術後すぐ死亡…遺族が明かす海外「闇臓器移植」の実態 | FRIDAYデジタル

術後すぐ死亡…遺族が明かす海外「闇臓器移植」の実態

国内での順番待ちに耐えきれず、パキスタンやブルガリアでの移植を決意 怪しいブローカーに数千万円を支払い手術に臨むも、術後に死亡するケースが頻発中

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1万3753人。

これは、’22年1月時点で日本臓器移植ネットワークに登録している腎臓移植希望者の数だ。昨年1年間で腎臓移植を受けたのは125人。移植までの待機年数は平均15年と言われている

パキスタンの病室にいるHさん。昨年10月に移植手術を受け、11月に帰国。その後、1ヵ月足らずで亡くなった

慢性腎不全の根治的治療法は移植しかない。国内で順番を待っていれば、移植を受ける前に亡くなってしまう――患者たちは藁(わら)にもすがる思いで移植を希望して海外へと渡るが、なかには現地でデタラメな手術を受け、それによって命を落としてしまう人もいる。

「叔父は帰国後、1ヵ月足らずで亡くなりました。成田に戻ってきたときには、まるでスーパーのレジ袋のような現地のオムツをはかされ、糞尿まみれの状態でした」

力なく語るのは、昨年12月に亡くなった関西在住のHさん(享年71)の甥だ。長らく腎不全を患っていたHさんは、スマホで海外移植の斡旋(あっせん)組織を探し、自ら依頼をした。

昨年7月、ブローカーからHさんに「ドナーが見つかった」と連絡が入った。場所はパキスタンで費用は実に5500万円。そのうち半分以上が組織への仲介料とみられる。パキスタンの首都・イスラマバードに渡ったのは、昨年10月12日。手術を受けたのは2日後の14日だ。

「手術後、ブローカーから叔父の動画や写真が頻繁に送られてきました。手術が無事に終わったということだったんでしょうが、ひと目見ておかしいと思いました。動画のなかで叔父の声が一切聞こえなかったんです」

甥の心配は現実のものとなった。11月5日、成田空港に降り立ったHさんは前述のように変わり果てた姿になっていた。国内の多くの病院は、臓器売買が疑われるため海外移植患者の受け入れに消極的だ。ブローカーの指示を受け、Hさんは宇和島徳洲会病院(愛媛県)まで約40万円をかけてタクシーで搬送された。

「命の危険があるということで、何とか受けいれてもらいました。先生は手を尽くしてくれましたが、叔父は昨年12月2日に他界しました」

’20年12月にブルガリアで肝臓移植手術を受けたFさん(40代)は、Hさんとは異なる組織に移植を依頼、昨年1月28日に現地で死亡した。Fさんの手術では、ウクライナ人から買った臓器が移植された。Fさんの父親が語る。

「倅(せがれ)はブローカーを信じ、頼り切っていた。助かるならばと、約2600万円の移植費用を支払っていた。奴らはカネのためなら何でもする連中です。渡航前に倅が聞かされていたのは、身長190㎝、体重100㎏のドナーの肝臓がもらえるという話だった。しかし、実際に現地で見たドナーは小さく痩せていた」(父親)

生体肝移植の場合、通常は肝臓の3分の2を占める右葉が用いられる。だが、移植されたのは左葉だった。最初から成功する見込みなどなかったのだ。

その後、この病院には現地警察の家宅捜索が入った。ブルガリアに同行した父親は現地警察の聴取を受けただけではなく、帰国後は警視庁の事情聴取も受けている。だが、海外での臓器売買や移植手術は犯罪行為の立証が難しく、日本の警察も手が出せないというのが現実だ。

「闇臓器移植」が頻発している背景には、日本国内で暗躍する斡旋組織の存在がある。筆者は4つの組織を確認しており、内閣府からNPO法人の認証を受け、生体臓器移植、臓器売買には手を染めない組織もある。だが、その他は医療従事者でも何でもない経歴の者が斡旋を行っている。彼らは数千万円という高額な費用を請求した上、術後の責任も取らない。

前述のHさんを含め、ずさんな手術で感染症を引き起こし、生命の危険がある複数の海外移植患者を治療してきた宇和島徳洲会病院の万波(まんなみ)誠医師が言う。

「Hさんが私のところに来たとき、よくこんな状態で成田から宇和島まで命が保ったものだと思いました。移植された臓器の拒絶反応を抑えるため、大量の免疫抑制剤が投与され、日本に帰国するまでトラブルが起きなければいいといった状態。海外で移植を受け、私のところに担ぎ込まれる人のなかには、手の施しようがないケースも少なくありません」

何とか移植を受けたい――。患者の切実な思いを利用しデタラメな臓器移植を行う斡旋組織を許してはならない。

ブルガリアのホテルに滞在中のFさん(左)と父親。一昨年12月に手術を受け、昨年1月に現地で亡くなった

 

患者がブローカーと交わした契約書。費用15万ドル(約1700万円)のうち半分以上が手数料とみられる

『FRIDAY』2022年3月18日号より

  • 取材・文高橋幸春

    ノンフィクション作家

  • PHOTO遺族提供

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