ロシアエリート学校『サンボ70』の「ヤバいドーピング漬け教育」
総力特集「暴走するロシアとプーチンの野望」
勝利に固執するロシアスポーツ界の恐るべき実態
「スポーツでの勝利は、100の政治スローガンより国民を団結させる」
かつてプーチン大統領が五輪アスリートに言い放った言葉である。
ロシアの国威発揚のために若きアスリートが犠牲になっている。ドーピング疑惑で北京五輪の銀盤を揺るがせたフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15)がその典型だ。スポーツジャーナリストの二宮清純氏が語る。

「ワリエワ選手から検出されたのは禁止薬物のトリメタジジンに加え、運動能力を向上させる2つの薬物です。組み合わせることで相乗効果が得られるのです。コーチや医師の指示に従って、服用したのだと思います。しかし、日本人医師によればトリメタジジンは薬効が高い新薬が開発されたため、日本ではすでに使われなくなった”昭和の薬”。簡単に手に入る薬を用いたのは、”家族用”と言い逃れるためでしょう」
組織的ドーピングの温床になっている、と疑惑の目が向けられているのがスポーツエリート養成学校『サンボ70』だ。ワリエワや平昌(ピョンチャン)五輪金メダリストのアリーナ・ザギトワ(19)らの母校である。前出の筑波大学教授・中村逸郎氏が言う。
「ロシア全土から1500人の子供が集められ、朝6時から深夜11時まで勉強と練習をするという日課をこなしています。そこでは15〜16歳でメダルを獲るためのプログラムが組まれています。例えばフィギュアの場合、身体の成長を止めてでも、ジャンプに必要な筋肉以外は出来るだけつけさせない。
食事制限などを徹底した結果、ケガをしやすくなる。ケガをすると、痛み止めやステロイド、血流をよくする薬などでドーピング漬けにするのです。メダルを獲るためだけに育成された選手の身体は、16歳までに背骨がガタガタになってしまいます」
ロシアには、ドーピングのためだけに生まれた研究が存在するという。
「ドーピングの痕跡を消す『マスキング』の研究が積極的に行われていて、今後、よりドーピング隠しが巧妙になっていくと思います。プーチンのように国威発揚のためにメダルを利用する為政者がいる限り、永遠にドーピング問題は解決しないでしょう」(前出・二宮氏)
国家のために無垢な子どもの未来を平気で奪うロシアの罪は重い。
「フライデー」2022年3月18日号より
写真:時事通信社 アフロ