【あなたは知っていますか】ウクライナの国旗がなぜ青と黄なのか | FRIDAYデジタル

【あなたは知っていますか】ウクライナの国旗がなぜ青と黄なのか

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スポーツ界を中心に、ウクライナ国旗を掲げ連帯を表明する動きが出ている(AFLO)
スポーツ界を中心に、ウクライナ国旗を掲げ連帯を表明する動きが出ている(AFLO)

ロシアと西ヨーロッパの間に位置するウクライナ。これまで日本人にとって関心が高かったとはいえないこの国について、まだまだ知らないことがたくさんあるようです。

その一つが、このウクライナ国旗の意味でしょう。ウクライナ国旗はシンプルな構成です。上半分に青色、下半分に黄色が配されています。白地に赤い丸の日本の「日の丸」が太陽を表すように、この旗のシンボルカラーには、意味があります。

実は、この青い部分は、空。青空を意味しています。そして、黄色は麦です。

それを知った瞬間、筆者の頭に、パーっと、広大な小麦畑と一面の青空というイメージが広がりました。観たことのある人にしかわからないかもしれませんが、映画「風の谷のナウシカ」のラストシーンで、王蟲が出す金の糸の上にいるナウシカを思い出しもしました。

なぜ、空と小麦なのか。それはウクライナの地理と歴史を見るとわかります。

多くのウクライナ人の先祖は、東スラブ人です。彼らはウクライナで農業中心の生活をしていました。そして、ずっとウクライナは農業が盛んでした。18世紀末にロシア帝国に支配され、工業化が進むものの、ウクライナは輸出目的の農業ビジネスが盛んになり、「ヨーロッパのパン籠」と呼ばれるような大穀倉地帯ができました。

<帝国の最大の作物である小麦については、1812~59年の間にロシアの小麦輸出の75%はウクライナから輸出された。1909~13年には、ロシアの小麦輸出の98%、とうもろこしの84%、ライ麦の75%がウクライナから輸出された。世界の穀物産地の見地からもウクライナは重要な位置を占め、1909〜13年の間、全世界の43%、小麦の20%、とうもろこしの10%はウクライナで生産された>(黒川祐次著『物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国』)と言います。

とうもろこしを原材料とする「ウォッカ」の生産も有名になりました。

ソ連の支配下に入ると、「ヨーロッパの穀倉」となったウクライナに飢饉が襲いかかります。内戦と共産党による「農業の集団化」の失敗によって、生産は極端に落ち込んでいましたが、それでもお構いなしに、共産党はウクライナの食糧をロシア本土へ強制的に送りました。これにより起こった飢饉によって約100万人が死にました。

さらに、1932年のスターリン時代に、ソ連による過酷な支配体制は強まり、ウクライナはボロボロにされ、大飢饉「ホロドモール」が起きました。ホロドモールによってウクライナでは、350万人が餓死したと言われています(出生率の低下なども含めた人口の減少を含めると500万人との話も)。

今、日本では評論家がウクライナ人に対して「命が大切なのだから、すぐにプーチンに降伏しろ」と言っていますが、そんなことをしたらもっと恐ろしいことが待っていることを歴史から学んでいるのでしょう。この点を知っておかなければ、ロシア軍との絶望的な戦力差があって、NATOも助けれてくれない状況での、ウクライナ人の必死の抵抗は理解できないでしょう。

1991年のソ連崩壊によって独立したウクライナは、ウクライナ憲法20条に、青・黄の二色旗を国旗にすると定めます。一般的には「空と麦」と解釈されていますが、他にも「水と火」「空とひまわり」を示しているという説もあります。

2020年のウクライナ国家統計局によれば、輸出は穀物が19.1%と一番で、耕地面積は日本全面積と同じぐらいの規模で、農業国フランスの耕地面積の2倍でした。

美しい空と美しい小麦畑。それからなる国がウクライナなのです。もしこの一つでも失ってしまえばーー国土をまたもやロシアに破壊されてしまったウクライナ。「ヨーロッパの穀倉地帯」に一日も早く安寧が戻ることを願ってやみません。

  • 取材・文小倉健一

    ITOMOS研究所所長

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