロシアは今後、中国との直接取引を増やし人民元を通貨とした貿易体制に移行していくと見られます。人民元の国際的なシェアはアップするでしょう」
一方で中国が米国から経済制裁を受ける国々に向けた国際銀行間決済システム『CIPS』への参加国も増えている。そこには中国によるインフラ整備や資源開発のために借金漬けにされている、マレーシアや南アフリカなどの新興国も多く含まれている。石油産出国であるサウジアラビアなどの中東諸国に加え、天然ガスの利権を持つロシアを『一帯一路構想』に組み込み、中国は天然資源の国際市場に強い影響力を持つことになる。
「いま以上にチャイナマネーが国際市場を席巻し、『人民元経済圏』が急速に拡大していくでしょう。米ドルが人民元に取って代わられる将来は遠くありません」(前出・国際部デスク)
日本ももはや他人事では済まされない。中国のターゲットに尖閣諸島が含まれているからだ。
「アフガニスタンやイラクをはじめ、米軍はいま、世界各国から撤退を始めています。さらに、ウクライナ侵攻では世界に米国の弱腰な姿勢が露呈した。米軍の代わりに、アジアで軍事的存在感が大きくなっているのが中国です。米軍がアジアでの役割を失う可能性は大いにあります。そのタイミングで中国は台湾、東シナ海、尖閣諸島まで取りに来るでしょう」(前出・山田氏)
世界の勢力図が大きく変わろうとしている。日本と台湾は、混沌と化した国際社会を生き抜くことができるか――。
「FRIDAY」2022年3月18日号より
- 写真:時事通信社 アフロ